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ダーク・イーター  作者: loveclock
邂逅編
2/19

雨の日

 私は歩きながら冷蔵庫の中身を思い出そうとしていた。

 ただ、脳裏に浮かび上がるイメージは萎びた白菜に転がる缶ビールのみと、これは記憶力が乏しいだけで、実際の冷蔵庫の中身まで悲しいことになっていないだろうと願った。だからといって、もう日付も変わろうかという時間に開いているお店もない。都会では二十四時間営業のお店も増えたというが、この街にはまだ数も少なかった。

「もっとねだればよかったかな」

 夕方から入るアルバイトの居酒屋では夕飯の代わりにと女将お手製のまかないをご馳走してくれるが、それでも終業時間が過ぎたころにはお腹が鳴り始める。

「たまたま、遅くまで開いている店でもないかしら」

 居酒屋も軒を連ねる商店街の、どのお店もシャッターが降りている。人の気配も絶えた夜の商店街を蛍光灯が寂しく照らしていた。

「そんなわけないか」

 誰に聞かせるわけでもない独り言をこぼしながら歩いていると肩に何か当たった。顔を上げると深い藍色の空に薄く雲が伸びていた。

「雨だ」

 歩きながら背負っていた鞄から折りたたみ傘を取り出す。しかし傘を取り出したところで残った手のひらを広げた。時折、指に当たって雨粒が弾ける。

「さすほどでもないか」

 商店街の明かりも弱くなり、周囲に家々が立ち並び始めた。明かりが着いた家屋もまばらだ。遠くでけたたましく響く自動車の排気音に反応して、どこかで犬が吠える。

 雨は相変わらずの調子だが、自然と足取りは早くなっていた。三月も、もう終わるが日が沈めば、まだそれなりに冷えてくる。雨にあたって風邪をひいてはアルバイト先に迷惑をかけることになる。そもそも体のつくりが丈夫な方でもなかった。

 早歩きで住宅街を進むと、下宿先の木造アパートが見えてきた。金のない学生が肩といわず身を寄せ合い生活をしている。それなりの築年数のせいであちこちに歪みがあり、階下に住む貧乏学生はどうにかして上階に住む方法を模索しているが、天上の貧乏学生はそんな話は露知らず優雅に暮らしている。

 私はと言えば二年次の時の必死の工作によって、卒業する四年次から上階の、それも端の部屋を継承することに成功していた。周囲からは羨望というよりも怨嗟の念が送られ、よからぬ噂まで立つほどだったが、これからの生活を思えば歯牙にもかけない程度であった。

 ただ春休みとあってアパートに住む学生のほとんどは帰省している。すぐそこに四月の影は迫っていたが学生が戻ってくる傾向も無い。きっと授業が始まるぎりぎりまで、実家で過ごしているのだろう。

 アパートの錆ついた階段を上がり自室の鍵を開ける。部屋に入ったところで、バケツをひっくり返したように雨が降り出した。

 突然のことに驚くが、運が良かったと一息ついた。

 窓に近づく。街に明かりは乏しく、強く降っている雨のせいもあって、わずかにアパートの裏にある空き地の輪郭が分かる程度だった。カーテンを引きながら考える。明日はアルバイトが休みなのでこのまま起きているのも悪くはない。両親は里帰りを催促する電話を寄こすが、実家に帰っている間に部屋を取られる危険は十分に残っていた。

 部屋の冷蔵庫を開くが、やはりというべきか缶ビールしか見当たらなかった。取りだして半分まで飲み布団に向かう。枕元に缶を置くと敷きっぱなしの布団の上で大の字になった。特に何かすることもなく雨音を聞いていた。

 相変わらず木造の屋根に穴を開けるような勢いで雨は降っていたが、雨脚は次第に弱まり、それでも止むことなく一晩中降り続けた。


「戸上さん。起きてぇ」

 穏やかな呼びかけに私は重い瞼のまま感激していた。普段は屑を見るような眼を学生に向ける寮長の長谷さんが、モーニングコールをしてくれるなんて。これが上階に住む者の特権かと、私はもう少しこの優雅さを堪能したかったが、次の瞬間、耳に届いたのは打撃音だった。

「と、の、う、え、さ、ん。で、ん、わ、よぉ」

 ノックと呼ぶにはあまりにも乱雑で下品だった。打撃音はほんの数秒の間にも関わらずその勢いが増している。このままでは扉を壊されてしまうと、跳ね起きた私は開き切らない瞼のまま玄関口に立った。ドアノブを回すとノックが止み鬼の姿が現れた。

「あら、戸上さんたら、もう十時よ。いけないわぁ、こんな時間まで寝ているなんてねえ。駄目よ、もうすぐ学校も始まるんだから」

 私の姿を見た瞬間、寮長の長谷はまくし立てた。笑っていない笑みから視線を避けつつ私は目をこする。

「さっきも言ったけど電話よ。あたしは部屋に戻るから」

「あの、どなた様からでしょうか」僅かに開いた目の隙間から日の光が染みる。

「今田さんよ」

 聞いた瞬間、私は階段を降ろうとする長谷の横をするりと抜けて、アパートの玄関口に立った。カウンターにある電話機から受話器を取った。

「もしもし、友里恵」

「あー、京子。遅いよ。いつまでも待たせるのよ」

 思わずふふっと笑みがこぼれた。大学に通うようになってからというもの、その声を聞かない日は無いくらいだった。

「ごめん、ごめん。寝てた」私は頭を掻いた。

「いいもんだね。のんきな学生は」受話器の向こうで友里恵がわざとらしくため息をついた。

「あんたがそれを言うんだ。で、どうしたの。」

「それがね。聞いてよ」

「何なに。」

「おじいちゃんがね。ぎっくり腰になっちゃたのよ」

「ぎっくり腰」馴染みのあるような、ないような単語を私は鸚鵡返したが、実感がわかない。

「そう。それでね。しばらくそっちに帰れそうにないの」

 カウンターの壁にかけてあるカレンダーに視線をやる。来週には授業が始まろうとしていた。

「もうすぐ学校始まるけど、大丈夫」自然と受話器のコードに指が絡んでいく。

「そう。そのことで電話したのよ」

「代返ってこと」

「ううん。学校に連絡したらね、うちの学校って緩いよね。どうしても学校に来ることが出来ない場合は、履修届の提出を遅らせてもいいっていうの。出席できなかった場合は忌引き扱いにするって、ほんと緩いよね」

「別にうちの学校だけの制度じゃないと思うけど」

 実際には不慮の事故で学校にいけない生徒のための制度ではあると思うが、友里恵の場合は果たして当てはまるのだろうかと疑念がよぎった。

「でもさ、実際に授業に出れないとなると、楽に単位とれるかわからないじゃない」

 私はああ、と頷いた。先輩たちが積み上げてきた情報から、どの授業が楽に単位が取れるかどうかは大体分かるが、それでも講師が使命感を思い出し、急に授業の難易度を変えることも考えられる。怠惰な学生にとっては死活問題だ。

「だから、京子たちに情報収集をお願いしたいわけ」

「なるほどね、いいけど」

「もちろんタダで、と言うつもりはないわ。それ相応のお礼は用意するつもり。ね、後生だから、引き受けてくれないかな」

 受話器の向こうで友里恵が拝んでいる様子が目に浮かんだが、それはきっと私の希望に近いのだろう。現実の友里恵は学生というより、むしろ本職は交渉人です。といわんばかりの駆け引き上手だった。

「いいよ。分かった。友里恵のお眼鏡にかなうように、こっちで精査してみるよ」

「ほんと、ありがとう。よろしくね」

 受話器を戻すと私はしばらく虚空を見つめた。もしかして友里恵に担がれているのではないだろうか。いやいやそれはないと思わず頭を振った。

「お、京子」

 呼ばれて振り返れば、山崎登美子の姿があった。一つ上の学年で同じアパートに住む先輩としてお世話になっている。

「なに、今起きたような格好ね。怠け者だね、まったく」

 私は「先輩には言われたくないです」と声をかけつつ、服装に目が行った。毎晩踊りに行っているはずの先輩がスーツを着ている。ほとんどすっぴんかと思われた、その顔は近づいてやっと化粧をしているのがわかった。

「先輩、就活ですか」

「そう。これからね。早め早めに行動しないと」

「早めって、確か十月が解禁日でしたよね」

「就活をなめているね。水面下ではみんな動いているんだよ」

「わたし今度三年生ですから」

「まだ就活しなくていいてっか。呑気だね。後悔しないように単位は十分取っておくことだ。若人よ」

「わたし、先輩と一つしか年齢違いませんけど」

「一個でも若人だよ、後輩。ああそうだ。近いうちに戸上のところにご飯食べに行ってもいいかな」

 瞬時に思い出されたのはゼミの仲間が店を訪れた時のことだった。突如として店に現れた友里恵も含んだ集団は、私などは元より素知らぬ顔で席に着くと静かに食事を始めた。 

 私の落ち着かない態度から女将に彼らが友人であることを看破されるも「静かでいるうちはお客様よ」と笑顔で対応されることに感謝していた。

 だがやがて酒が入るようになると、そこは愚かな学生の集まりだった。あっという間に平常心を意識の彼方に失うと、わけのわからない論争を始めた。迷惑を被ったのは近くの客だったが注意をすると逆上し危うく掴み合いになるかと思われたが、女将が両者を裁ききり、どうにかは難を逃れた。

 閉店後、静かに食器を片しながら女将は

「京子ちゃんのお友達は、出入り禁止ね」とにこやかに釘を刺した。女将の笑みに恐怖と申し訳なさを覚えながらも私は頷き返し、当然として後日ゼミの仲間に半ばやけくそ気味に怒鳴り散らした。

「駄目です。絶対に来ないでください」

 山崎は肩をすくめたままアパートを出ていったが、私はその背中から嫌な予感を感じ取っていた。

 

「京子ちゃん、ちょっといいかしら」

 夕方、開店前の店内の床を掃除していたときだった。どうにもこびりついた床の汚れが気になり、モップまで取りだしたのだが、なかなか落ちない。水拭きでも試してみるかと思案していた。

 視線を上げると女将は微笑んでいた。女将は両人差し指で自身の笑窪を持ち上げる。その仕草をみて、ああと私は気付いた。「笑顔を忘れないでね」は女将の口癖だった。

「京子ちゃん。あのね、そっくりそのまま練り物さんで買いものを忘れたみたいなの。悪いのだけれど買ってきてちょうだいな」

 女将のおっとりとした、だが優雅さを随所に含んだ佇まいは町内のそこかしこで噂されていた。腹の探り合いをしていた常連客の一人が抜け駆けで女将に言い寄ったが、女将は風に揺れる柳のように受け流した。

「誰のものでもないわ、でもね、誰のものでもあるの」

 聞きようによっては非常にまずいことになるのではと私は思ったが、その後、女将に言い寄る人は現れず、今はもう皆ちびちびと女将を肴に酒に口をつけるだけだった。

「種類は、いつものですよね。練り物のほかには」私は懐から自作のメモ帳を取り出す。

「ほかにはないと思うわ」

 女将はそう言っていくつか紙幣を手渡した。練り物を買うにはやや多い。

「余った分はお駄賃よ。なにかお腹に貯まるものでも買ってらっしゃいな」

 私は返そうかと思ったが、素直に受け取ることにした。

 お店を出て商店街の大通りが目に入った途端、私は仰け反った。店という店に人だかりができていた。と思っていた以上に周囲が暗いことにも気づいた。空を見上げれば厚い雲が覆っている。なるほど雨が降りださないうちに買い物を済ませてしまおうという人たちなのだろう。

 私も人だかりに飛び込む。かき分けて目的の練り物屋にむかった。アルバイトに入ったばかりの頃は何を買うにも時間がかかり、心配した女将が様子を見に来るほどだったが、今では漂ってくる匂いだけで、どこのお店の惣菜かを判別できるようにまでなった。

「すいません。おじさん」私はよく通るように声をかけた。

 練り物屋もまたずいぶんと繁盛しているようだった。まだまだ寒さの終わりは見えそうにない。しばらくこの人だかりも切れることはないと思った。

「おお、京子ちゃん。店の準備中かい。後で俺んち閉めたら飛んで行くからさ」

「あんた、また勝手なこと言って」

 忙しそうにしながらも店を切り盛りする初老の夫婦は片手間に軽口を叩きあう。

「うん。待ってます。それで、練り物が欲しいんだけど。いつものやつでお願い」

「はいよ。ちょっと待ってくれよな」

 練り物屋の主人は馴れた手つきで、がんもや竹輪などを次々と袋に入れていく。

「いつもより多めに入れといたから」袋を手渡しながら主人がにっと笑った。

「どうも、ありがとう」

 私が紙幣を差し出すと、ほとんど同時に主人が右手を差し出した。私は主人から、お釣りを受け取る。

「いいって、いいって、これくらい。可愛い子にはサービスしちゃうよ」

「またあんたは、娘ほどの年の子に。京子ちゃんいつもありがとうね」

 私は再三礼を言って練り物屋を離れた。

 足の踏み場がないというには大袈裟かもしれないが、それでも人の往来が川の流れに見える程に商店街は賑わっていた。これだけの人が一体どこから集まったのだろうかと思いを馳せつつ、私は人々の喧噪の中に心地の良さを感じていた。

 ふと、私は視界に何かを捉えた。

 動き続ける流れの中に固定されたようにその場から動かない人がいる。

 一見して全身を黒に包んでいた。黒いロングコートを身にまとい、つばの広い帽子を深々と被っている。顔の半分を占める程の大きなサングラスが特徴的だった。

 春先に思わず心が浮足立つような人の格好には到底思えない。お葬式にだってもう少し明るい雰囲気を求めた格好をする。ただ私の視線はその人に吸い寄せられて動かない。

 黒い服の人の顔がこちらに向いた。私の鼓動が跳ね上がった。

 私は慌てて視線をそらした。震える足を動かして人ごみにまぎれる。そのまま来た道を戻ってお店に向かった。

 果たしてこちらを見ていたのだろうか。サングラスのせいで視線はおろか、本当にこちらを見ていたかどうかも怪しい。不安になってしまったが私の思い込みかもしれない。

 ただ、背中に視線を感じるのは私の思い違いだろうか。

 やがて、しとしとと音を立てて雨が降り始め、蜘蛛の子を散らすように商店街を賑わせていた人々は帰路に着いていった。


「一体あれのどこがいい男がだって言うのよ。話にならないっての。」

 私は山崎を抱えながらアパートの階段を上っている。完全に酔いつぶれている山崎が急に座り込んだり、あちこちに体を振るので今にも階段から転げ落ちそうだった。

「ねえ、京子もそう思うでしょ」

 なんとか階段を上り切ると私は山崎の部屋の入り口に先輩を降ろした。山崎はまだごにょごにょと文句を垂れ、私は曖昧に相槌を打った。山崎のバッグを探って中から鍵を取り出すと部屋に入る。せっかく手に入れた自分の部屋で吐かれてはたまらない。お互いに何度も部屋を行き来した仲だから気心は知れている。

 部屋の中は掃除が行き届いていた。わたしは少しばかり申し訳ない気持ちになる。

「もう駄目ぇ」

 山崎が呻くようにつぶやき、私は慌ててトイレに引っ張る。背中をさすると直ぐに嗚咽が溢れだした。

「ありがとう」

 洗面台で顔を洗ったあとに山崎は部屋の奥に這って行った。着の身着のまま畳の上で丸くなると寝息を立て始める。わたしは着ていたジャケットを山崎に被せて腰を落とした。

 部屋が綺麗な理由について私はよからぬ妄想を立てていた。ただアパートは男子禁制だし、なにより寮長の長谷さんはなぜか人が嫌いだった。ばれてもしたら追い出されるのはないにしても、しばらくはネチネチと嫌味を言われるのは目に見えてる。

「雨ね」

 私は驚いて腰を浮かした。山崎は目を丸くしている私を見て笑った。

「何よ」

「いえ、まだ眠っているとばかり」

「ずっと起きてたわよ」

「本当ですか」

 言われてみれば屋根を雨が叩いていた。気付くかどうかといった程の弱々しさだった。

 二人でしばらくの間、雨の音を聞いていた。静かすぎず、だが煩いというほどでもない音に包まれている。商店街の喧騒とはまた違った心地よさを感じていた。

 改めて先輩の部屋を見回すと、ちょうど腰と同じくらいの背丈の本棚が目に入った。近づいて背表紙を見れば、古典にも分類されるような小説が並んでいる。ほんのりと埃をかぶってはいるが新品同然のようにも見えた。

「持っていっていいわよ」

「読まないんですか」

 山崎は仰向けのまま頷き、私は笑った。「カーテン、閉めてくれるかしら」と先輩が頼むので私は窓に近寄った。ガラス戸から春の夜の冷気が流れ込む。暖かさを実感するようになるにはだいぶ先かなとカーテンを引いた。

「もう大丈夫ですか」

「うん。ありがとう」

 部屋を出る前に私は本棚から一冊抜き出した。作者の名前は知っていたが、実際に読んだことは無かった。文庫本だったが、それなりに厚みがある。

「読み終えたら、感想教えてね」最後まで先輩は仰向けのままだった。

 私は笑って部屋を出た。

 外に出ると寒さが肌身に染みた。息が白く夜の空に上がる。そういえば先輩にジャケットを掛けたままだったなと思いつつ自分の部屋に戻ろうとしたとき、それが目に入った。

 街灯の下に人が立ち、こちらを見上げていた。思わず息が止まりそうになった。私は自室に駆け込むと鍵をかけた。鼓動が早い。膝が震えて立っているだけで精一杯だ。

 商店街で見かけた、黒い服の人だった。街灯に照らされた下で、あの日とまるで変わらない、夜に溶け込む黒を身にまとっていた。

 扉を背にずるずると私の腰が落ちる。扉から感じる冷気が恐ろしく感じ、ほうほうの態で部屋の奥に向かう。力の入らない腕で電灯の紐を引くと、ようやく気持ちに余裕が出てきた。着替えて布団に倒れこむと、先輩から本を借りていたことを思い出した。

 文庫本は曲がっていた。弁償しなきゃないと思いつつ小説を開いく。字面を追うばかりで内容は一行も入ってこなかった。

 私は胸の内に何かが渦巻いているのを確かに感じた。


 カーテンの向こう側がにわかに明るくなり始める様子を私は眺めている。結局一睡も出来なかった。目を閉じて寝返りをくりかえしても脳裏に蘇るのは昨晩のあの出来事だった。

 サングラス越しだったが確かに視線があったと感じた。部屋の中央で仰向けのまま、私は天井の蛍光灯を見ていた。

「戸上さん。電話よ」

 呼びかける声に私は一瞬身を固くした。声を聞いたことはないにも関わらず、あの人に呼ばれている気がした。

「今田さんから」

 寮長の声に一度、身を震わせた。重い体を起こして玄関へと向かう。また扉を叩かれては気も落ち着かない。

 扉を開けると、驚いた表情で長谷さんが立っていた。

「あら、今日は早いのね」

 長谷さんについて階下へ向かう。カウンターの電話機を取った。

「もしもし、友里恵」

「お、早いじゃん。もしかしてあたしからの電話を心待ちにしていたとか」

 友里恵の言葉に心が軽くなる。か細く擦り切れそうな糸に太い別の新しい糸が巻き付く。

「どうしたの。急に」

「それがさ、授業の話なんだけど」

 私は驚いて言葉を失った。友里恵からの頼まれごとをすっかり忘れていた。だが授業が始まるまでは、まだ数日あった。

「実はね、明日にはそっちに帰れそうなの」

「どうしたの。急に」そっくり同じ言葉が出た。

「くだらない話で、あたしも恥ずかしいんだけどね。おじいちゃんのぎっくり腰がね、嘘だったのよ。あたしが家から離れるのが嫌だって。そんな理由で嘘をついてたのよ」

「それは、悪いおじいさんだね」

「でしょ。もう、あたしもさ、さすがに堪忍袋の緒が切れたわ。孫が留年したらどうするんだってね」

「それはすごいね」

「すごいかなあ。まあだから明日の昼過ぎには、そっちに着く予定だから」

「うん。了解」

 永遠に友里恵との会話が続いて欲しいと願っていた。頭の中で話題を必死に探すが、浮かび上がるのは昨晩の光景で、いくら隅の方に押しやっても膨らんでくる。

「京子、何かあった」

 言葉を失う。息を飲む。

「ううん。別に何もないよ」

「そう。じゃあね」

「うん」

 受話器を置くと僅かに巻き付いた糸がまたほつれていくようだった。訝しく長谷さんが私を見るが、無視して部屋に戻った。


「世の中、信じられるものが減っていくよなあ」

 居酒屋の席で二人組の中年が唾を飛ばしている。忙しい時間帯も過ぎ店内に残っているのは酔いどれか、静かに晩酌を楽しむ客だけだった。

「航空会社のことか」

「ああ。びっくりだよ。国の偉いさんが袖の下を受けていたなんて。なあ戸っちゃんはどう思う」

「ばれてないだけで、皆やっていると思うけど」呼ばれて中年のコップに酒を注ぎ足す。

「そうだよなあ」

 中年達が同じタイミングで相槌を繰り返すので笑ってしまった。

「もう俺、何を信じていいか分からなくて、一睡もできねえ」

「嘘つけ、お前がそんな繊細な心を持っている訳ねえだろう」

「それも、そうか」中年たちは冗談を飛ばしては酒をあおる。

「女将はどうだ、最近眠れているのか。寂しくないのか」中年の目つきはどこかいやらしかった。

 カウンターの端で、しっとりと女将は微笑んだ。

「御心配には及びません。ただみんながもっとお金を落としてくれれば、ぐっすりなのだけどね」

「貧乏人で悪うござんした」

 三人が笑う様子を眺めている。トラブルと無縁ではないが、嫌なアルバイトでもないと思っていた。

「戸っちゃんはどうだ。そろそろ大学が始まるだろう。」

「大丈夫。よく眠れているよ」

「へえ、よかったら秘訣なんかを教えてくれよ」

 返答に困っているとお店の扉が開き、夜の風が吹き込んだ。姿をあわらしたのはスーツ姿の山崎だった。

「お、いたいた」私の姿を見た山崎の表情が柔らかくなった。恐れていた事実に私は目がくらみそうになった。

 私のあからさまな態度を見て、女将は気付いたようだが微笑みを崩さなかった。

「あらあら、お一人様なら歓迎よ。こっちに座って」

 女将は山崎をカウンターに呼ぶ。照れながら先輩は女将の目の前に座った。

「学生さんなのかしら」

「はい。今度四年生です」先輩の前にコップが差し出された。

「あら、じゃあ京子ちゃんの大学の先輩なの」

「ええ、同じ学生向けのアパートに住んでいます。前から一度こちらに来てみたかったので」

「そうなの嬉しいわ」と女将はお酒を注ぐ。様子を見ていた中年たちは「おれのにも注いでくれよ」とつぎつぎにコップを掲げるが、女将はそよ風が頬に当たるよりも気にしない。 

 二人はずいぶんと意気投合したようで、「あんなに笑う女将は初めて見た」と客の一人が驚いていた。私は、それほど忙しくなかったものの、お客さんの注文に客席を往復していた。

「京子ちゃん、もう上がっていいわよ」

 お会計を終えたお客さんのお皿片付けていた時だった。上機嫌な女将は微笑みながら口を開いた。カウンター席に座る山崎の顔はすでに真っ赤だ。呑気に空になったコップを振っている。

 店内にお客さんは少ない。もう新しくお客さんがくることもないだろうから、一人で手が足りるのは、私にも分かってはいた。

「なんだかお顔もすぐれないし。今日はもう帰ってゆっくりしなさい」

 気遣いが心苦しい。断ることのできない私は、お店の裏方で着替えると帰路についた。


 霧雨に包まれたアパートの姿が見え始めると足が重くなってきた。物陰が角度を変え姿を変える度に足が止まり、喉がゆっくりと締められるような気がしている。明日には友里恵が帰ってくる。その事実だけでアパートの階段を上っていた。

 薄暗い部屋に戻ると明かりを点けて、借りた小説を読みだした。

 本の続きが気になるわけではなかった。ただ字面を追うだけでも他のことを考えずに済んだ。ページをめくる手は止めないが内容はおろか登場人物の名前すらも頭に入らない。ただ意識を没頭させるためだけに本を開いていた。

 今日も眠ることはできないだろうと感じていた。部屋を出て友人宅に泊まることも考えられたが、それこそ今度はその友人に迷惑をかけることも十分に考えられた。

 ふいに寒気を感じた。顔を上げると、雨が天井を打っていた。最近よく降るなと思いながら、本を片手に窓に近づいた。窓が開いているのかもしれないと思ったのだ。カーテンは引かれたままだったから、実際には可能性は限りなく低い。

 カーテンの隙間から指を入れると窓は閉まっていた。とりあえず安堵したところで私の体は固まった。たまたま隙間から見えた風景に私の背筋は凍った。

 空き地の真ん中に人が立っている。

 すっと手を引くと私は姿勢を低くする。今度は窓の下からそっと外の様子を覗きこんだ。

 空き地から人が消えていた。

 心臓が耳元にあるようだった。鼓膜が圧迫されるほどの鼓動が絶え間なく続き、耳鳴りが混ざる。だが周囲は静まりかえっている。

 見間違いだったと私は祈った。私は窓を背にして部屋の中央に戻った。

 背後から、どん、と音がした。それは確かに壁に何かがぶつかる音だった。

 私は身構えた。本は床に落としていた。

 カラカラと音がして、部屋に春の寒風が吹き込んだ。

 窓が開いた。

 動けない。足に根が生えたとはよくいったものだと、いまさらになって感じている。私はじっと風に揺れるカーテンを見ていた。

 布の向こう側に卵のような楕円のシルエットが浮かび上がる。ぬうっとそれはまっすぐに布をかき分け部屋に姿を表した。

 黒いつばの広い帽子に顔を半分覆うほどのサングラス。黒いコートのそいつは私の姿を確認すると、にやりと口角を持ちあげた。

 私は叫んでいた。そいつは私を見ると、さらに口角を持ち上げる。窓枠から身を乗り出して部屋に入ろうとする。そいつの顔は歪みきり、くしゃくしゃになっている。

「きょうこちゃん」

 男性とも女性とも聞こえる声で私を呼ぶ。老人のような子供のような声を重ねて喉を震わせる。あらゆる声音で私を呼ぶ。呼びながら部屋の中を這うように近づいてくる。

 足が動かない。そいつは近づいてくるのに、私の足は固まっている。そいつの腕が私の足に伸びる。指先がつま先に触れようとしてくる。

 近づこうとした、そいつの片足が本をはじき飛ばした。私とそいつの視線は共に本へと向けられる。ささいな間が私の硬直を溶かした。

 すぐさま振り返り玄関に向かう。たった数歩の距離が果てしなく感じられた。突然、躓き顔面を強打した。痛みをこらえて背後を見れば足に怪人の伸びた腕が巻き付いている。必死にもがく私を引きずる。次第に遠くなる扉が涙で滲んでいく。

「戸上さん」

その扉が大声とともに跳ね返らんばかりの勢いで開かれた。

「あたしのアパートで何してんのよ」

 玄関で仁王立ちしていた長谷さんは私たちを見るや否や、大股で飛び込み持っていた木の棒で怪人の頭を大きく振りかぶった。何かが軋む音がして、怪人の体が後方に飛んでいった。

「逃げるわよ」

 脚に巻き付いていた怪人の腕が緩んだ隙をみて、長谷さんが差し出した手を私は歯を食いしばって掴んだ。長谷さんに引っ張られる勢いで部屋を出ると、半ばアパートの階段を転がる勢いで降った。

「警察に電話しなきゃ。」

 私が受話器を持とうとして、長谷さんがそれを止めた。無理やり私の手を取ってアパートから出た。

「駄目にきまっているじゃない。追いつかれるわ」

「アパートに他の人は」

「あんたしかいないわよ。まったく一人で静かな夜を過ごせると思ったのに」

「じゃあ、どうすれば」

「交番で助けを求めるのよ」

 声を荒げながら長谷さんは私の前を走る。濡れた地面が足裏を冷やす。裸足であることに気づいたが、もうどうでもよかった。肺は酸素を求めるが、いくら口を大きくしても呼吸は楽にならない。多分気道まで吸ったところで吐き返しているのだろう。

「戸上さん。急いで」

 二人して夜の住宅街を進んでいる。雨はすでに止み、周囲は寝静まっている。どこの家にも明かりはなければ気配も感じない。二人の呼吸の音だけが町内で生きているようだった。

 長谷さんは時折背後を気にしながらも、決して歩みを止めない。

「あいつは」私は気になって声に出してしまった。

「さっきから後ろをついてきているわ」長谷さんの言葉に私の背筋が凍った。つま先と踵が腫れているのだろうか、痛みがぶり返す。それでも歩みを止めてはいけないと思っていた。

「ただ、早くもないしー」

 言いかけて長谷さんの視線が一点に注がれる。十字路に煙草屋が見えた。傍に公衆電話がある。

「ねえ、あんたお金持ってる」

 私はポケットを探った。小銭とお札が出てくる。以前女将から多めにもらったお駄賃だった。自分でも驚いた。ずっと入れっぱなしだった。

「やるじゃない」

 長谷さんの表情が柔らくなった。私たちは公衆電話に駆け寄る。長谷さんは私から小銭を奪うと素早く110番を押した。だが会話をすることなく受話器を外したままにして、再び走り出す。

「あの、警察に電話したんじゃ」

「そうよ。公衆電話から警察に電話を掛けるとね、向こうからこっちの場所が分かるのよ」

「知らなかった」

「だからこっちに来てもらうのよ。あとは逃げ回って時間を稼ぐわよ」

 長谷さんは再三、私を引っ張る。その指先の暖かさに私の瞼が熱を持つ。絶対に離さないと固く握り返した。

 私たちは住宅街を右に左に曲がっている。なるべく公衆電話の傍の道を何度も通るようにしている。私は背後を振り返る。怪人は頭を揺らしながらも一定の距離を保って私たちを追いかける。それともこれ以上は早く動けないのかもしれない。

「あっ」

 思わず声が出た。何回か曲がった後だった。視界の端から怪人の姿が消えていた。

「長谷さん」

 息が上がって喉が痛い。それでも私は必死に声を出した。

「後ろに、いない」

 振り向いた長谷さんの目が見開かれた。途端に上から衝撃を受けた。勢いをそのまま受け私はうつ伏せになり、顎を濡れた地面に打ち付けた。視界が光って破裂した。

「離れなさい」長谷さんが鋭く叫ぶ。

 僅かにとらえた視界から長谷さんが吹き飛ばされるのが見えた。地面に転がる長谷さんの背中が見える。背後から感じる重みが次第に増していく。私の四肢が悲鳴を上げる。

 頬を生暖かい息がなぞる。つんとしたかび臭さが鼻を刺す。「ふふっ」と怪人が私の耳元で笑った。

 もう駄目だった。涙が溢れてくる。歯が震えている。思考が定まらない。

「何をしているんだ」

 低い芯のある声がして誰かが、私から重さを引きはがした。すばやく体を起こされて誰かが私を抱える。両肩にがっしりとした温かみを感じた。

 私を抱えたのは初老の警察官だった。見れば二台の自転車がライトもそのままに地面に転がっていた。私を抱えた人とは別に、もう一人の若い警察官が怪物と組み合っている。

 ただ、組み合っていた警察官も押され気味になっている。徐々に彼の姿勢が歪み始める。ついに彼が押し潰されそうになるも、つかの間、彼は素早く腰を落として右足を相手の股下に滑り込ませた。腕を怪人の腰に回すと持ち上げて背中から投げた。仰向けに倒れ込んだ怪人に跨ると警官は手錠を腕に掛ける。

「大丈夫かい」

 手錠をかけて安心したのか初老の警察官が優しく私を見下ろす。私は震えながらも頷いた。警察官は「よかった」とほほ笑んだ。

「うわっ」

 野太い声と共に組み伏せていた彼が吹き飛ばされた。私を抱えていた警察官はすぐに彼に近寄り、怪人にむかって銃を構えた。遅れて、吹き飛ばされた彼もすぐに態勢を整えると拳銃を取りだす。

 怪人は道路の中央に立っている。かけたはずの手錠が地面に落ちていた。よく見れば怪人の腕の様子がおかしい。肩から下が力なく垂れ下がっている。

「動くな」

 警察官が叫んだ。怪人はその場でただ揺れている。揺れに合わせて腕がなびいている。

「いいか、そこから動くなよ」

 初老の警察官が腰から手錠を取り出した。怪人がどこを向いているのか分からない。ただその場所にとどまっている。

「もう一回、手錠を使う。郁夫、手伝ってくれ」初老の警察官が若い方に声をかける。かけられた彼は頷いた。

 二人は距離を詰める。怪人の腕に手が届くかどうかという所で、怪人が動きを止めた。つられるように二人も身を固くした。

 怪人が口を大きく開いた。直後、分厚い金属板がこすれ合うような金切り声が深夜の住宅街を走った。私はあまりの勢いに目を閉じ、慌てて両耳を塞いだ。

「撃てぇ」

 初老の警察官の怒鳴り声が、か細く、だが掻き分けて耳に届く。すかさず空気が破裂した。一発の発砲を皮切りに何度も破裂音が深夜の住宅街に響き渡る。

 重い金切り声が止み、静寂が辺りを漂う。目を開けると警察官たちが肩で息を切っていた。煙が辺りに漂う。火薬の匂いが鼻をついた。

 怪人はその場に倒れていた。体から流れ出た液体が地面に広がっていく。

 安堵感が夜の空気を満たしていく。その隙を怪人は突いた。

 怪人が跳ねる様に体を震わせた。体を震わせながら無理やり四肢を立たせようとしている。まるで不慣れな人が操る人形のようにもがく。肩が外れているのか、関節があらぬ方向に曲がっていた。

 慌てて警察官たちは銃口を向けなおす。だが、怪人の方が動きは早かった。仰向けのまま四肢を捩じった姿勢で、逃げるように闇に消えていった。

 怪人が消えていった夜道を私は眺めている。去っていったのだと思うと、ようやく緊張の糸がほどけていくようだった。

「君、怪我ないか」

 初老の警察官が私に声をかける。答えようとしても私の口はパクパクと開くだけだった。

「大丈夫そうだな」初老の警察官に私は頷いて答えた。

「一体何なんですかね、あいつは」郁夫と呼ばれた若い警察官は腰が抜けていたのか尻餅をついている。「俺、幽霊とか駄目なんすよ」

「幽霊じゃないだろうな。弾は当たっていたんだから」そう言って、初老の警察官は弾倉に目を落とした。

 私は長谷さんを思い出した。怪人に吹き飛ばされたままだった。周囲見回すと長谷さんの背中が目に入った。

「長谷さん」

 私は四つん這いで長谷さんに近寄る。反応が無い。じんわりと嫌な感覚が体の中に広がってくる。

「長谷さん」私が長谷さんの体を掴んで揺さぶると、郁夫と呼ばれた警察官はそれを止めた。

「さっきから聞こえているわよ。うるさいわね」

 心底煩わしいそうなセリフと共に長谷さんがこちらを向いた。頬やおでこに見える擦り傷が赤い。

「ごめんさない、私のせいで。」

 とめどなく涙が溢れてくる。抑えきれない。頬を伝って長谷さんの服を湿らしていく。

「馬鹿ねえ。助かったことを素直に喜びなさいよ」

 長谷さんの指がそっと私の目元をなぞる。ぬぐったそばから涙がこぼれるのを見て長谷さんが笑った。

「怪我ありませんか」

 見かねた郁夫さんが口を開く。二人とも心配そうにこちらを伺っている。

「そうね。あちこち痛いけど、まあ骨が折れている感じもしないし。」

「とりあえず、救急車を呼びましょう。お話は、その後で」

「そうしてもらえると、ありがたいわね」


 夜の住宅街にサイレンの音が響く。赤色灯の光があちこちに反射して、すぐに救急車が姿を表した。

 ストレッチャーに乗せられる長谷さんの傍を私は離れない。手をしっかり握ると、長谷さんは強く握り返してくれた。長谷さんの顔を見ると照れくさそうに視線をそらした。

 私の手に人の暖かさが流れ続けていた。


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