episode5 ③
「はい、奏兎くん」
「あ、ありがとう。詩音さん」
しばらくしていつも通りにメニューを注文したので、詩音さんがお盆にのせて持ってきてくれる。
「またそういうの頼んだんやねー。コーヒーとかは飲まんの?」
すみれさんは俺が頼んだメニューを見て言う。
「えーコーヒー? 俺コーヒー嫌いなんですよ。紅茶とかのがおいしいですよ」
「あ、そう。で、今日は何頼んだん?」
「ん? ミルクティーとラズベリーたっぷりホワイトプリンですけど」
「またそんな女子が頼みそうなものを頼んだんやね」
「ていうか、ここそういうのしかないじゃん」
「いや、奏兎くん。普通のあるよ」
「うーん、でもどこにでもあるのですよね」
俺はだいたいどこ行ってもそうなのだが、女子が頼みそうなメニューばかり頼む傾向があって、定番スイーツは好みではない訳ではないが、単に美味しい物を食したいだけ。
結果、女子力高いとか何とか言われる羽目になるのだろう。
別に狙っている訳じゃないのに。
(んー甘酸っぱい)
ラズベリーの酸味が口いっぱい広がって甘酸っぱくてとても美味しい。
「はあ〜」
今日も寒いから暖かいミルクティーがとても美味しい。
「ミルクティーおいしい」
(それにしても)
何気なく窓の方へと目を向ける。
「遠乃さん…まだかな」
俺が部活まで休んだ理由は、遠乃さんの事を聞く為なのだが、すみれさんは結局教えてくれる事はしてくれなかった。
「はあ…」
別に俺はただ知りたいだけなのに。
それも難しいのだろうか。
「……なんで、君は」
俺の感じた感情は浅はかだったのだろうか。
それでも、あんな目のしたあの子を放っておく事なんてできない。
まるであれは、あの時の愛華のようだ。
確かに昔の愛華と似ているものはあるけど、だけど何かが違うものがあるのも事実だ。
それはなんだろうか。