第67話》見た目通りの敵でした
一番優しい散策コースは、山をグルっと回りながら登っていくコースで、途中に何か所かセーフティエリアが存在する。そこに辿り着けば、もし全滅してもその場所にワープでき、そこからスタート出来るらしい。敵も40レベルぐらい。
一方、迷宮ダンジョンは、山の中に作られた洞窟のダンジョン。セーフティエリアはない。アトリエの地下がゴールとなる。敵はサイコロで決まり、自分のレベル×サイコロの目らしい。4面体サイコロなので、最大4倍だ。
マップがあるので、こっちを選択する事も出来るが、問題はミチさんが4倍を出した時だ。160レベル以上の敵が出る事になる。
「まあ、無難に散策コースよね。殆どの人はここを選んでるみたいね」
と言うリラさんに、ママルさんとミチさんはうんうんと頷いている。そう言うわけで、散策コースに決定。すぐ近くにあった、浜辺に下りる洞窟を抜ける事にする。
じめっとしていて、いかにも洞窟ですという感じで、緩やかな下り坂。一歩入ると、セーフティエリアになっていた。
「マップ」
一本道だ。まあ、浜辺に下りる洞窟だからな。
うん? 緑色がある。なんだろう?
「ねえ、ナビ。道から外れた場所に緑色の表示があるんだけど、あれは何?」
『はい。クリスタルです。この島は別名、クリスタル島と呼ばれています』
「道がないけど、どうやって行くの?」
『隠し通路です。マップには、隠し通路と部屋は表示されません』
なるほど。隠し通路の先にクリスタルがあるって事か。
「ねえ、隠し通路があるみたい」
「え~~!! すご~い!」
ママルさんは、大はしゃぎだ。
「隠し通路。じゃ、その先には何かあるのね」
「うん。クリスタル。っていうか、クリスタルがあるから隠し通路があるってわかったんだ。だからどこが隠し通路の入口かわからないんだよね」
リラさんに、そう返す。
「ふーん。どうやら普通は仕掛けがあるみたい。でも壊す事も出来るみたいよ」
リラさんは、ナビに聞いたらしくそう言った。
「壊せるって! エットなら出来るよね!」
ファーストステージで、壁を壊して進んだ事を知っているママルさんは、キラキラした瞳で言う。たぶん、壊すところを見てみたいんだ。
「まあ、試してはみるよ」
そういう訳で、シールドを張った俺達は、セーフティエリアをでた。
――ダイス1で、敵1体が出現しました。
エメラルドグリーンの岩? いやクリスタルの形をした敵だ。とても固そうだけど。
「ファイヤー」
敵は倒れない。もしかしてファイヤーが効かない敵!?
「じゃ、コールド」
でも、倒れなかった。
「ちょっとナビ、聞いてないわよ!」
リラさんが4体相手にして、ナビに抗議している。見れば全員苦戦中だ。
「ナビ、もしかして1しか与えられない敵?」
ふとそう思った。
『はい。そうです。一つ言いますと、魔法攻撃で5以上与えますと自爆します』
「そういうのは先に言って~」
『わかりました。弓攻撃が宜しいと思います』
いやそれは、言われなくてもわかるって……。
俺は、返してもらっていた弓を装備する。
「で、HPいくつ?」
弓で攻撃しながら聞いた。
『10です』
「10!?」
「え! また、1の敵なの?」
俺の声が聞こえていたらしいミチさんが、嫌そうに言う。
「そうだって。しかも魔法攻撃していると自爆するらしい……」
「複数出て1の敵なんて、もう鬼ですかぁ~」
ママルさんが叫ぶ。
サイコロは4面だから最大4体しか出ないとはいえ、かなり面倒だ。魔法が使えないのも痛い。
――ダイス4で、クリスタルの欠片2個手に入れました。
うん? そういえば経験値が入ってないな。攻撃時も表示なかった。
「ナビ、経験値って入らないの?」
『はい。この敵からは取得できません』
「まあ、ここは本来突っ切って行く通路みたいな場所だもんな」
「みんな、このクリスタルの欠片って100個集めるとクリスタルに出来るって!」
リラさんが嬉しそうに言った。どうやらナビに聞いたらしい。しかし100個とは、結構必要だな。




