第39話》自信を取り戻したミチ
俺は、ぶんぶんと手をあげて振った。遠くに二人の姿が見えたからだ。
「大丈夫だった?」
「うん。槍だから当たらなかったとしてもカウンター受けないし」
「私も弓攻撃にしたら戦闘が凄く楽だったわ。そうだ。これ返すわ」
ミチさんが、俺があげたダブルボウを出した。
「あ、いいよ。そのまま使って」
「大丈夫。私なんと! EXPボウを手に入れたのよ! バディなの」
そういいながらミチさんは、後ろに振り向く。背中には弓がくくり付けてあった。そういう風に持ち歩けるもんなんだ。
「凄いね。おめでとう」
「ミチのステータス見てみなよ。って、エットレベル上がってる~」
「あ、うん。錬金術習いに行く途中で上がった。じゃこれは俺が使うね」
ダブルボウを受け取って鞄にしまった。
「ステータス」
ママルさんが言う通りステータスを見てみると、ミチさんのラックが凄かった。120になっていた……。
「ね、凄いでしょう?」
「うん。驚いた」
「エットさんがいないからゴール探すの大変だったけど、敵をさくさく倒せて楽しかったわ」
だろうね。100ずつしか上がらないけど、素早さは最高値なんだから。しかもバディ見つけるなんてね。
「そういえば、杖って直ったの?」
「あぁ……いや、Sランクにはバディの武器って合わないらしいから装備錬金を覚える事にしたんだけど、どうやら魔法の石が大量に必要らしくてね。で、今回魔法の石が賞金らしいからトーナメント戦に参加する事にしたんだ」
ママルさんの質問に答えると、二人はふむふむと頷いた。
「でも20レベルまでの人が参加出来るんでしょう? 優勝無理そうじゃない?」
「別に優勝しなくても貰えるみたいなんだ。毎回サイコロを振って、勝てば出た目の数、負けてもその半分を貰えるらしい。勝ち進めればそれなりに貰えそうだし、優勝すれば負けて貰えなかった魔法の石を全て貰えるみたいだから挑戦する事にした」
ミチさんの質問に答えると、今度は二人共驚いていた。
「毎回貰えるんだ。だったら参加料無料だしやるしかないね! ミチ、申し込みに行くわよ!」
「え? 私も?」
「バディ手にいれたんなら試してみればいいじゃない」
「うーん。そういうのとは違うんだけどなぁ。でもまあ一回戦敗退でも魔法の石貰えるみたいだし、参加しますか。ちょっと行ってくるわね」
「うん。いってらっしゃい」
俺は軽く手を振り、二人を見送った。
さて俺は、二人が戻って来る間に、返してもらった弓のエンチャントでもしますか。
あ、でも、レアがないか……。
「ねえ、エンチャントに失敗したらどうなるの?」
『はい。耐久度が下がります。耐久度は、エンチャントしても増えません。最大値も固定です』
「じゃ、失敗し続けると、杖の様に壊れるって事か」
『はい。エンチャントをするつもりならエンチャントの石を使うといいと思います。レアなので、必ず成功します』
「え? そうだったんだ。あ、そっか。だから入れてエンチャントをしているのか……。ありがとう、やってみる」
HP回復薬2つとエンチャントの石を取り出し地面に置いた。それに手をかざす。
「ダブルボウをエンチャント」
――ダブルボウのエンチャントに成功して+1になりました。素早さ+5に変更になりました。
+5か。あまり変わんないな。
「なあ、何を入れたら素早さが飛躍的に上がるかな?」
『一番は魔法の石+です。1つ入れれば、100ぐらい上がります』
「いっぺんに3つ以上入れてエンチャントする事も出来る?」
『はい。可能です。かならずレアを入れて下さい。失敗したらアイテムは消滅します』
「うん。わかった」
一応優勝したいから万が一の為に攻撃力を上げておく事にした。
魔法の石を魔法の石+にして、エンチャントの石と一緒に地面に置いた。ちょっと勿体ない気もするけど、1,000個からみたら大した数じゃない。たった5つだ。
「ダブルボウをエンチャント」
――ダブルボウのエンチャントに成功して+2になりました。素早さ+505に変更になりました。
これでよしっと。
二人が登録を済ませ戻って来た。俺達は、ワクワクして始まるのを待った。