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epispde 6 ③

「ここかな?」



詩音さんから書いて貰った地図を元に遠乃さんの家に向かった。




「アパートなんだ」



ここも妖協会が経営してしている不動産の一つだろう。



にしても結構立派なアパートだ。



鍵だけの古びたアパートより遠乃さんの場合は色々不安になる子で危なかしいから、オートロック式のあるしっかりしたアパートでよかった。





「…どうぞ」



急に尋ねたからすごい驚いた声をしていたけど、理由を言ったらなんとかロックを開けてくれた。



「ごめんね、急に来ちゃって。詩音さんにおかず届けてって頼まれたからさ」



「そ、そうですか。すいません、ご足労おかけします」



遠乃さんは相変わらず、よそよそしく警戒心丸出しの態度を向けられた。



(カフェで居た時と同じだな)



部屋に上げてもらいリビングに通してくれると、俺は少しだけ驚いた。




なぜなら、部屋の模様が少しだけ予想外だったから。



(かわいい部屋)



遠乃さんの見た目から見ればその通りなのだけど、遠乃さんの性格で見れば少しだけ予想外だったのかもしれない。



もう少しシンプルな感じの部屋かと思っていたけど、白とところどころにパステルカラーがあるきれいでかわいい部屋だった。



遠乃さんらしい女の子らしい部屋なのだろう。



(そりゃあそうだろう…遠乃さんも女の子だもんな)



「あの、どうかなさいました?」



「あ、いや」



ぼーっと部屋を傍観していたら、遠乃さんがお茶を持って現れた。



「どうぞ、あたたかいお茶です」



「ありがとう」



「でも、さっきも飲んでましたから、いらなかったですか?」



「全然、外寒かったし。ちょうど体冷えてるからありがたくもらうよ」



「そうですか、ありがとうございます」



持ってきてくれたお茶をすする。



(あ、ほうじ茶だ。おいしい)



「あの、私の部屋おかしいですか?」



部屋をじっと見ていたのを気付いていたのか、不思議に感じたのだろう。



「あ、いや、かわいい部屋だなって思って」



「えっ」



そういえば、よくよく考えると愛華以外の女子の部屋に入ったのは初めてだ。



愛華の家は昔から訪れてて極普通に入っているから、そもそも気にした事なかったけど、遠乃さんは違う気がする。




「そうですか…ありがとうございます」



(あっ)



ふとソファに目を向けると、猫のクッションが置いてあった。




(これって確か…)



「ねえ、遠乃さん」



「あ、はい」



「これ、アニマルシリーズのもこふわクッションだよね?」



「はい、そうですけど、知っているんですか?」



ふと遠乃さんの表情が柔らかくなった気がした。



(あれ今)



「うん、だって今、小学生や10代の女子に人気なんでしょう? うちの妹もペンギンの持ってるし。それにこれかわいいよね」



「妹さんいるんですか?」



「うん、小5のね」



「そうなんですか。私にも小6の妹がいるんです」



「そうなんだ、同じだね」



「そうですね…」



遠乃さんはなぜか浮かなそうな表情に陥ってしまった。



(まずい、よくない話題だったのかもしれない)



何か明るくする話題に変えてあげないと。



と、ふと目についたのは。



「あ、ベッドにもあるんだ。これは羊なんだ、かわいいね」



「あ、はい」



また表情が柔らかくなって、遠乃さんはベッドに置いてある羊のクッションを一つ手に持ち俺に見せる。



「かわいいですよね、羊ちゃんのクッション。私、羊が大好きなんです。もこもこふわふわしていて、それにこのクッションはもこもこふわふわで気持ちいいんです」




「………」



その時、俺はまたあの表現を目にした。



一瞬だったけど、笑顔を見せたんだ。



すごくかわいかった。



(かわいい)



最初に見た悲しげな表情ではなく、とてもかわいくて俺が思っていた通りの笑顔だった。



その時思ったんだ。



やっぱり俺はこの子の笑顔をもっと見たいんだ。



俺に対してだけに向けてほしいって。



知りたい、助けてあげたい。



おそらくこの子の持っている秘密は計り知れないものだと事は分かっている。




それでも、俺がこの子の心に少しでも入ってくれればいいなって思ったんだ。



まだ出会ったばかりなのにこんな気持ちになるなんておかしいかもしれないけど、それでも遠乃さんの事をこのままほっとくなんて俺にはできない。



すみれさんに言われたからでもなく、これは自分の気持ちなんだと思う。







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