表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/29

episode7 ③

「はあ、とんだ昼休みだよ」



部長を科学室に残して遠乃さんと教室を出た。



昼休みも後数分で終わる感じだ。



中等部の別れ道まで送ると遠乃さんは一礼をする。



「ごめんね、変な事に巻き込んで」



「いえ、楽しかったですよ」



「そっか」



「楽しかった」って言ってくれてるけど、表情がそう見受けれない。



おそらく言葉だけで言っているのだろう。



「ねえ、遠乃さん」



「はい」



「文芸部って興味ないよね?」



おそらくないと言えるけど、なんとなく興味本位で聞いてみた。



結果は分かっているのだけど。



「ないです…」



「そうだよね…」



遠乃さんはまた一礼をして、今度こそ中等部の中へと入っていった。




「はあ、困ったな」



昼休み終了のチャイムが鳴った所で教室に入った。



と、壱はまだ俺の教室の方にいて、戻る所だった。



「奏兎! どこ行ってたんだよ? おっせーんだけど」



「悪い、部長に捕まって、実験台にされてた」



「…うわー」



部長の名を出した途端、壱はご愁傷さまみたいな表情で俺を哀れんでいた。




「ご苦労さんだこと」



「はは」



部長は頭脳と容姿だけはいいけど、行動はもう破天荒の破天荒だが。





◌ 。˚◌◌ 。˚◌◌ 。˚◌◌ 。˚◌◌ 。˚◌





放課後、いつものように文芸部の部室に向かい中に入る。




本棚から一冊の本を取っていつもの場所に腰を掛ける。



「はあ、どうすればいいんだろう」



遠乃さんの事もう少し知りたいのに、上手く歩み寄れない自分がいる。



まあ、遠乃さん自身が歩み寄ろうとしないのが一番の問題だけど。



「もう、奏兎! また先に行ったでしょ」



と、愛華がむくれながら部室に入ってきた。



「いや、別に向かう場所同じなんだし、一緒に行く事ないだろ」



「それでも、あたしは一緒に行きたいの! 壱となら待ってるでしょ」



「まあ、時と場合によるけど」



愛華はなぜかいつも俺と一緒に居たがる。



それは小学校の頃からそうで、勝手に行くとこうやって拗ねる癖がある。



「そんなに1人が嫌なら壱を待ってればよかったじゃん」



「あいつを待ったってしょうがないの!」



「意味がわからんのだが…」



「むうう」



拗ねる愛華を放っておいて、もう一度本に目を向けた。



「ねえ、なんでそれ読んでるの? 普段そういう倫理的な本なんて読まないのに」



「んー別に」



俺が読んでいたのは、人と仲良くなる系の論理本である。



こういうので参考できるとは思っていないけど、でも何か方法とか書いてあったら参考にしたい程度だ。



こんなに人と仲良くするのが難しいとは思わなかった。



普通に声掛けたら仲良くなれるものだと思ってたけど、愛華の時も壱の時もそうだったから。



まあ、壱の場合は少し特殊だったけど。




「やあ、諸君!ご機嫌! 久しいな、元気してるか?」



「………」



「部長」



「はあ」



しばらくして、他の人達が部室に集まってきて、最後に現れたの部長だった。



なぜか、偉そうな言い方だった。



「………」



ことちゃん先輩を見ると、ニコニコ笑顔なのに怒っていそうな表情をしていた。



(あれは、絶対に怒ってるな)



「あらあらまあまあ、突然偉そうにやってきてなんですの?」



「何を怒ってる?私はまだ何もしてないぞ!」



「という事はまた何かしようとしているんですね?怒りますわよ?何かしようとしたら」



「いや、既に終わった後ですよ。俺、実験台にされました」



「………」



俺の言葉にぷちんとなったのかことちゃん先輩の雷が降り注いだ。



「実験台を探すなって言いましたわよね? 忘れたのですか?」



「いだいいだい…痛いって!」



ことちゃん先輩はそのまま、部長の腕を強く握り始めた。



「失礼言うな!実験台受けてくれた報酬として入部届を渡しておる!」



「実験台にされて、誰が入るんですか?」



すごくごもっともな意見だ。



「確かに」



「科学部と勘違いされそうだよな」



「というか桐峻くん、あの子は来ないのか?」



もう復活したのか、同じく実験台に巻き込まれた遠乃さんの事を聞いてきた。



「来ませんよ」



「なぜ!?」



「なぜって来る訳ないですよ」



「そうなのか…」



遠乃さんは人と歩む気もないから、部活に入る気もないのだろう。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ