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Devil's hero  作者: ソロ歌
一章
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1話 世界が変わったあの日

「俺のアイス!」

 とある一軒家の、とある兄弟の兄が弟に咆哮の声を上げる。

「わりぃ。知らなかった」

 リビングの椅子に座りアイスを頬張っている、黒髪サラサラヘア。そして黒のネックウォーマーを付けた弟「曽谷(そや) オルガ」に、ボサボサ金髪、青目の兄「曽谷(そや) イール」は指をさし怒りを露わにする。

 イールが後で食べようと思い残しておいたアイスを、何も知らずにオルガは食べてしまっていた。

 それを見つけたイールは怒り、今の状況になっている。

 近くにいる、父母は2人を止めようともせず見守っている。

「オルガなぁ!!てめぇってやつは!!」

「うるさいイール」

「てんめぇ!!!」

 落ち着いて食べ続けるオルガに、イールの怒りは増していく。

『シュウン!』

 イールの腕に赤い魔法陣が浮き上がる。

「筋肉増強魔法!くらえぇ!」

 イールの振り上げた拳が、オルガめがけ物凄いスピードで振り下ろされる。

 しかし、オルガは焦る事なく拳が当たるよりも先に右手をイールの顔の前で開く。

「雷魔法。インパクト」

 オルガの掌に黄色の魔法陣が出来たかと思うと、その魔法陣から雷のようなものがイールの眉間に飛んだ。

「うぎぃっ!」

 イールの振った拳はイールの顔の手前で止まり、そしてイールは『バタン』と音を立てて床に倒れる。

「今日もオルガちゃんの勝ち?」

 眺めていた金髪ロングの青目母「曽谷(そや) ラングルー」が声を上げる。

「双子なのに何故こうも、仲が悪いのか」

 イールを心配しながらも、黒髪サラサラヘアの父「曽谷(そや) 大河(たいが)」が溜息をつく。

 曽谷家は、日本人の父とマカナリヤ共和国人の母と、その間に生まれたハーフの似ていない双子で構成されている。

「イールとは、魔力数値が違うから勝負にならない」

 魔力数値とは、この世の魔力を数値化したものである。


魔力数値1〜30 少ない

魔力数値31〜60普通

魔力数値61〜90多い

魔力数値91〜 とても多い

魔力数値100越え その人個体の力は未知数


 魔力数値はこのように位置付けされている。

 そしてイールの魔力数値は「48」とても平凡である。

 しかし、オルガの魔力数値は「108」とても多く、その力は未知数と言われている。

 二人の魔力数値には天と地の差があった。

 その理由は父母にあった。

 母ラングルーの魔力数値は「46」

 そして、父大河の魔力数値は「109」

 この違いが、双子の魔力数値の差を生んでいるのだろう。

 この時代は魔法時代。

 魔力が全てをランク付けし、魔力数値の高い者は幸せな将来が約束される。

 高校、大学ともに入試には魔力を必要とし、上の学校にはより高い魔力が必要となる。

 そして、オルガとイールは中学三年生。

 そして、今の時期は秋。

 そう。受験を間近にした受験生だった。

 2人が狙う高校はただ一つ「北中央(きたちゅうおう)修羅(しゅら)魔法(まほう)高等学校(こうとうがっこう)

 有名な魔法学校である。

 もちろん入るのは一筋縄ではいかない。

 そしてイールは先生にも、父母にも諦めろと一切りされていた。


 そもそも、こんな魔法中心の世界になってしまったのは、今から130年前。

 2020年のあの事件からだ。


 二度の大事件が起きた。

 というよりは、一度目の事件の後にさらに大きな大事件が起きた。

 人々はそれを「サブショック」と「メインショック」と名付けた。


 サブショック。

 それは東京オリンピックが開催される10日前に起きた。

 その日東京の新宿全土に黒い靄がかかった。

 人々は、その靄の正体が分かることなく、その日を終えた。

 政府は様々な検討を立て、靄の撤去に取り掛かった。

 そんな時だった。

 靄の中から、一体の魔物が現れた。

 その魔物は全長3mほどで、政府の調査員を喰い殺した。鋭い牙。黒い体。ゴツゴツとした肌。

 それは化け物としか言いようがなかった。

 そして人々は化け物を「魔獣」と名付けた。

 魔獣は、新宿の街を暴れ回り、300人ほどの命を奪った。

 そして、魔獣は政府により殺された。

 魔獣は政府が全力を尽くし、解剖し調べ上げた。

 しかし、魔獣が何者だったのか。どこから来たのか。誰一人として分からなかった。

 これがサブショックだ。


 メインショック。

 東京オリンピック当日。

 新国立競技場で再び事件は起きた。

 開会式を間近にし、観客たちは歓喜の心をグッとこらえ、時を待つ。

 そんな時。それは上空に現れた。

 黒い靄だ。靄は、新国立競技場を覆うように空に現れた。

 観客たちがどよめく。

 そして。

 靄の中から、何匹もの魔獣が現れた。

 その魔獣供は新国立競技場の中にいる観客たちを喰い殺していった。

 そして政府はついに、生きている人を見殺しにし、新国立競技場を閉鎖した。

 3日後。

 新国立競技場への突入が決まり、突入準備を新国立競技場の目の前でしている中、奴らは現れた。

「我らは魔戦士。競技場の中にいる魔物を倒したくば、我々と協力せよ」

 それらは、滅びかけた星からきた魔戦士と名乗る者だった。

 奴らの提案は、魔獣を倒す代わりに自分の星の住民に、衣食住を与えてほしいという事だった。

 もちろん政府は呑んだ。

 奴らは、約束通り魔獣供を倒した。魔法で。

 そして、魔法を使う姿を見た人々の中で、特定の人が魔力を手に入れた。

 魔法を目にして、自分の秘めていた魔力が覚醒したのだ。

 そして世界に魔法が蔓延っていく。

 これがメインショック。

 その後、魔獣は他の星の住人だという事が判明した。


「以上。これがメインショックとサブショックだ。今となれば魔力を持たない者はこの世にいないと言われているが……」

 社会科の授業中イールは昨日のアイスを思い出す。

 食べたかったなぁ〜。

 しかし、イールは頭だけはとても良く、オルガと比べても断然上だ。

 話は小耳に挟むぐらいで丁度いい。

「はい!イール。今俺なんつった?」

 小耳に挟むぐらいじゃ、問題があるか。

 イールは焦り、教科書をパッと見る。

「オルガは…キモい?」

「違う!!!!」

「……!!」

 先生の怒りの一声にイールはキュッと小さくなる。

「後で話そうか。イールくん」

 先生の言葉にイールは、肩を震わす。

 教室はクラスメートの苦笑いで埋め尽くされた。

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