episode4 ②
「どうしてそう言い切れるの?」
いくら遠乃さんが強い力があるとしても、特別狙われるなんて、はっきりと言い切れるものだろうか。
「適当に言っているんじゃないんです。そういう体質なんです、音唖の体は。妖魔に狙われやすく、力を持っている人間が音唖の側にいたら、その人まで狙われやすくなるんです。だから、近づいてほしくないんです」
(だから、そう言ってたんだ)
きっと先程と同じようにこれ以上は深くは聞かない方がいいのだろう。
「別に今はさ、妖魔狩りの事も力の事も別に深くは聞いたりはしないよ。しないけどさ、これだけは聞いてもいい?」
「なんですか…?」
俺は最初から気になっていた。
遠乃さんの表情があまりにも哀しそうで辛そうで、そして昨日の遠乃さんは更に辛そうで哀しそうだった。
「遠乃さんはどうして、そんなに哀しそうな目をしてるの?」
「哀しそうな目?それ…昨日も言ってましたよね?どういう意味で言ったんですか?」
「言ったでしょ?俺は人のオーラが視えるって。君の瞳はいつも哀しそうに視えるんだよ、辛そうで苦しそうで本当は誰かに助けてほしいという気持ちがあるけど、それが出来ないでいるような感じがする」
「っ!?」
遠乃さんは俺の発した言葉に不意を突かれたかのようにびくっと反応し大きく戸惑いを見せる。
「そ、そんなの気のせいですっ」
「遠乃さん?」
遠乃さんは突然大きく身動きをして俺に突っかかるように放ってくる。
「誰かに助けを求めてるなんてそんなのありえません。だって音唖は…音唖は闘う事しか何もないから、もう何も残ってないから…全部音唖のせいだから…」
自分を責めたてるかのように、ひどく卑下をする。
「闘う事しかないって…」
そんなの中学生の女の子が言うセリフではないのに、それに遠乃さんは可愛い女の子なのに闘うなんて、妖魔と闘えない俺からすれば違和感でしかなか
った。
「そんなの変だよ…遠乃さんは女の子なのに、闘う事しかないなんて」
「そうですよね…、普通は怖くて仕方ないですよね。でも、音唖は闘う事でしか生きている価値なんて何もないんですから」
遠乃さんは先ほどから何を言っているのだろう?
彼女が言っている言葉はどうしても違和感が付き刺さって仕方なかった。
そんな言葉を使ってほしくなかった。