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夏の日  作者: しお
12/13

11.思い


*


見たことある景色。


僕は現実に戻ってきたようだ。


ここはどの場面だ?

どこからやり直しなんだ?


見渡すと、桃花が離れていく姿が見える。


あぁ わかった。

ほんとに最後のとき。


あの夏の日の帰り道だ。



桃花の名前を呼ぶ。


振り向く桃花。


あぁ…やっと会えた……。

瑠璃色の瞳が、記憶の中の僕じゃなく、今ここにいる僕を見ている。

桃花…君が愛しい。


「伝えたいことがあるんだ。ちょっと近くの公園に行かない?」


*


横長のイスに並んで座る。


不安そうな表情の桃花。


ごめんね。


今度こそ君を守るから。


「上手く伝えられるかわからないけど、


僕の思いを聞いてほしい」



「僕は…こんな性格で。

…不器用っていうか臆病者というか。

気持ちを表現するのが苦手で…。


だから…周囲の人を、桃花を

不安にさせてしまうかもしれない。


でも…どうか僕を信じて。


…桃花を愛してる」



「なっ…ど どうしたの急に…恥ずかしい…よ」


真っ赤になる桃花。

照れる彼女を見て、僕も顔が熱くなる。


「…ごめん。でも、どうしても伝えたくて」


「ううん、ありがとう悠也。私も大好き」


ニコッと笑う桃花。


純粋な彼女の笑顔。

心があたたかくなる…。



「あれ?悠也 今ちょっと笑った?」


「え……そう…?」


「うん!一瞬だけど微笑んだ気がする」


「…無意識」


「私嬉しい!

悠也の顔、すごく優しい表情だったよ。

へへ~…今日は素敵な日!」



…記憶を操作されていたとはいえ、

こんなに温かい彼女の存在を忘れていたなんて。



彼女を守るためなら、


どんな困難にも立ち向かえそうな


そんな気持ち。



鈍い音がした。



桃花の悲鳴。



え……何…


あれ…どうして僕が刺されるの?


桃花に会えた嬉しさと、温かい雰囲気で


背後から来たそいつに、全く気が付かなかった。



お前は…あの道にいるはずじゃ……


……あ…桃花が僕と公園に行ったから…


きっと…人気のないあの道では…


標的を見つけられなくて…偶然…公園へ…



“早く逃げて”


それしか、言葉が出なかった。


涙ぐむ桃花。


ごめん。


僕はまた、君を傷付けてしまった。


今度こそ守るって決めたのに。


何度も何度も振り返りながら、

走って逃げる桃花。


どんどん彼女の姿が見えなくなる。




僕は


感情と、大事な人を取り戻した。





代わりに


命を失った。








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