episode 4 ③
「どうして? 君は女の子なんだよ? それなのに闘う事でしか生きる価値でしかないなんて、そんなの変だよ」
「・・・・」
俺の発した言葉に遠乃さんは、また黙り込みグっと下唇を噛みしめ下を向いた。
「…そんなの分かってるんです…私が変だってこと」
遠乃さんは自分を責めためるかのように微かに震えた声を出した。
「…でもしょうがないんです。…だってどうしようもないから、それしか今の私には出来ないんです」
(できない…)
遠乃さんは先ほどから「できない」という単語を繰り返し言っている気がする。
「ごめんなさい…」
「遠乃さん!」
遠乃さんは俺に謝りそのまま校舎の方へと戻っていった。
「あっ…」
俺は後を追おうとしたけど、ちょうどその時に昼休みが終わりのチャイムが鳴り響き、仕方ないのでジュースを買って教室へと戻った。
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「奏兎遅いっ」
「ああ、ごめん」
教室に戻ると壱や友達が少し苛立った様子で待っていた。
「ほら、ジュース」
壱達にジュースを渡して、さっさっと自分の席へと座る。
「どうしたんだ、奏兎の奴」
「さあ、でも今日変じゃね?」
「確かに」
買ったジュースを開け飲み始めるが、向けている目線はどこか心ここにあらずである。
しばらくして、5時限目の授業が始まるチャイムが鳴った。
(どうしたもんかな…)
授業中、俺はずっと遠乃さんの事で考え込んでいた。
「奏兎、どうしたんだよ。昼休み帰ってからなんか変だよ」
「ああ、うん…」
「?」
授業終わり壱は俺の席に近寄り、心配そうに聞いてくる。
「どうしたらいいかと思って…」
「何が?」
「遠乃さんのことで」
「音唖ちゃん?」
「うん…困ったな。はあ…」
「奏兎…お前」
「うーん」
おそらく壱は何か勘違いしている様子だけど、俺は気にしないでいた。
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放課後になり、掃除している愛華に声を掛けた。
「なあ、愛華」
「うん、なーに?」
「今日さ、部活休んでいいか?」
「えっ」
「どうしても行きたい場所があって」
「そうなの? 別にいいけど、ことちゃんにはあたしが言っておくし」
「ありがとう」
「ああ、でも、あの人には…別にいいか」
あの人っていうのは、文芸部の顧問のことで、めったに部活に顔を出さなくて、来てもなぜか別のものを置いて預けていくという結構な程に適当人間である。
よくまああんなんで、教師なんかやってられるものだと感心する程だけど。