再会
「しっかし久しぶりだよなぁ。いつぶりだ?最後に会ったのは俺が旅に出る時だから…四年前位か?あん時はまだまだ小さいお嬢ちゃんって感じでアリスと二人で可愛いお人形みたいな服着てたのにな。いつの間にやら大きくなって。」
「あの時はまだ13歳だったもの。今はもう17よ。アリスだって15歳になるから、小さいお嬢ちゃん扱いしてたら怒られちゃうわよ。
ライヤこそしばらく見ない内に…何て言うか、ワイルドになった…?昔はもっと色も白かったし、細かったと思うんだけど…。」
リルハの記憶の中のライヤは色白で細身で背が高くて、いかにも育ちの良さそうな、お坊ちゃんらしい雰囲気だった。
ライヤはリルハ達兄妹の幼なじみで、家族ぐるみで仲が良かった。
兄のロランと同い年で親友でもあるので、常にセットで見ていたせいか本物の兄と変わりなく思っている。
ライヤは子供の頃から絵が得意で、末っ子で自由に育てられていたこともあって暇さえあれば絵を描いていた。
風景も人物も、目に映るもの何でも描いてみたくなるのだと、キラキラした瞳で語っていたことを覚えている。
ライヤは16で学校を卒業すると、一年間アルバイトをしてお金を貯めて、世界中を旅して絵を描くのだと言って本当に旅立ってしまった。
いくら末っ子だと言ってもライヤも裕福な家のお坊ちゃんだったし、まさか本当に出て行ってしまうなんて思っていなくて、実感の湧かないまま見送ったことを覚えている。
そして今四年ぶりに会ったライヤは背の高さこそ変わっていないし、明るい金髪と深い紅の瞳の色合いもそのままではあるけれど、纏う雰囲気が随分変わったように思う。
肌もよく日焼けしていて、身体も筋肉がついて引き締まっている。
シンプルなシャツとズボンというラフな格好をしているから余計に身体つきの変化を感じた。
快活な笑顔は確かにリルハのよく知るライヤのものだと感じるけれど、リルハの知らない間にいつの間にやら大人の男の人になってしまったみたいだ。
そんなことをつらつらと考えていると、ライヤが困ったような笑顔を浮かべてリルハの顔のすぐ前で手を振った。
「おーい、リルハ、帰ってこい!俺はここだぞー。
お前、相変わらずすぐ考えごとしてぼんやりするんだなぁ。そんな隙だらけで本当に大丈夫か?
心配だな…。」
「ごめんね、ぼんやりしてたつもりはないんだけど…。
何だかライヤが急に大人になっちゃったみたいな気がして、不思議な気持ちになってたの。
でも、私がライヤにびっくりしたみたいに、ライヤからしたら私がすごーく大人の女の人に見えてびっくりしてるかもしれないもんね?
お互い様だよね。」
ニコニコと笑ってごまかす私に苦笑しながらライヤが答える。
「そうだなー。すごーく大人かどうかは別として、リルハも随分成長したな。背も伸びたし、雰囲気も落ち着いて立派なレディに見えるぞ。」
ライヤが誉めてくれると、お世辞でもなんでもとても嬉しくなる。
やっぱり気心の知れた人が近くに居てくれると思うと、緊張して強ばっていた心が解れていくような感じがする。
嬉しくてついつい立ち話をしてしまったが、そろそろ食事の準備も始めたいしと、リルハはライヤを夕食に誘ってみることにした。