9.確信
*
《言われてみればその通りだった。
何日経っても、××は笑ってくれない。
いつも淡々としてる。
やっぱり楽しくないのかな。
私は…すごく楽しいよ。
だけど…××は……
私といても……》
2人で帰る、涼しげな夕方の帰り道。
あ、制服移行期間なのか。
トウカのセーラー服が半袖になったけど、僕はまだ学ランだ。
「でね、その後…」
「ねぇ××。どうして笑ってくれないの?やっぱり私といてもつまらない?」
突然僕の話を遮るトウカ。
「え……何?どうしたの」
何も知らない僕。
「香菜たちから聞いた。××が笑ってくれないのは私といてもつまらないからだって」
「そんなことないよ。僕普段から全く笑わないから」
「どうして?」
「…笑わないっていうか、笑えない…みたいな」
「? 楽しくないから?」
「いや…楽しいけど…」
「?…変なこと言ってごめんね。今日はもう駅まで送ってくれなくていいよ。ちょっと1人になりたいの。ごめんなさい…またね、ばいばい」
「?…そ…ばいばい」
《私じゃダメなのかな。
私じゃ、××を笑顔にすることができないのかな。
××に笑ってもらいたい。
私が××を笑顔にしたい。
だって、××のお陰で私は笑顔を取り戻せたんだもん。
でも……私じゃ…
そんなの…嫌…!》
「……え……?…」
涼しげなセーラー服が血で染まる。
崩れ落ちるトウカ。
《なに……これ…
血…?なんで………
…誰…?笑ってる……
あ……通り魔…?
そうか……私…
あぁ……初めて会ったあの日…「最近物騒だから気を付けて」って…××言ってくれたのに…
近所でよく目撃されてたの…知ってたけど…自分には関係ない…なんて思ってたよ…
はは…大事な人を幸せにできず…挙句、こんな死に方するなんて…こんな惨めな私なら…××は笑ってくれるのかな…
あーあ……見たかったな…悠也の笑顔》
*
思い出した……全て…
…僕は…杉悠也は…
あの後しばらくしてから…真子桃花が牧村香菜たちに騙されていたことに気付いて…彼女を追いかけた…。
でも…
彼女がいつも通る人気のないあの道で…
血まみれで…倒れてた。
なぜか涙は出なくて…
状況が理解できなくて…
血が付くのを気にとめずに、ただただ、か細い彼女を抱きしめていた。
そういうことだったのか。
彼女の行動、想い。
僕は全然わかっていなかった。
大切にしてるつもりでいたんだ。
守りたいとか言って…
結局彼女を傷付けていたのは僕だ。
ごめん。




