第26話》宣戦布告受けちゃいました
村に戻ると、掲示板を見ているプレイヤーから意外な言葉が聞こえた。
「エットってどいつだよ」
俺の事だろうか? 何故、俺の名前を?
「今、エットって聞こえなかった?」
ママルさんが、俺に振り向いて聞いた。俺の空耳ではなかったみたいだ。聞こえたと、俺は頷いた。
三人で、掲示板に近づいてみる。
トライアル結果――
一位 エット 12分13秒
二位 ライグライド 29分17秒
ホットナル
カリー
三位 ポルトガール 32分45秒
パラパラパ
トマト
うん? あ、俺だ。確かあの時間でゴールって言っていた。って言うか、二位と差が結構あるな……。
順位は、三位までしか書いてない。
「すご、エット一位じゃん!」
「一人でチャレンジしたの?」
二人が驚いて声を上げると、皆が一斉にこっちに振り向いた。
「ステータス!」
誰かがそう言うと、あちこちでステータスと言いはじめ、木霊の様に続く。俺は何だかいたたまれなくなり、その場から走り出した。
「はあ? HP50?」
そんな声があちこちから聞こえて来た。
「ちょっと! 待ってよ」
ママルさんがそう叫んで、慌てて俺を追って来る。それに、ミチさんも続く。
「もうどうしたのよ」
「どうしたのって、何か注目されて……」
ミチさんは何も言わず、俺をジッと見つめている。なんだろう?
「えーと、何か聞きたい事がある?」
「もしかして私、足手まといじゃない?」
「え?」
「トライアル一人でクリアしたんだよね? しかもあの速さ……」
まあ確かに、もし三人でトライアルに挑戦していたら三位にすら入らないだろうけど。
「えっと、あれは一緒に行ってくれる人がいなかったから一人で行ったんだ。別に俺、トッププレイヤーを狙っているわけじゃないから。それに、あそこまで目立つのも好きじゃないんだよね……」
「じゃ、私が一緒にいても大丈夫?」
「大丈夫。っていうか、一緒に冒険しようよ。一人より複数の方が楽しいし。それに、これからだろう? 三人で強くなれば一位になれるかもよ?」
「遅いけど、私もいいの?」
ママルさんまで言い出した。
「もう、嫌だったら最初から組んでないから。それに、誘ったの俺だよ?」
「あぁ、そうだったね。よかったぁ。私達と一緒にいる所を見られるのが嫌で、走り出したのかと思った」
「あのね、そんな事思った事ないから。あれは注目されて何となく恥ずかしくて……」
「いたいた……」
うん? 男の声が聞こえたと見れば、上から目線の人だ。
「ステータス! ……やっぱりなぁ」
俺のステータスを確かめたみたいだ。
「俺は、ライグライド。おたく、素早さあったんだな。逃げまくって偶然ゴール出来たみたいだな。おめでとう。でも、次は負けないからな。次の一位は、俺がもらう」
うーん? わざわざ言いに来たのかよ。
「あ、二位の人だ……」
ママルさんが呟いた。
あぁ、悔しかったのか。なるほど。
偶然じゃなくて、ゴール一直線だったんだけどな。マップって、持っている人少ないのかな?
「あともう一つ。Sランクみたいだけど、最強ランクは、SランクでもEランクでもなく、Aランクだ! じゃーな」
うん???
チラッと、ミチさんも見て、フッと笑ってから立ち去っていく。
「ステータス」
□――――――――――――――――――――□
名 前:ライグライド
レベル:7
H P:5,600
ラック:104
□――――――――――――――――――――□
俺は、あまりにも自信満々なので、ステータスを見てみた。
「え? ミチさんと同じレベル7!?」
Aランクが最強だと言っているぐらいだから、あの人はAランクだと思うんだけど……。すごいなぁ。
「うーん。Aランクだとすると、初期値は800かぁ。でも変だな。ライグライドって人、私より攻撃力も魔力も低そうだったんだけどなぁ」
計算が得意なママルさんが、彼のステータスを見て呟いた。
ママルさんって確か、攻撃力の初期値は400って言っていたっけ。じゃ彼の攻撃力の初期値はそれ以下。魔力はレベル3の時、エアーカッター覚えたばかりだとか言っていたから……。
「ねえナビ。エアーカッターって魔力いくつで覚えるの?」
『200です』
200かぁ。うーんと初期値は100台だな。それより弱かった?? それって100以下って事じゃないか。まあ剣士系みたいだし、魔力は別に低くても問題ないって事なのかな?
俺的には、剣士系より魔力系の方が強いと思うんだけどなぁ。HPが高いからなのか。自信満々だったよなぁ。
「Aランクで7レベルか。私と組んだ時はまだ、3レベルだったわよ、彼。百のダンジョンで大量の経験値を稼いで、一気にレベル上がったのね」
あぁ、なるほど。レベル7なのはそのせいか。
宣戦布告を受けちゃったけど、俺受ける気ないんだけどなぁ――。