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Devil's hero  作者: ソロ歌
一章
3/3

3話 結果はいつだって

「おぉぉぉとぉぉぉうぅぅぅとぉぉぉ!」

 家に帰ったイールは、弟であるオルガに泣きつく。

 しかしオルガはめんどくさそうに、兄イールを退けて自分の部屋へ入っていく。

「……はぁ〜」

 オルガに見捨てられたイールは、悲しくなりトボトボとリビングに歩みを進めた。

 完全に終わった。

 例えば一本1ポイントだとしても2ポイント。一人分で1ポイントだとしたら、1ポイントだ。

「終わった…」

 夢の高校終了のお知らせに凹む。

 あと三日間どんな顔して待ってればいいんだろうか。

 筆記だけが唯一の取り柄だった。しかし、あどこまで実技がボロボロでは、可能も不可能に化けてしまう。

 発表までの三日間を楽しみに過ごせなくなり、イールはどんどん気持ちが下がっていく。飛行機だったらもう墜落している。


 その頃オルガの部屋では上手くいったはずの、オルガが悔しそうに拳を握っていた。

 ー1人だけ。叶わない奴がいた…ー

 オルガが悔しく思っていたのは、試験のラウト数分の事だった。



 試験当日。

 雷魔法を使い、バタバタと相手を倒し紐を引っ張り取っていく。

 戦っても無駄と諦めたのか逃げようとする者もいた。

 だが、簡単に逃がしてしまうようなオルガではなく、虚しくも雷魔法によりやられてしまう。

「やめろぉっ!」

 オルガは徐々に化け物扱いされていた。

 嫌がり逃げようとする受験者に向かって雷を飛ばそうと思った時…

「……?」

 オルガは驚き掌を確認した。

 魔法陣が消えている。

 そして魔法も使えない。

「なんだよこれ」

 不思議に思い「もう一つの魔法」の動作確認もする。


 案の定発動はしなかった。

 そんな時…

「すまないね。君ばかり目立たれると困るんだよ」

 落ち着いた口調でオルガに声をかけながら歩いてくる男がいた。

 その男は目が青色に光っていた。

 いや、違う。

 よく見ると黒目であるはずの場所に小さな青色の魔法陣が浮き出ているのだ。

「僕の視界にいる限りは、魔法は使えないよ」

 ニヤニヤしながら近づいてくる男にオルガは少し恐怖を感じた。

 彼奴が俺の能力を消した?なら、もう無理ゲーじゃねぇか。オルガは心の中で焦り、攻略法を探す。まるでゲームでもやっているかのように。

「………!」

 何か思いついたような顔をすると、オルガはニヤニヤし始めた。

 男はその姿を見て少し警戒する。

 ー要は視界から外れれば良いんだろ!ー

 オルガは男に向かって全力疾走を始める。

「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 そして、男の前まで来たかと思うと、上に高く飛び男の顔を掴む。

「ギィッ」

 男も急に掴まれ、焦ってオルガに手を伸ばすが、オルガはそのまま体重をかけて男を倒しにかかる。

 伸ばした手を一度引っ込め、男は地面に手を伸ばす。反射的に危ないと感じたのだろう。

『ドスン!!』

 男が地面に叩きつけられた音が激しく会場に響く。

 あとは視界から外れるだけ。

 オルガはあと一歩と思い、その場を離れようと立ち上がった。

「………!?」

 そこでオルガは気づいてしまった。

 発動した覚えがないのに、雷魔法の黄色い魔法陣が掌に浮き上がっている。

「残念でした」

 足元から男の声が聞こえる。

『バチバチバチィ!!!』

 オルガの腕から勝手に大量の電気が溢れ出た。

 そして、オルガは自分の電気に感電してしまう。

「うぁぁぁぁ!!」

 自分電気に強いわけではないオルガは、雷のようにすぐに相手に飛ばして、自分には何の被害もないようにしていた。

 そしてまず、こんな電気を一気に放出させる事ができるとは、思っても見なかった。

「終了!」

 終了の合図とともに、男の青く光った目が黒に戻っていく。

 それと同時にオルガの放電も止まった。

 オルガはドタッとその場に膝をつくと、勝てない人がいた。という絶望で涙した。

 ゆっくりと、大粒の涙が頬を伝う。

 最強だと思い込んでいたオルガは、自分の弱さを知り、そして初めての「負け」を体験した。



 鳥の囀りと、一階から聞こえるイールの声で目を覚ます。

 気づくと、朝になっていた。

「オルガァァァァァァァ!!!!」

 相変わらずうるさい。

 机に突っ伏して寝たせいか頭が痛い。

『ガチャッ』

「オルガ!!!!!」

何かの紙を握りしめて、イールがオルガに部屋の扉を開ける。

「なんだよ」

 寝起きで、上手く呂律が回らないが、めんどくさそうにオルガは答える。

「これ!」

「あ?」

 イールが嬉しそうに紙を差し出す。

 強く握りしめていたのか、紙の真ん中らへんは痛々しくクシャッとしていた。

「合格発表通知!!」

「あぁ」

 なんだ合格発表通知か…

「って、えっ!?」

 試験当日から三日後。つまり明後日来るはずの合格発表通知が今来ている。

 不安と、驚き、喜んで何が何だか分からなくなる。

「開こうぜ!」

 イールは、がさつにオルガに合格発表通知を渡すと、早速自分の封筒を開ける。

 オルガもワンテンポ遅れて、開く。

 中から紙を取り出し開いて中を見る。

 心臓の鼓動が鼓膜を破りそうな勢いだ。

 結果は……


『合格』


 心のそこから喜びと、ワクワクが込み上げてくる。

 一見感情のないクールなオルガだが、喜びだってしっかりする。

「合格!!!!!」

 イールもグッと拳を握りしめ天に突き出す。



「ふふふっ」

 イールとオルガが喜ぶ中、窓の外では2人を見て微笑ましく思う何者かがいた。

 電柱の上に。

「楽しくなりそうだ」

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