第55話》初のボス戦
「やっとボスの部屋の前ね」
部屋の前と言っても、扉がある訳ではない。この先が部屋の様になっているだけだ。でも、ボスの姿は見えない。
「ねえ、ナビ。ボスって中に入らないと見えないの?」
『いえ。中に入るとダイスが振られ、全員の合計の目の10倍のHPのボスが出現します。今まで通り、ダメージは1しか当てられません』
「え!? 10倍で1!?」
「何が10倍なの?」
ママルさんが聞いて来た。
「ボスのHP。俺達のサイコロの目の合計の10倍だって……」
「入ったらすぐに戦闘開始だからシールドは、連続で掛けられるエットにお願いするわ」
「わかった」
リラさんに言われ、俺は頷く。
「ナビ、ボスを倒すアドバイス……じゃなかった、いい倒し方ってある?」
『はい。カットダウンがボスにも有効です』
「カットダウン?」
『はい。最大HPの5%のHPを減らします。半分以下には出来ませんので、初動で使うと宜しいかと思います』
「わかった。ありがとう」
「みんな、俺がシールドを張り終わったらカットダウンと言う、HPを減らす魔法を使うから。これは、最大半分まで減らせるって」
俺が言うと三人は頷いた。
「それと、ボスは全体攻撃をしてくるわ。避けられないからシールドが破壊されたら言って。私が個々に張るわ。その攻撃は、各々ダイスでダメージが決まるらしいの。ラッキーナンバーだった時だけ回避よ。通常攻撃は、体力の3分の1。当たり前だけど、ボスだから強いわ」
「ナビが二人もいると、凄いね!」
「本当。助かるわ」
ママルさんとミチさんが、そう言って頷いた。
「じゃ、行くわよ」
俺達は、ボスの部屋に入った。
10面サイコロが振られた。
――ダイス7です。
7か。これだけでもHP70だ。
「オールシールド、オールマジックシールド」
シールドを展開させる。
――カチカチ王が出現しました。HPは290です。
「カットダウン、カットダウン、カットダウン、カットダウン、カットダウン、カットダウン、カットダウン、カットダウン、カットダウン、カットダウン」
本来は、10秒に1回ずつしか減らせないHPを一気に減らした。
みんなはすでに攻撃を始めている。
「ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー……」
うん? サイコロが振られた。
全体攻撃か!
――ダイス9です。
って、攻撃を受け吹き飛ばされた!
「うわぁ」
「きゃぁ」
「ちょっと、ナビ! 聞いてないわよ」
吹き飛ばされると聞いてなかったらしいリラさんは、ナビに抗議している。
リラさん以外は、弓と魔法の攻撃なのである程度近づけばいいから、すぐに攻撃開始できるが、リラさんは攻撃を受けないけど近づかないと攻撃できない。
「ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー……」
またサイコロが振られた。
――ダイス1です。
そしてまた、吹き飛ばされる。直ぐに攻撃開始。
「ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー……」
――ダイス3です。
また吹き飛ばされる。これを繰り返す事、数回……。
「ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイ……」
ボスが消滅した――。
ふう、終わった。
――ボスを討伐しました。
――経験値290取得しました。
――ダイス8で、固い鉱石を3つ取得しました。
思ったより簡単に倒せた。
うーむ。290入っても上がらなかったなぁ。
「あ、また3つ上がったわ」
そう言ったのは、勿論ミチさんだ。彼女は、ここまで来るのに3つ上がって37レベルになっていた。また3つ上がって40レベルだ。
「いいなぁ。私は1つしか上がらなかった」
ママルさんが羨ましそうに言っているが、彼女もここに来るまでに1つ上がって25レベルになっている。今ので26レベルになったはず。
Sランクの俺とリラさんは、結局ボスの経験値でも上がらなかった。
「本当に、経験値だけを見れば、Eランクは凄い上がるわね」
「上昇率は、ちょっとだけどね。でもみんなのお蔭だわ」
「ここなら私一人でもレベル上げ出来るよね!」
ママルさんが目を輝かせて言った。
「へえ、じゃ一人で来れば。あなたが張るシールドでどれだけ通用するか」
「あ、そうだった! うーんと、5回ぐらいは耐えられる! 毎回張り直せばいけるよね!」
「あなた、ここボス戦よ? ボスを倒さない限りクリアにならないのわかってる?」
「……え? あ、そっか。って、クエスト以外ではこれないの?」
「さあ? それ以外、入る方法を知らないわ」
ママルさんの質問にリラさんがそう答えると、彼女は、それじゃダメだとため息をついたのだった。