第31話》神殿のからくり
「今回は、エットさんにお願いするしかないわね」
「そうだね。私は、当たる気がしないよ」
「うん。ダンジョンはそうしよう。マップ」
今は、神殿の中だ。壁にレリーフがぴったりはまる穴があったのではめ込むと、扉が開いた。そこから中に入ると扉がしまってしまった。もしかしたら一度きりのダンジョンなのだろうか?
神殿も迷路の様になっている。宝箱はない。って、ゴールもない?
「え? ナビ、これどうやったらクリア?」
『奥の扉から部屋に入り、今いるセーフティエリア戻ってくるとクリアになります』
という事は、ここがゴールか。
「エット、大丈夫? わかった?」
「うん。どうやら行って戻って来てクリアみたい」
「なるほど。ここがゴールなのね」
ミチさんの言葉に、そうだと頷いた。
『マスター。このダンジョンもここから魔法を使えます。シールドを張ってから出るといいでしょう』
うん? マップだけじゃなく普通に魔法が使えるって事だったのか。
「オールシールド、オールマジックシールド」
うん。張れた。
「行こう」
――ダイス1で、敵1体出現しました。
俺のは一体だ。
「コールド」
うん。倒せた。
――敵を倒して、経験値12を取得しました。ストックされました。
――ダイス4で、何も取得出来ませんでした。
おぉ、大量の経験値だ。ぜひ、クリアしないと。
「うきゃ! エット! みんな、私の方に来るんだけど!」
ママルさんが叫んだので見ると、ミチさんの敵4体も向かっていた。まずは、ママルさんの敵3体からだ。
「オールコールド」
敵3体は、消滅した。
「オールコールド」
敵4体は、消滅せずにママルさんに向かって行く!
「4体だと倒せないのかよ! オールコールド!」
今度は消滅した。俺達は、ホッと胸を撫で下ろす。シールドが張ってあるから即死亡しないだろうけど、ママルさんは素早さが無いから逃げきれない。
「なぜ、私……」
「今回は、HPが低い人ではないみたいだね。ナビ、今回狙われる条件って?」
『呪いが多いプレイヤーが狙われます』
「なるほど……。じゃ、ママルさんになるはずだ」
「え~~。なんて言ったの?」
「呪いが多いプレイヤーだって。俺達、クリアしているからさ」
「え! そうなの?」
「そうくるか」
と、ミチさんはうんうんと頷いている。
「今回、宝箱はないからさ、真っ直ぐに扉に向かうから」
「OK。宜しく」
俺達は、順調に進んで扉の前に来た。そうすると、扉が音を立てて左右に開く。部屋の中は薄暗い。
『マスター、部屋の天井にファイヤーすると、明かりを灯せます』
「ありがとう。やってみるよ」
俺は、部屋に踏み入れる。手を天井に向けファイヤーと叫んだ。天井に登っていく炎は、天井を燃やす。あれって鉱石みたいなんだけど燃えるんだ。
「わぁ、何これ?」
「すごいね。武器とかがいっぱい」
奥の壁には、武器が飾られていた。小さな宝石箱みたいなのもある。
「槍だ!」
ママルさんは、奥の壁に駆け寄って行く。俺達もそれに続いた。
弓だ。壁にかけてあった弓を手に取った。
ダブルボウ。重量は1だ。
「これってバディ?」
『いえ、普通の弓です』
よし、これをミチさんにあげて……。
「これかしらね? 精霊の言霊って」
ミチさんの言葉に振り向けば、小さな宝石箱を手にとった所だった。
と、その時――
ガガガガ……。
と、後ろで大きな音がして後ろを振り向くと扉が閉まり始めていた!
どうやら宝石箱が、スイッチになっていたようだ。
「うそ!」
ママルさんが槍を握りしめ叫んだ。
「ミチさん、それ戻してみて」
ミチさんは、頷いて元あった場所に置くも扉は閉まるのをやめない。
「走るよ!」
俺達は、扉に向かって走り出す。扉の前まで来て振り向くと、ママルさんがまだ遠い。
「ミチさん、先に行って」
「嫌よ! もしママルさんが間に合わなかったら私一人、部屋の外じゃない!」
「ごめん、二人共……」
残念ながらママルさんが扉の前に来た時には、三人が抜け出せる程の隙間がなくなっていた。そして、ガシンと扉は閉まったのだった――。