王との謁見(勇者)
勇者アイルは現在、贅の限りを尽くした大広間にいる。
その広間の天井はゆうに三十メートル以上もあり、天井には見た事も無いきらびやかなシャンデリア、この世界の創生の物語を描いた名画などが、競うように所狭しと並んでいる。
平民出身のアイルとしては、ただただ居心地が悪い。
そして、その広間の奥には玉座があり、それに従うように何人かが左右に控えて居る。
その玉座は今、空席となっている。
「王がおいでになる、ギルドよりの使者アイルよ、その場でまて」
どこからか、王の入場を告げる声が聞こえ、アイルはそれに従いその場にかしずく。
その言葉の後から、白髪交じりの豪華な衣装を着た恰幅のいい男が、入って来た。王はかなりの高齢であると言われているが、それを感じさせない堂々とした歩みで玉座に座る。
「ギルドからの使者アイルよ、顔をあげよ。何やらギルドより報告があるとの事なのだが、余にその報告を簡潔に述べよ」
アイルはその言葉を聞き顔をあげ、話始める。自分たちが遭遇したゴブリンとの戦闘について。
アイルの説明が終わると、その場にはアイルをさげすむ言葉嵐となっていた。説明が終わると共に王の取り巻き貴族たちが口を開く。
「まさか、市勢で勇者ともてはやされるお方が、ゴブリンなどに後れを取るとは」
「ギルドも泣きついて来るなど、嘆かわしい。この国のギルドのレベルが知れますなぁ」
「我々なら、ゴブリンなど取るに足らない雑魚だというのに、なんと情けない」
様々な言葉を聞いていたアイルは顔を下に向けている。その表情は見えないが、彼の握りしめた拳からどのような感情であるかはように想像がつく。
そういった事に貴族たちが気づくはずもない。人の感情に、戦の匂いに敏感でない限り。
「やめぬか!少し静かにしろ!」
王に一言に誰もが黙る。その覇気に、アイルですらその思考を一瞬放棄した。
王は皆を黙らせた後、しばらく考え込むように髭を撫でる。その間、誰一人として意を挟む者はいなかった。そして、おもむろに口を開く。
「ザコースよ」
「は!」
王の問いに、貴族の一人が口を開く。
「ふむ、ザコースよ。余の記憶が確かであればゴブリンの出た、ザザナ地方は貴様の領地だな」
「は!その通りであります!」
「であるなら、貴様にゴブリン討伐の任を命じる。自身の領地の問題だ、見事解決し民の不安を取り除け!」
「仰せのままに、我が王よ」
王はそう言うと玉座を立ち、その場を離れる。貴族たちやアイルもその場で王が退室するのを待っているが、王の玉座の近くにいた一人が王の後に続くように退室した。
アイルはその男の動きに少し、違和感を覚えるがすぐに意識からその事は消える。アイルはなれもしない王との謁見という仕事に精神をすり減らし過ぎた為、彼の頭はすぐに城抜ける事しか考えていなかった。
王は、広間から出ると背後をついてきた者に話しかける。
「で、どうであった?姿勢で有名な勇者とは?」
「うーん、一言で言えば金の卵ですな。そこそこの実力もあり、潜在的な力なんかは計り知れないません。まぁ、俺の主観ですが」
「そこそこか、ではお主ら六騎と比べるとどうじゃ?」
「だから、そこそこなのですよ。我々の敵ではありませんね、現状では。今後どのように伸びるのかが、楽しみな部類ではありますがね」
「そうか、そうなると問題は・・・・」
「ええ、そのまぁまぁの実力を持つ勇者が太刀打ちできなかったゴブリンの集団、結構まずいかもしれませんね」
「ふむ、選択を間違えたかのう?まぁ、ゴブリンが退治できて貴族たちの戦力も削げればいいんじゃがな」
「うまくいくといいのですが・・・・」
「駄目なら、駄目で貴様ら六騎に出てもらうぞ。良いな?」
「ええ、我らであれば余裕でしょうな」
「頼んだぞ、ヨーク」
なんて会話が繰り広げられていた。
王直属の部隊六騎、実力のみを重視した部隊でその名の通り六人しかいない。その実力は化物じみており、彼らが動いた際はどのような敵も生き残る術がないと噂されている。生き残った敵がいない事と、全員が貴族位の最高位を与えられており、貴族たちですら手が出せず。謎の集団として、噂だけが飛び交っている。
これで、戦う相手が決まりました。
早く、戦っているところが書きたいです。頑張ります!