episode6 ①
「ねえ、遠乃さん」
とりあえず、気を落ち着いて遠乃さんに尋ねる。
「俺はね、君のことを知りたいと言ってもダメなのかな」
「………」
俺の尋ねに遠乃さんは、さっき程見せた笑顔と違ってまた哀しみのある浮かない表情を見せた。
「ごめんなさい」
「それはどういう意味のごめんなの?」
(やはりしつこいのだろうか、だから嫌がっているのかな)
「…」
少し黙り込んだ後、遠乃さんはゆっくりした口調で口を開いた。
「…桐峻先輩は、会長さんや妖魔協会の人達と比べようがないぐらい優しい人です。愛華先輩やすみれさんは優しいけど距離を取る接し方なので」
「……」
「みんながみんな同じじゃない事はわかっています。でも、本当の事言ったらきっとみんなみんな同じ態度になるはずです。きっと先輩も手のひらを返すような態度になると思います」
彼女はきっと適当に言っているじゃないと思う。
おそらく妖魔協会から軽蔑などあしらった扱いを受けてきトラウマのような感情になって俺にもそう言ってきたのだろう。
確かに俺は遠乃さんに何があったかは知らないけど、けど、俺が遠乃さんが気になる感情になったのは事実で間違いではない。
だから、軽蔑したりあしらったりしないと確信を持てる。
「そうかな? 妖魔協会の人は単に興味持たないからそいういう態度を示しているんじゃない? 本当に興味ある人間にそんな軽蔑する態度なんかしないんじゃない?」
「………」
俺の言葉にまっすぐに耳を傾けてくれいるけど、でも当の本人はどこか否定している面持ちに見える。
「そんなの分かりきってます」
なんの表情も変える事なく確信を持つようにやんわりと答えた。
「分かりきってるんです…みんなそう……両親でさえも」
2度目に言った「分かりきっている」という言葉は弱々しく儚げで今にも消えそうな口調だった。
「全部音唖が悪いから…」
(遠乃さんが全部悪い?)
そう言うと、俺にお礼を言ってそのまま立ち上がりカフェから去っていたのだった。