第11話》初めての仲間
10の初期値がこんなにいいもんだったなんて! 本当は俺、最初からツイていたんだな。
「そこの人~。助けて~!」
うん? 声? しかも助けてって……。え! 驚いた。俺よりも先に行っているやつが居たとは。
向かっている先から赤い髪を揺らし、女の子がこっちに向かって走って来る。剣士の格好をしているから、攻撃力よりらしい。いや、分析は後だ。彼女は、一角兎2体に追いかけられている。
「なあ、俺が倒しちゃって大丈夫なもん?」
モンスターは、彼女がサイコロを振って出した敵だ。他人が倒していいものかどうかわからないからな。
『ペナルティーなどはありませんが、マスターは何も得ません。彼女には、経験値は入りませんが、ダイスは振れます。ちなみにパーティーを組めば、経験値はそれぞれの値が入り――』
「コールド、コールド」
ナビが話している途中だけど、助けなくてはいけないんでごめん。
「ありがとう~!」
そう叫びながら彼女はこっちへ走って向かって来る。
「ナビ、ごめん。彼女危なかったからさ」
『いえ……』
「助かったぁ。改めてありがとう。私はママル」
「えっと、俺は……エット」
「うん?」
「だからエット」
「あぁ、エットって言うのか。そうだ。レベルとか見ていい?」
「どうぞ。俺もいい?」
ママルさんは頷いた。
「「ステータス」」
俺達は、ステータスを見合った。
□――――――――――――――――――――□
名 前:ママル
レベル:3
H P:212
ラック:100
□――――――――――――――――――――□
ママルさんは、レベル3だ。ランクEとかなんだろうか? だったらどれか1,000のパラメータがあるって事だけど。
「すご! HP30って! よくこれでここに来たね。レベル2で30って事は……うーん」
「君だって一人でここに来ていたじゃないか。しかも追われてた」
「さっきレベル3になってさ。いけるかな? なんて思っていたらいきなり攻撃が当たらなくなって……」
「当たらなくなった?」
『おそらく、ママルさんは素早さが低いのでしょう』
なるほど。素早さね。攻撃力があっても当たらないと倒せないもんね。
「そうなのよ。しかもカウンターされちゃうし。逃げ回っていたらどんどん増えて来て……。やっとこ2体まで減らしたんだけど、MPが底をついちゃった」
「え? 魔法攻撃も交わされるの?」
「いや。攻撃系の魔法は使えないよね? あ、エットは、魔法系か」
『普通は、武器が杖系統でないと攻撃魔法は使えません。使えるのは、回復系と補助系になります』
「そうなんだ」
「そうなのよ」
「………」
今のは、ナビに答えたんだけど。やっぱり他の人には、ナビの声は聞こえてないみたいだな。
「どうしたの?」
「いや別に」
「魔法系の人って、連続して魔法使えるのね!」
「え?」
『マスターは、連続魔法演唱を取得しておりますので、クールダウンなしで魔法を演唱できます』
なるほど。そう言えばそんな事言っていたっけ。
「普通は、どれくらいのクールダウンが必要なの?」
『10秒です』
「10秒よ」
「あぁ、ダメだ」
わけわかんなくなりそう。
「ダメって何が?」
「え? あぁ、ごめん。何でもない」
「ふーん。まあいっか。エットも仲間に入れてもらえなかったんだよね? だからレベル上げしてるんでしょ? 私達仲間だわ!」
「うん? 仲間?」
あのトライアルのイベントの事だろうけど、HP100以下だったんだ。
「私さ、素早さが低くてさ。1週目は混ぜてもらえたんだけど、次からは素早さも考慮されちゃってさ。誰も一緒に行ってくれないんだよね!」
そっちか。やっぱり遅いとダメなんだ。俺は素早さはクリアしてるんだけどなぁ。
「じゃ、トライアル一緒に行く?」
「え!? いいの?」
「いいのって、俺でいいの?」
「勿論! だってそのHPでここに来たって事は、攻撃受けてないって事だよね。見た目より凄いって事だよね!」
ママルさんって鋭い。でも嬉しいな。まあ攻撃は、ボケとしていて一度食らっているけど内緒にしておこう。
「じゃ、宜しく!」
「うん。宜しくね」
初めての仲間が出来た!