2.違和感
「燦香、杉くんの返事どうだった?」
「えへへ、“僕も芝岡さんのこと好き、自分の感情に素直で羨ましい”って言われちゃった♪」
「え~~~??!!!」
「あのクールでかっこいい杉くんに?!」
「すげぇなオイ!!」
「さすが燦香ちゃんですぅ」
シバオカサンカ。
そうそう、彼女には明るく優しい本人とは真逆の、派手で柄の良くない取り巻きの女の子たちがいたんだっけ。
ホワイトデーにお返しを渡したときに僕に言われたことを皆に話してるみたいだ。
ちょっとだけ恥ずかしいな。
「じゃあ、燦香って杉くんと付き合ってるの?」
ん?
「そう…なの…かな?えへへ…」
あれ?僕はそんなつもりじゃ…
「スゲー!!」
「美男美女カップルですぅ」
………
…“好き”って恋愛感情じゃなきゃ使っちゃダメなの?
違うでしょ?
どうして誤解が生まれる?
それとも僕がおかしいの…?
*
葉桜がチラホラ。
春が来て、学年が変わったらしい。
放課後の掃除当番で、僕らの班は校庭の担当だった。
「杉~!俺あっちの方掃くからこの辺よろしくな~」
「ん、わかった」
そして、ふいに彼女と目が合った。
「っ…」
砂で靴下を汚しながら、校庭で何かを探すマナゴトウカ。
僕は気にせず声を掛けた。
「…どうしたの?」
「な、何でもないの」
「……あ 靴?」
「いや…あの…気にしないで。さよならっ」
そのとき、誰かの声がした。
《私ったら何やってるの。見ず知らずの男の子に、こんなカッコ悪いとこ見られて…》
マナゴさんの声。
彼女の心の声なのかな?
「…いた」
僕はマナゴさんの靴を、彼女の元に持って行った。
「あ…どうして…どこに…?」
「校庭のゴミ捨て場。散りとったゴミ捨てに行ったら偶然発見」
「そう……」
「靴下汚して帰ったら、お母さんに怒られらる…僕も雨の日にビショビショにして怒られたこと…あるんで…」
「ふふ…ありがとう」
「気を付けて帰ってね。最近物騒だから」
「ありがと…さよなら」
「ばいばい」
これが彼女との出会いだった。
《恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。見ず知らずの男の子にカッコ悪い私を見られた。優しくしてくれたけど、きっと内心惨めな私を馬鹿にしてるのよ》
…良い印象は持ってもらえなかったみたい。