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夏の日  作者: しお
2/13

1.計画

放課後の教室で、見覚えのあるセーラー服に身を包んだ2人の女の子が話している。

僕の通っている高校と同じみたいだ。


「ねぇ 桃花。もうすぐバレンタインじゃん?」

「あぁ そうだね。そんな時期…」

「私さ、柿崎くんにチョコあげたくてさ…」

「柿崎くん?明るい人だよね」

「そうなの!だから恥ずかしくて…だからさ、桃花にお願いがありまして…」

「何?香菜の頼みなら何でもきくよ?」

「ほんと?!あの…できるだけ自然に渡したいからさ、女子も含めてクラス全員に渡したいの」

「あぁ!いいねぇ!自然かも」

「そ?良かった…それで更に自然にするために桃花も全員分用意してくれないかな~なんて…」

「うん!いいよ」

「マジで?!桃花ありがとう!」

「柿崎くんに上手く渡せるといいね」

「うん!ありがとう!!」


短い前髪から剃った細い眉が時折見える黒髪で気の強そうな方がカナ。

薄い桃色のボブヘアに赤いリボンをつけた大人しそうな方がトウカ。

名前だけは何とか覚えた。

重要人物であるか否かは定かではないが。


*


次の記憶には、僕がいた。

いろんな女の子からチョコレートを貰っていた。

僕がチョコレート好きって知ってて、気を使ってプレゼントしてくれたんだろうな。

みんな優しいなぁ。


放課後は、背の低い小柄な女の子に呼び出された。

「あたし杉くんのこと好き。チョコ作ったの。食べてほしいな」

「わ、芝岡さんありがとう」


僕はいつもの、“感情が込もってない”とかダメ出しを受ける声で礼を言った。

照れながら彼女は足早に去って行った。


あぁ そうだそうだ。

僕の名前はスギだ 思い出した。

そしてこの子はシバオカさんか。

ありがとうシバオカさん。

君のお陰で僕の名前を思い出した。

笑顔が素敵な子だな。こっちまで元気になるよ。ん? あぁ もしかして今日がバレンタイン?

さっきの記憶から時間の経過があったのか。

だから皆チョコレートくれたんだね。

皆優しくて好き。



*


「ほんとありえないんだけど!!」

「あたしの彼氏取るとかどういうつもり?」

「わ…私…そんなつもりじゃ…」


放課後の教室で、トウカをいろんな女の子が責めている。

カナもそこにいる。

ただ、ずっと黙っている。


どうやら カナとトウカがクラス全員にチョコレートをあげたことにより、カナの思い人・柿崎を含め、いろんな男の子がトウカに惚れられていると勘違いして浮かれていたらしい。

気の荒そうなカナに比べ、トウカは整った顔立ちをしているので、単細胞な男子高校生が浮かれてしまうのも無理はない。


「私、寺嶋くんにチョコあげようと思ってたのに…真子さんにチョコ貰った寺嶋くんの表情見たら…もう…自信なく…して…」

「ごめんなさい…こんなことになるなんて思ってなく」

「あぁもう喋んな!!」

「え…香菜…?」

黙っていた香菜の罵声に場が静まり返った。


「お前さ、少しは気ィきかせろよ!彼女いるヤツとか柿崎くんには素っ気なく渡すとかさ!!なのにお前、皆にニコニコ渡しやがって…お前みたいなヤツに渡されたらそりゃ……ほんっと空気読めないよなお前!!無神経野郎!二度と話しかけてくんな!!」


怯むトウカ。

周りの女の子たちは眉間をひそめ、無言で立ち去った。


「…ごめんなさい。私、これからはもっと暗くなるから…」

「? 意味分かんねぇ」

捨て台詞を吐いて、カナも教室を出ていった。


一人教室に残ったトウカの、瑠璃色の瞳が涙でキラキラしていた。

その様子を見つめながら僕は、「あぁ彼女はマナゴトウカって名前なのか」なんてことを考えていた。



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