11.思い
*
見たことある景色。
僕は現実に戻ってきたようだ。
ここはどの場面だ?
どこからやり直しなんだ?
見渡すと、桃花が離れていく姿が見える。
あぁ わかった。
ほんとに最後のとき。
あの夏の日の帰り道だ。
桃花の名前を呼ぶ。
振り向く桃花。
あぁ…やっと会えた……。
瑠璃色の瞳が、記憶の中の僕じゃなく、今ここにいる僕を見ている。
桃花…君が愛しい。
「伝えたいことがあるんだ。ちょっと近くの公園に行かない?」
*
横長のイスに並んで座る。
不安そうな表情の桃花。
ごめんね。
今度こそ君を守るから。
「上手く伝えられるかわからないけど、
僕の思いを聞いてほしい」
「僕は…こんな性格で。
…不器用っていうか臆病者というか。
気持ちを表現するのが苦手で…。
だから…周囲の人を、桃花を
不安にさせてしまうかもしれない。
でも…どうか僕を信じて。
…桃花を愛してる」
「なっ…ど どうしたの急に…恥ずかしい…よ」
真っ赤になる桃花。
照れる彼女を見て、僕も顔が熱くなる。
「…ごめん。でも、どうしても伝えたくて」
「ううん、ありがとう悠也。私も大好き」
ニコッと笑う桃花。
純粋な彼女の笑顔。
心があたたかくなる…。
「あれ?悠也 今ちょっと笑った?」
「え……そう…?」
「うん!一瞬だけど微笑んだ気がする」
「…無意識」
「私嬉しい!
悠也の顔、すごく優しい表情だったよ。
へへ~…今日は素敵な日!」
…記憶を操作されていたとはいえ、
こんなに温かい彼女の存在を忘れていたなんて。
彼女を守るためなら、
どんな困難にも立ち向かえそうな
そんな気持ち。
鈍い音がした。
桃花の悲鳴。
え……何…
あれ…どうして僕が刺されるの?
桃花に会えた嬉しさと、温かい雰囲気で
背後から来たそいつに、全く気が付かなかった。
お前は…あの道にいるはずじゃ……
……あ…桃花が僕と公園に行ったから…
きっと…人気のないあの道では…
標的を見つけられなくて…偶然…公園へ…
“早く逃げて”
それしか、言葉が出なかった。
涙ぐむ桃花。
ごめん。
僕はまた、君を傷付けてしまった。
今度こそ守るって決めたのに。
何度も何度も振り返りながら、
走って逃げる桃花。
どんどん彼女の姿が見えなくなる。
僕は
感情と、大事な人を取り戻した。
代わりに
命を失った。
終




