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episode7 ②

「で、何すか、これ?」



理科準備室から持ってきたのは、訳のわからない椅子とヘルメットがくっつかれた機械だった。



「ん? 見てわからんか? チェア椅子だ」



「そりゃあ、分かりますよ。だから、これは何なんですか」



「では、説明しよう!」



部長はうざい程に高らかな声で、なぜか無駄な程の大きな仕草で説明を始めた。



(…相変わらず鬱陶しい人だ)



「これは、夢を見た映像が見れるというものだ」



「は?」



(夢?)



「…へーそれで、体に影響とか大丈夫なんですか?」



「当たり前だ!」



全く信用性のないその機械に疑いの表情を向けていた。



「さあさあ、桐峻くん。座って座って」



ぐいぐいと押すように椅子に座らそうとする。



「分かりましたから、押さないでください」



素直に椅子に座ると、ヘルメットのようなものを渡されたのでとりあえず被った。



すると部長は付いてる機械をぱちぱちと押し始めた。


「さあ、目を瞑ってくれ」



「はい」



言われた通り目を瞑って、何秒かすると何か頭に走った気がした。



(あれ、これって今日見た夢?)




「終わったぞ」



ひょいと被りものをとられる。



「どうだい、今日見た夢と同じだろう」



「確かにそうですね」



部長はまた機械をぱちぱちといじり始めた。



「ほら、出たぞい」



「へえ、あ、やっぱり今日見た夢だ」



機械に映った映像を見ると、やっぱり今日見た夢だ。



どんな夢だったかいまいち覚えてなかったから、今思い出した。



「女々しい夢だな」



部長はなぜかつまらそうな顔で俺の夢の映像を見ていた。



「うるさいですね。夢だから仕方ないでしょ」




「まあいいか」



妙に釈に触るこの感じはいったい何なのかと言いたいけど、とりあえず気にしないでおこう。



部長だし。



「じゃあ、君もやってみようか。えーっと」



「遠乃さんですよ。遠乃 音唖ちゃん」



次に遠乃さんに目を向けたが、名前を知らないので遠乃さんの名前を教えた。




「?」



なぜか、不思議そうな表情をされたのが気になったが。



「この子と知り合いだったのか?」



「そうですけど」



「なぜ言わない?」



むしろなぜか驚かれた。



「ていうか、さっきこの子の名前言ってたんですが」



今更すぎて、こっちが驚くのだけど。



「そ、そうだったのか。それは失敬」



「………」



本当、この人って自分の興味のない事はスルーするんだから。



「さあさあさあ」



「あ、はい」



部長にそそのかされたものの、遠乃さんは大人しく椅子に座る。



「彼女はどういう夢かなー」



部長はなぜかご機嫌な様子で鼻歌を歌っていた。



そんなに楽しみなのか。



数秒後、反応が出たのか俺と同じようにひょいと被り物を取った。



「………」



俺も遠乃さんがどういう夢を見ているのか気になったりしたり。



「………ん? んん?」



部長は機械を見つめるが、少しだけ不可解な表情をしていた。



「どうしたんですか?」



「映像が出なくて真っ白なんだよな」



「………真っ白」



同じように覗き込むと確かに真っ白で何も映っていなかった。



「あれーこれはどういう状況だっけ? 確か、説明書を作ってあるから…えーっと」



ごさごさしている部長を横目になんとなく遠乃さんをみやると、少し浮かない表情が気になった。



(遠乃さん?)



「おお、あったあった。えっと…そうかそうか。映像が出ないのは、《心に大きな悩みを抱えていて、そのせいで夢を見ていても脳内とリンクする事が難しく機械が判断できかねないから》だそうだ。…そうなのか?」



「………!?」



説明書の文に遠乃さんは更に沈んだ表情になった。



「えっと…」



「部長…あんまり聞いてあげない方が」



「まあ、そうだな。とりあえず実験は成功だ」



部長が簡単に引き下がるなんて珍しい気もするけど、それはそれでよかったと思う。




「では、実験台になってくれた2人に感謝してこれをやろう!」



「本位ではないんですが…」



そう言って部長が渡したのはお菓子のケースだった。



「チョコレート?」



「これって」



「無論、我が父が経営している会社で発売されていチョコレートだ」



「いいんですか?これ高いんじゃあ」



「家に山ほどあるので、食らうがいい」



(言い方がやばい)



けど、このチョコレート値段は高いけど、すごく美味しいって評判だったから一度食べたかったものである。



部長の性格ってありえない程おかしな人間だけど、家柄は結構よかったりするのも事実だったりする。



「ありがとうございます」



「ありがとうございます…」



お礼を言うと、また部長はごさごさと始める。



「と、遠乃くんにはもう1つあげよう」



「?」



と、部長が出してきたのは一枚の紙切れだ。




でも、なんとなくどこかで見覚えがある気が。




「?」




遠乃さんはそのまま普通に受け取って読み上げた。



「文芸部入部届…?」



「は?」



その文に目を見張った。



「ってこれ入部届用紙じゃないですか! 何ちゃっかり渡しているんですか?」



「ははっダメか?」



「ダメに決まってます! ていうか、なんで持ってるんですか?」



「いやだって、副部長が変な事する暇があるなら新しい部員連れてこいって言うから、こうして持ち歩いてる。実験台になってくれた人にはもれなく文芸部に入る特権がある。我ながらいい案ではないか?」



「あほですか? そもそも部長の実験台になってくれる人なんて他の生徒でいる訳ないじゃないですか」



「そうか、いい案と思ったんだが」



一応、部長としての責任はあるという事だけは褒めてあげてもいいが、やり方が頭のおかしい人だ。



なぜそこで実験台を付け足すんだ。



普通に声を掛ければいい事なのに。




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