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episode6 ②

「………」



遠乃さんの後を俺は追いかける事はしなかった。




どうせ追いかけた所で何も変わらないから。



「あれ、音唖ちゃん帰っちゃったの?」



「あ、はい」



詩音さんが残念そうな表情で俺に尋ねる。



「そう…。また、何も頼まなかったなー。ふう…おかず用意してたのに、渡しそびれちゃった」



「おかず?」



「うん、音唖ちゃん、1人暮らしだし、何かと心配じゃない。だから、渡してあげてるんだけどね」



「ああ…」



確かに遠乃さんってイメージからすれば、女の子らしいから家庭的だと思われぽいけど、おそらく料理はできない子だろう。



「あ、そうだわ!」



詩音さんが何かを思いつたかのように手のひらに軽くポンと置く。



「?」



「ねえ、奏兎くん。頼まれてくれない?」



そう言って、詩音さんはニコニコした笑顔で俺に向けてきた。



「えっ?」



すると、詩音さんはすみれさんを呼びに奥へと向かった。



「ここ、音唖ちゃんの家ね」



「あ、はい」



すみれさんは遠乃さんの家の住所が書かれた地図と宛先を渡してくれた。



「はあ、もう」



「………」



すみれさんはなぜか呆れた表情で溜息を付いていた。



「まったく、詩音は…。勝手に決めんといてほしいわ」



「あら? いいじゃない。むしろ、おかしいのはすみれちゃんの方でしょ?」



すみれさんの愚痴に近くを通った詩音さんが反応した。



「しょうがないやろ〜そういう方針にさせたんのは会長なんやから」



「でも、あんまりにも可哀想じゃない?いくら何でも」



「仕方ないんよ。音唖ちゃんは…」



「えっそれって」



詩音さんが続けてすみれさんに問い詰めようとした所で。



「すいませんー」



「あ、はーい」




詩音さんは店内のお客さんに呼ばれて向かっていった。



「はあ、もう…。まあ、ええわ。奏兎くんに教えたって言ったら怒るんやろうなー。でも、放って置いて自分から動くまで待てって言うけど、音唖ちゃんはおそらく心を閉じてるから、誰かが差し伸べてあげんと変わりはせんよ」



「………」




誰かが…か。



遠乃さんは何かがあったから、ああも心を閉じて哀しい目をしているのだろう。



「はい、これどうぞ」



詩音さんからタッパの入った紙袋を渡してくれた。



「ありがとうございます。じゃあ、さっそく行ってきます」



「あの」



そう言って、立ち上がろうとした時、すみれさんが俺に声を掛けてきた。



「あ、お会計ですね」



「そやね、それもそうやけど」



「?」



お会計以外だとしたら、遠乃さんの事だろうか?



それ以外出てこない。




「奏兎くん、こんな事を言うてしまなんて会長に怒られるやもしれん。でもな、うちは音唖ちゃんを野放しなんてできひん。せやから、奏兎くんぐらいしかこないな事頼まれへんのや。…お願い、音唖ちゃんの事を見捨てんであげてほしい。どんなに音唖ちゃんが冷たくあしらったとしても、君だけが唯一の頼りかもしれんの。…奏兎くんぐらいやの、音唖ちゃんに近づこうとしたん。あの子、誰に対しても冷たくあしらうから、みんな厳しい態度を向けるんよ。もうどうしたらいいんかわからん。会長には無闇に接するなって言われとるし。だったら、なんで保護者にさせるんやって思うさかい。…会長は音唖ちゃんの事、なんもわかっとらん。あの子は何もしいひんのちゃう。何もできひんのや」




「………すみれさん」



おそらくすみれさんは、遠乃さんが心配で心配で仕方ないんだ。



でも、会長さんの指示は絶対だから、無闇にできないのだろう。




でも、妖魔を見えているけど闘う力を持たない俺だったら、害はないと認識しているのだろう。




(だから、なのかな……)




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