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長崎物語  作者: 恵比寿 鯨太
このままでいいと思ってたのに
3/6

絶望の淵

S先輩の告白するぞ宣言から一週間が経とうとしていた。

しかし、S先輩にもMさんにもなんの行動の変化もない。


お調子者のS先輩のことだから、好機を見計らっているに違いない。


二人の動向に気を揉んでいるそんな時、部活の顧問から”私”が職員室に呼び出された。


「国体長崎代表決まったから。これからも練習頑張る様に!」


え…たしかに、この前の競技のとき、S先輩のことムカッ腹たって思いっきり速く山を駆け上がって、3位ぐらいになったけど…そんなんで国体行けるの?


「長崎代表になったと言っても、山岳競技少年の部はまだマイナーだから、全国国体に行くには、九州6県で鹿児島の霧島山系で対抗戦をして優勝か準優勝しないとならない。全国で本当の国体に出れるのは九州から2チーム、全国で16チームだけだ。せいぜい頑張ってくれ。と言いたいところだが、先生は勝ち上がるごとにお前を引率していかなきゃならないから、大概のところで勘弁してくれよなー。」


先生の最後の言葉は、半分本気だろうなと思った。私もS先輩の告白のことでもやもやしているし、勉強もしなきゃいけない。正直、国体やってる場合ではない。


だが、のちに私は九州大会で準優勝し、全国国体に出場した。その開催地は京都。そして、この京都国体出場は、それを礎として京都の大学へ進学し、そのまま関西に居残って現職場へ就職へとつながる重要なキーポイントであった。


が、その時はしる由もない。


そんなことより、Mさんだ。

先輩が動く前にいっそのこと、自分で動いてみようか。そう思った。


席に戻り、隣のMさんに、久しぶりに話しかけてみた。

「さっき、先生に呼び出された。国体出ることなった。あーまた練習しないといけないんだよねー。」ちょっと自慢げに話した。リスペクトをしてもらえると思った。


「へー、そうなんだ。忙しくなるね。でも、私競技とかしたくてウチの部活入ったわけじゃないのでよくわかんない。私、山頂で楽しく自然を楽しみたいから…」


崖から真っ逆さまに突き落とされた。

リスペクトどころか、全く興味なし!と斬られた…


絶望の中、トボトボと部室へ向かう。

そこには満面の笑みのS先輩がふんぞり返っていた。


「おー、国体出場おめでとう!うちの学校からは三年ぶりらしいじゃん。頑張って全国行けよ!ほれ、これお前が欲しがってた酒井法子のサイン!お祝いにあげるわ!」


い、いつもよりテンションが高い。なぜあれほど自慢げに語って、宝物にしていた酒井法子のサインを私にくれるというのか?これはなにかあるに違いない。私は怪訝な目で先輩を見つめた。


「あー、実はもうMに告白しちゃって、付き合うことになって、今度デートすることになったんだよ。だからといっちゃなんだけど、酒井法子、もういいや。」


先ほどMさんから崖から突き落とされた私は、さらにS先輩から深海の底までひきずり墜とされた。その深海は、何も聞こえず、ただ暗闇と静けさがあるのみだった。


その後、先輩が私に何を話したか、どんな部活をその日やったのかも覚えていない。気づいた時には、夕飯も食べずに家の自分の部屋で布団にくるまって絶望している自分がいた。

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