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裏路地の異世界商店街  作者: TEL
第一章 絶望と異世界と狼男と少女
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第二話 『何も変わらない─2』

 起き上がった私は、そのまま朝食を摂ることにした。

 シンクの下に備え付けられた収納棚にいれていた、一袋五個入りの小ぶりなバターロールを一つ袋から取りだし、そのままかぶりつく。



 バターロールというのは基本、ハムやチーズ等を挟んで食べるものというのは重々承知してるが、今日はそんな気分が起きなかった。それよりもまず、ハムやチーズは切らしている。


 二個目のバターロールも腹の中にいれ、コップに汲んだ水を流し込めば、少しは胃がくちくなった。この部屋に入居したのが三月の上旬の頃で、今世間はゴールデンウィークにやるべき行楽について紹介していたから、もう既にこんな生活を二ヶ月程行っている事になる。




 この間に体重は十キロ程落ちた。外に出るのは買い出しと銭湯に行く時くらいで、バイトはしていない。口座の残金は増えることなく着々と減っていき、いつかは尽きる事になる。


 金が尽きればどうなるのか? 食べるものも無く、電気代や水道代も払えなくなるので、ライフラインが止められる。そのまま部屋の真ん中で力尽き、大家の通報で死体となって発見されるのだろうか? 


 有り得ないと笑い飛ばせず、むしろ今は具体的な最期の瞬間を想像してしまい、私はせっかく食べたバターロールを口から出しそうになった。



 環境は人のメンタルを大きく左右させる。昔はこんなネガティブ思考では無かったはずなのに、今はこんな事ばかり頭をよぎるようになってしまった。




 矛盾していると、自分でも思う。

 私はこの部屋を自分の棺桶と定めた。そしてこの部屋で死ぬことも覚悟している。いや、むしろそうなることを望んでいる言ってもいい。


 なのに体は、心は、死ぬことを拒絶している。

 分からない。何故死にたくないと思うのか。最早私に未練など無いはずなのに、何故?




 考えた末に──私は考えることを辞めた。考えても無駄だと判断したからだ。

 その時が来れば、その瞬間を素直に受け入れる。それでいいじゃないか。そうするしか無いんだ。



 開き直ったら幾分か気楽にはなった。色々と諦めたとも取れるが……結局大事なのは未来の事では無い。

 私はただ、今この瞬間だけはこうしておこうと思う。私の生きる先にあるのは破滅だけだが、それもまだそんなに近くはない……はずだ。

 



 それとも、こんなことで悩むのも無駄なのだろうか? 

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