第12話》コンコン。杖代わりなんです
「これは俺が持つね」
「うん。宜しく」
俺達は、パーティーを組んでスタート地点の部屋来た。
はじまりの村までは、敵が出現していなければワープで戻る事ができる事をママルさんが教えてくれたので、すぐに村に戻ってこれた。
そういえば、俺6週目なんだけど、敵のレベルってどうなるんだろう?
「ねえ、ナビ。敵の強さってどうなるの?」
こそっとナビに聞いた。
『それぞれの強さの敵がでます。パーティーを組んでいますので、マスターが倒しても経験値が入りますが、ママルさんは2週目なので敵のレベルが1です。ですので残念ながらマスターには、経験値は入りません。マスターが倒せば、ダイス判定はあります』
「なるほど」
「うん? 何?」
「え? 別に何も。じゃ行こう」
「うん。行こう!」
ママルさんがドアをあけ、外へと出て行く。それに俺も続く。すぐにサイコロが振られる。
――ダイス3で、何も起きず静かなもんだ。
「とりゃ!」
スパーンとママルさんは、一角兎をやっつけた。
うん。レベル1の敵は問題ないみたいだな。
そういえばシールドどうしよう。ママルさんにも張れるのだろうか?
「あのさ、シールドってママルさんにも張れる?」
『はい。張れます。パーティーを組んでいる相手限定で、名前を最初に付ければ相手にかかります。マスターはすでに、オールヒールやオールシールドなどを取得済みですので、それを使えばパーティー全体にかける事ができます』
「そっか。オールが全体か」
「なになに? オールがどうしたって?」
敵を倒し俺に近づいて来たママルさんが、俺の言葉を拾って聞いて来た。
「え? あ、オールシールドを使えば、二人共攻撃受けなくてすむなって」
「え~!! シールド使えるの? 魔法って魔力が増えると覚えるんでしょ? 私やっとエアーカッター覚えたところだよ?」
「そ、そうなんだ……」
俺の場合、最初から覚えていたからなぁ。そう聞いてもママルさんの魔力がいくらなのか見当もつかない。
「とりあえずシールド張るね」
「うん。宜しく」
ママルさんは、楽しみにしているのか。ジッと俺を見ている。やりづらい。
俺は、キツネの形を作り右手を突き出した。
「オールシールド、オールマジックシールド」
「何それ」
「え……?」
ママルさんがジッと見つめて聞いた。見つめている先をを見ると、俺の右手だ。そう俺の右手は、キツネさんだ!
バッと右手を後ろに隠した。
「……っぷ。あははは」
ママルさんが笑いだした。
「な! 笑うなよ! 仕方ないだろう。杖がないんだから!」
これを考えた時は、他の人に見せるなんて考えなかった! 大失敗だ……。なんで俺、キツネにしたんだよ。
「ごめんごめん。まさかの行動だったから。杖がないって捨てたの?」
「いや、最初からこの格好だよ。靴さえない!」
「え~~!! なんで?」
ママルさんは、靴さえないと聞き、頭からつま先まで俺を見渡した。
「うーん。どうやら体力が低かったからみたい。装備できるのが体力の10分の1だからローブしか装備できない状態でスタートした」
「え! 最悪だね。でも見た目ヨワヨワなのに、杖無しで攻撃って凄いね、逆に」
「うん。杖で攻撃できないから、こういうアクションで攻撃してるんだ」
「なるほどね~。ねえ、私もキツネにしたら攻撃魔法使えるかな?」
「え? いや、無理だと思う」
ママルさんが、驚いている。出来ると思ったんだ。
「杖代わりなんだよね?」
「あぁ……。使えない状況だから特別にこのフォーメーションで出来るんだ」
「え~。そうなの? 残念。攻撃魔法使って見たかったのになぁ」
そういうもんなのか。
「杖、手に入れたら攻撃魔法使ってみればいいんじゃない?」
「うーん。そうだけど、まずは鞄の容量を大きくしないとね」
と、ママルさんは大きなため息をついた。
鞄って持っていたんだ。彼女には、俺みたいな斜め掛け鞄もリュックも背負ってない。でも鞄は所持している事になっているらしい。
「鞄って他の人には見えない仕様なんだ」
「何言ってるのよ、ここにさげてるじゃん」
ママルさんは、腰に下げていた巾着袋を指差した。
え? それ鞄だったの?
『容量が大きくなっていくと、鞄らしくなっていきます』
と、ナビが付け加えたのだった――。




