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episode2 ①

「音唖ちゃん〜」



愛華はその女の子の名前を呼びながら駆け寄る前に俺は早足で先にその子に近寄り両手首を軽く掴んだ。



「奏兎?」



すみれさん含め愛華や壱も俺の行動に驚きながら俺の方を見ていた。




「!?」




「君、朝の子だよね?」




「あっあの…」



俺の突然の近付きに女の子はオドオドした様子で戸惑いを見せていた。



急に来て怖がってるのかもしれないと思った俺は、あえて朝の事を伝えて見た。




「朝、キーホルダーを拾ってあげた」




「あ、あなただったんですね…ありがとう、ございます。それじゃあ」



女の子は俺に対して目もくれず、そのまま手を払い除け離れていこうとする。




「あのっそうじゃなくて…っ」



女の子は聞く耳を持つことなく、スタスタとカフェを出ていった。



「……そうじゃなくて」



(俺はただ)



「奏兎くん…あの子は無理やよ」



「えっ」



沈んでいる俺に、すみれさんは静かな声でそっと忠告をする。



「音唖ちゃんと仲良くなろうと思わない方がええよ。あの子は、誰とも仲良くしようとする気ないから」



「……」



「奏兎は音唖ちゃんの事、好きになったの?」



愛華は怪訝そうに俺に問うが、好きになったとかそういうのではない。



「そうじゃなくて…そうじゃないんだ…ただ」




俺はそのままカフェの外へと早足へと向かった。




「奏兎くん!」




すみれさんの呼びかける声に振り返る事なく、あの女の子を追った。



(どこに)



外に出て周りを見渡す。



外に出てまだそんなに時間が経ってないはずだから、すぐ近くに居るはずだ。



「あっ…いた」



そして俺はそのまま駆け足で足を動かした。




「あっあのっ!」



「!? えっ」



俺の呼び掛けにその女の子はびっくりした表情で振り向き俺を見る。



「俺、君にどうしても言いたい事があって、ずっと気になってる事があるんだ」




「?」




「その目どうしたの?」



朝、初めてこの子と会った時から気になって、凄く気になってたんだ。



「すごく哀しそうな目をしてる」



「…えっ」



「何かを抱えているようなそんな目が見える」




女の子は驚いた表情をただただしていて、でもすぐに元の表情に戻る。




「…なんの事ですか? よく分からないことを言わないでください」



女の子は俺の言う言葉になんとなく察したように感じ取れたが、あえて隠すようにシラを切った。



「……」



その子はそのまま何も言う事なく踵を返し帰っていった。







「で、奏兎くんは何がしたかったん?」



カフェに戻ってきた俺はすみれさんの仕事スペースにてすみれさんに尋問されていた。



「告白しにいってたん?」



「違います!」



「じゃあ、なんで」



愛華はなぜか問い詰めるかのように聞いてくる。



「…目がすごく哀しそうに見えるんです。それが、すごく気になって。何か抱えているような気がして」



「目?」



「…そっか、奏兎くんには視えるんやね、その人のオーラみたいなものが」



「まあ」



俺は元々変な体質の持ち主で、妖魔が見えるけど襲われる事がなく、なぜか妖魔が出現すると俊敏に気配を察知する事ができる。



霊感とかそういうのは一切ないのだけど、代わりに人の目を見るとその人のオーラや感覚を感じる事できるというおかしな力を持ってる。



また力が強いかとかも目を見ればすぐ分かってしまう。




ただ、俺の家系は誰一人として変わった能力はなく、俺1人だけこんな能力を持ってる。




「こんな事を言うのはあれやけど、音唖ちゃんの事を本気で知ろうと思うのは止めた方がええよ。あの子は誰にも心を開かへんから」



「……」



何か訳があるのだろう。



無闇に聞くと、きっと傷付けてしまうのだろう。



でも、それでも気になって仕方ない。



「あの、あの子の名前…なんて言うんですか?」



「遠乃 音唖〈とおの ねあ〉ちゃんよ」



「遠乃音唖ちゃん…遠乃さん…」



いつも俺は彼女に疑問を持つばかりで、でも知りたくて仕方なかったんだ。





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