第22話》エットの評価、それって良いって事ですか
「オールコールド」
俺が放った魔法で、モンスターは消滅した。
雑談を終了した俺達は、シールドを忘れずに張り、まずは宝箱を目指す。出て来た敵は、俺が全て受け持ってどんどん進んで行った。
今回は、宝箱が一個しかなかった。入る度にダンジョンは形を変える様だ。
そして宝箱の目の前に辿り着いた。
「うふふふ」
またもや少し不気味な笑いをするママルさん。それを引き気味に見ているミチさん。
「それにしても凄いのね。あの人達とは大違いだわ」
「あの人達? あぁ、あの上から目線のプレイヤーの事か」
「そうそう。守ってやるからって言って置きながら、せめて攻撃受けないように、逃げ回れよって言われて。無理だってあんなに敵がいたら」
俺とママルさんは、顔を見合わせた。なぜかミチさんが愚痴を言い出した。
「5人いて、それぞれの敵が平均3体よ。それ全部、私に向かって来るのにどうすれと! しかも敵が異様に強くてシールドがすぐに壊れちゃうんだよね。それでとうとう……全滅」
プレイヤーが5人と言う事は、敵のレベルは10。攻撃特化か魔法特化の人がいないと、倒すのは大変だな。たぶんプレイヤーのレベルは、3レベルぐらいだろうし。
「それは、怖かったよね? そっか、シールド張れる人がいても敵の数が凄くて大変なんだ。あ、レベル10か!」
「レベル10?」
「うん。レベル2×プレイヤーの数が敵のレベルなんだって。エットのナビが教えてくれた」
「ナビ?」
ママルさんからナビの事を聞いたミチさんが、驚いて俺に振り向いた。
「あなた何者なの?」
「何者って……。普通のプレイヤーだよ。ナビは、初期値に10があるプレイヤーが使える魔法なんだって。つまりSランクの人なら使える魔法だね。まあ、魔力が10だと使えないだろうけど」
「でもあなた、素早さも魔法も桁違いよね?」
「そうだよね~。平均値じゃないよね~。掛け算の数値って普通一個ぐらいだよね?」
うんうんとミチさんが頷く。
そう言われてもサイコロの目だし。
「そういう訳で、私はエットに付いて行くわよ!」
「それ、どういう訳なのさ。まあいいけど」
「じゃ、私もそうしようかな。経験値稼げそうだし」
「………」
俺にメリットないような気が……。まあ一人寂しくよりはいいか。
「じゃ、俺の今の目標伝えておくね。錬金術を覚える事。それで、壊れた杖を直すんだ」
「あぁ、あの杖か。直せるんだ、よかったね」
「うん」
「杖? 持ってたんだ」
「あぁ……。さっき、ここで手に入れたんだけど、色々あって壊しちゃった」
「聞いたら笑えるよ。魔力が減って魔法使えなくなって、杖で叩いていたら壊れたの」
「ちょっと、ママルさん! ママルさんだって杖で叩いちゃえって言っていたじゃん」
「だね。まさか壊れるとは思わなかったよ。でもそのお蔭で、元に戻ったんでしょ?」
「なんか楽しそうね」
「楽しいよ。エット面白いし」
「面白いってなんだよ……」
「あ、あの手の事?」
何故かミチさんは、ママルさんにボソッと言った。聞こえてますけどね。
「なんか、エットって天然だよね」
「そうね。優しいし。一緒にいて居心地いいよね」
それ褒めてくれてるんだよね?
「と、いう事で、宝箱を開けましょう!」
クルッと宝箱に振り向くと、ママルさんはカパッと宝箱を開けた。俺達は宝箱を覗き込んだ。
「何だと思う?」
宝箱の中身をジッと見つめ、ママルさんが問う。ホイッスルの様な形のモノがポツンとあった。
「なんだろうね」
「なんでしょう? ふえ?」
「こういう時こそ、ナビでしょう?」
ママルさんが、期待を込めた目で俺に振り返った。まあナビに聞けば教えてくれるか。
「ねえ、宝箱の中身のホイッスルみたいのって何?」
『召喚の笛です』
「召喚できるの?」
『ただし、媒体が必要です』
それって、乗り移らせるって事?
「召喚! 強いモンスターとか呼び寄せるの?」
凄いとキラキラした目で、ママルさんが俺に聞いた。
「媒体が必要だとか言っているけど……」
『はい。自分に憑依させて力を発揮します』
何それ! 怖いんだけど!