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第32話》怪力モードになるようです

 扉が閉まるとシーンと静まり返り、俺達のため息が木霊した。

 さてどうしたものか。


 「離脱しないって事は、リタイアにはならないのね」


 「あ、本当だ! よかったぁ」


 ミチさんの言葉に、ママルさんが安堵する。

 リタイアにならないって事は、扉を開けられるって事か。


 「そういえばこれに、精霊の言霊が入っているのかしら」


 そう言ったミチさんを見れば、一度戻したはずの宝石箱を手に持って来ていた!


 「持って来ていたんだ」


 「あら、そういうエットさんだって持って来ているじゃない」


 俺は手にしていた弓を持って来ていた。ママルさんも槍をしっかりと握っている。


 「あははは。そうだね」


 「ミチ、それに何が入っているの?」


 「何かしらね?」


 そう言いつつミチさんは、何のためらいもなく宝石箱を開けた。俺達は、中を覗き込んで驚いた。

 中には、エレメンタルのフエが入っていた!


 「盗人はお前達か!」


 「え?」


 低くて響く重低音の声が響き渡った。驚いて俺達は辺りを見渡すも姿はない。


 『マスター、上です』


 「上!?」


 俺が叫んで見上げると、二人もつられて見上げた。そこには、炎が人型になって浮いていた!


 「あ、いえ。えっと……」


 どう答えると正解なんだ?


 「では、我の力が望みか?」


 え? そうくるのか!


 「そうです!」


 ママルさんじゃなくて、ミチさんが叫んだ。


 「私もほしい!」


 「お、俺も……」


 「ならば、これを耐えてみせよ!」


 って、炎が凄い勢いで、俺達に襲い掛かって来た!


 「うわぁ!」


 「「きゃー」」


 為す術もなく、俺達は炎に包まれた――。


 ――マジックシールドが破壊されました。


 うん? 破壊された? けど……俺達は無事だ。

 って、これも戦闘だったの?


 「どんだけ凄まじい攻撃なんだよ」


 『はい、3,500ダメージです』


 「………」


 いや、回答を望んだわけじゃ……うん? 7,000じゃなくて、3,500? もしかして攻撃だけじゃなく、シールドもオールにすると魔力の1.5倍を人数で分割するのか? なるほど。


 「よかろう。お前達の力になってやろう」


 「きゃ!」


 微かに燃えていた炎が、ミチさんが持っていた宝石箱の中に吸い込まれていった。覗き込むとエレメンタルのフエが、赤く染まっている。


 「赤くなっちゃったね」


 「うん。そうね……」


 ミチさんは、ジーッとエレメンタルのフエを見つめ頷いた。

 これって、精霊の力が手に入ったって事なのか? それより扉は開かないのかな?


 「一応、今ので精霊のイベント終わったんだよね? 扉開くかな?」


 「あ、そうだね」


 俺は、扉の間に指を入れ横に引っ張るもびくともしない。


 「あれ? 開かない?」


 「あ、もしかして、このフエ使って精霊を憑依させるとか?」


 ミチさんがそう言って、フエを手に取った。


 「あ、ママルさんが試す?」


 「……え? ミチがどうぞ」


 そう返されたミチさんが、静かに頷いた。赤いフエを口元へ持って行く。静かに息を吸い込むと、一気に吐き出した!

 大きな音が聞こえるかと思えば、何も聞こえない。


 「……特に何でもないわ。じゃ試してみるわね」


 俺にエレメンタルのフエを戻した宝石箱を手渡すと、扉の隙間に指を入れて両手を開いた。

 スパーン!

 まるでふすまをスパーンと開くように、いとも簡単に扉は左右に開いた。


 「………」


 ゆっくりと振り返ったミチさんが、目に涙を溜めている。なぜ?


 「怪力になっちゃった。お嫁に行けない」


 「……いや、ゲーム内だけだから大丈夫」


 どんな心配をしているんだ……。


 「すっごーい!」


 「あ、でも、このフエ渡さなきゃいけないんだよな?」


 「こうすればいいんじゃない?」


 俺が呟くと、ミチさんは赤く染まったエレメンタルのフエを取り出し、自分で持っていたエレメンタルのフエを代わりに入れた。


 「なるほどね~。じゃこれは、エットが渡してね」


 「わかった」


 俺は鞄に宝石箱をしまった。

 俺達三人はその後無事に、部屋を出てゴールのスタート地点のセーフティエリアに戻った。


 ――クリアおめでとうございます。初クリア報酬で、三百の腕輪(魔力)を取得しました。

 ――300のプレイヤー2人で、ダイスを2回振れます。

 ――ダイス3で、MP回復の薬を取得しました。

 ――ダイス5で、設計図引き換え券を取得しました。

 ――レベル差11で、ダイスを11回振れます。


 って、11回もサイコロを振って、HP回復の薬とMP回復の薬を3つ、エンチャントの石と魔法の糸が2つ、魔法の石を一つ手に入れた。

 凄い量を手にいれたな。


 「え~~! 何これ! エット持って!」


 ママルさんは、また持ちきれなくなったようだ――。

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