第68話》南国ビーチの様です
「エクスプロージョン」
バーンと大きな音を立てて、洞窟の壁に大きな穴が空き、隠し通路が出現した。すると、マップにも隠し通路が表示され、それはクリスタルの場所まで続いている。
「ふう。やっと発見」
「まさか出口付近からなんてね」
俺が言うと、頷いてリラさんも言う。
進みながら壁を攻撃し、最後の最後で発見。ここまででクリスタルの欠片が20個ほど貯まった。
少し精神的にヘロヘロだったけど、俺は単純かもしれない。やる気が出てきた。
通路の奥に進むと、特段何もない。宝箱もクリスタルも。
「ねえ、クリスタルって目に見えないの?」
『いえ、見えます。クリスタルは、壁に埋まっています』
「なるほど。これ、ナビがいないかったら気づかないよな」
隠し通路を発見したとしても、何もなくてがっかりってパターンだ。
「エクスプロージョン!」
「まだ奥があったの?」
俺の行動に驚く三人。リラさんの言葉に、二人はそっかと見ていたが壁のままで驚いていた。
「失敗?」
ママルさんが言う。
「足元を見て」
俺が言うと、三人は地面を見て「あ~」と声を上げた。
崩れた壁の中に小さなクリスタルの姿が見える。透き通ったエメラルドグリーン。
ママルさんが拾い上げた。手にすっぽりと納まるぐらい小さい。
「これがクリスタルかぁ。すご~い」
「綺麗ね」
ママルさんがキラキラした目で見つめていると、ミチさんもキラキラした目で見つめていた。宝石系が好きなのかもしれない。
「あ、これ、こんなに小さいのに重量100だって!」
ママルさんが、驚いて叫ぶ。そして、俺に手渡して来た。重い物を持つのは俺の仕事です。鞄にクリスタルをしまう。
「では、浜辺に行くわよ」
リラさんの掛け声に俺達は頷き、浜辺に向かった。
――クリスタル島の海岸に着きました。
ゴールのセーフティエリアに着くと、浜辺にワープしただけだった。
「ここもワープ先に登録されたわ」
リラさんは、結構こまめにチェックするんだな。こういうの作業は、彼女に任せよう。
「うわぁ。本物の海よ」
ミチさんが嬉しそうに言う。
「この砂の感触も本物だ。しかも綺麗」
屈んでママルさんは、砂を触っている。
南国の綺麗な砂浜だ。ちょっとリッチな気分。
「みんな、あそこに何かるわ」
浜辺の端に何かふんわり光る物体があった。俺達は、そっと近づいて……って、ママルさんだけダッシュだ!
「ママルって、警戒心ゼロなの!?」
リラさんが、驚いて叫ぶ。――たぶんそうです。
直径50センチ程の丸い何か。球体の透き通った蓋がついている。
「これ、どうやらクリスタルを作るアイテムみたいよ。重量は10,000,000!」
NPCに作ってもらうんじゃなくて、これでクリスタルを作るのか。
「ねえナビ。ここで集めたクリスタルの欠片をこれでクリスタルに出来るって事だよね?」
『はい。そうです。このイベントでは必需品です』
「そっか。じゃクリスタルの欠片が貯まったらここに来てクリスタルにすればいいって事か。忘れないようにしないとね」
でもこれ、このコースを選ばないと知らないままだったな。
『忘れそうならば、持ち運べば宜しいかと思います。マスターは、鞄の重量は無限なので持ち運べます』
「え? これって持ち運べるものなの?」
『はい。錬金箱と一緒です』
錬金箱と一緒って。それも10,000,000あるって事? アイテムを作る物って重い設定なんだ。
「持って歩けるんだぁ! 凄いね。これもゲットできるって事だよね?」
ママルさんが、すごーいと嬉しそうにしている。
「じゃ、鞄に入れておきます」
イベントが終わったら戦利品として、ギルド部屋に飾って置こう。
それにしても、これを持ち上げられてしまうんだから不思議だ。
「じゃ、渡しておくわ。じゃまだし」
リラさんはそう言って、砂の上にゲットしたクリスタルの欠片を置いた。確かに鞄を圧迫するよな。
「そうね。どうせエットさんが作るんだし」
「私も~」
二人も砂の上にクリスタルの欠片を置いた。
それを俺は、鞄にしまう。合わせたら100ちょっとになったけど言わないでおいた。言えば、その場でみたいと言い出すだろうから。今は先を進みたい。
「じゃ、山を登ろうか」
「レッツ、ゴウ!」
俺が言うと、ママルさんが駆けだした。
「本当に元気ねぇ……」
リラさんが、ボソッと呟く。