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俺が正義でお前が悪で  作者: あらた
4/22

第4頁 郷に入りては…

魔王登場編ラストです。


奏人のジョブは『つっこみ』と判明。腕を磨きます。


宜しくお願いします!!



「こんないい男が下宿人なら大歓迎よ!!」

「そうだな、マリちゃんだっけ?可愛すぎる!!」

予想通り…

やはり常識からかけ離れている両親に対して、奏人は玄関先で苦笑いを浮かべる。

「奏人の父上、母上。我々で役に立てることがあれば何なりとお申し付けください」

「掃除、洗濯、家事等々〜お任せください!」

調子のいい二人の、調子のいい笑顔に奏人の両親は安心しきっている。

「部屋はあり余ってるんだ!ここを自宅と思い好きに使ってくれ!!」

父、春人が笑いながら両手を広げた。


石橋家は父親は設計士として自宅で事務所を構え、雑誌編集長である、母、(かなで)の実家が所有していた土地に豪邸を建てて、いわゆる裕福な暮らしをしているわけで、勢いで建てた石橋邸には家政婦が一人いるだけなので、もて余している部屋はたくさんあるのだ。

そこで奏人の説明による、『両親と生き別れて行くところもない二人の兄妹』は身を置くこととなったのだ。

「結衣ちゃんと若い男が一緒のところに住むなんて考えられない」

奏人が二人を引き取った密かな理由である。

害はない。

魔王とマリーを見てそう感じてはいたが…

「では失礼します!」

「だ〜ちょっと!クツは脱いで!…全く海外生活長いからって、あははは」

「こらぁ、それはテレビ!中に人はいないから!!たたくな〜」

「それは、犬!!戦闘体制に入るなー」

部屋に入るまでに奏人はツッコミ過ぎて息が切れた。

しばらくは自分が二人を世話しなきゃいけないのかと思うと先行きは不安だ。

「ほう、これがメガネの部屋か…さっぱりしているな。嫌いじゃない。賢人の部屋のようだな」

そんなこともお構いなしに魔王は奏人の部屋を物色し始める。

「はあ、魔王さんは…僕の向かいの部屋、マリーさんは魔王さんの隣の部屋を使ってください。この世界で必要な物資は何とかしますから、おとなしくしててください!」

二人を各部屋に押し込めると奏人は大きくため息をついた。

下の階でまた、両親と飼い犬のジョンが騒がしくしている。

「奏人〜お客さんよ!!」

母親が声を張り上げて奏人を呼んだ。

「こんな時間に!?まさか、勇者が?ここまで追ってくるのか?」

慌てて下へ降りると、そこには着替えて大荷物を抱えた結衣の姿があった。

「結衣ちゃん…」

母と結衣はお互い、久しぶりの再会を喜び笑顔で立ち話をしていた。

結衣が奏人に気付く。

「あっかなとくん。まおうさ…」

「だぁっ〜ちょっと!!」

魔王の名前はマズイ!と、すぐさま結衣の手をつかんで奏人は自分の部屋に結衣を引き上げていく。

母はその場に置き去りにされた。

「あの人たちのことは、魔王とか言わない方がいい…」

「あ、ごめんなさい」

二人きりの部屋にしばらく無言の時間が流れた。

「あの、手を…」

結衣が顔を赤くして呟く。

「あああ〜ごめん!」

掴んでいた手を放した。

結衣の手の温かさが奏人の手に残る。

だが気まずい沈黙がまた訪れた。

突然、思い出したかのように結衣がカバンに目をやり、慌ててそれを奏人の前に出した。

「あの…これ、マリーさんに、私のお古で悪いんだけど洋服持ってきたよ。あと、お父さんの使わないシャツとか魔王さんに」

「あ、そうだね、ありがとう!あんな服じゃ怪しまれるよな…十分怪しいけど…」

結衣の持ってきた荷物を受け取り、それを渡そうと、部屋のドアノブに手をかけた時、結衣が奏人に呟く。

「奏人くんに会えてよかった。また、お父さんの転勤で引っ越して戻ってきたんだよ。お隣に」

「!」

魔王たちの強烈な出会いですっかり忘れていたが、そんなことよりも大切な『再会』に奏人は嬉しさと驚きと情けなさの混じった変な顔になった。

「借家のままだったから、良かった」

「ごめん、大事なこと、聞きそびれて…」

「いいの。また、これからお隣さんだね」

そういって結衣が微笑んだ。

奏人はもう嬉しさを抑えるだけで、何をいっていいのかわからない。

とにかく二人きりのこの状況に耐えられなくなり、ドアを開いた。

「あ」

「あ」

「あ」

そこには魔王とマリーがドアに耳を近づけ中の様子をうかがう姿があった。

「なにしてんだぁっ!!」

「あんたこそコソコソとイヤらしい!!」

「ユイが来ていたのか。聞く気はなかったんだが、メガネの友達ならば挨拶せねばと…何も聞いてはいない」

「思いっきり聞き耳たててるじゃないかー!!なんだそのポーズ!」

「ほぉ…このポーズは聞き耳と言うのかテレビ、犬、聞き耳…覚えたぞ」

「ごまかすなぁ〜!」

「奏人、再会できて良かったな。かわいいお隣さんに」

魔王が優しくて、少し意地悪な笑顔を奏人に向ける。

奏人は真っ赤になりながら、拳を握った。

「しっかり聞いてんじゃないかよ…」

今度は照れ隠しで突っ込みを入れる。

なんだか、結衣の方を見ることが出来ない。

どんな顔すればいいんだろう。

「俺は、奏人や結衣と出会えて本当に良かった。素直にそう思う。思ったことは素直に言えばいい」

「…魔王…」

「結衣はお前にまた会えて良かったと言っているぞ」

なぜだか魔王の笑みが、奏人を落ち着かせた。

「偉そうに…そんなことわかってるよ…」

「そうか」

「メガネってシャイなのね〜」

マリーが茶化す。

「うるさーい!!も〜!!これ!結衣ちゃんからだ!着替えてこい!!」

カバンから適当に服をつかむと二人に投げつける。

それを受け取った二人は首をかしげながらお互いの部屋に帰っていった。

「結衣…ちゃん…」

「なあに?」

「えっと、また、隣同士になれてオレも良かった…なにか困ったことがあったら言って」

「うん。お互いにね」

二人は微笑み合うと、別々の時間を過ごしていた期間の話をし始める。

変わらない同級生のこと、結衣の変わった趣味のこと…いつまでも話は続くと思われた。


コンコン

「おい、これでいいのか?この世界の服はなかなか身軽でいいな」

ドアの向こうで、魔王がぶつぶつ呟いている。

「ちゃんと着れたのかしら…反対の服装してないよね?」

「え…」

先ほどは適当に渡してしまい確認していなかったが、反対の服装…

つまり、魔王が女物を着てしまう可能性は絶大だった。

「まさかね…」

魔王のスカート姿を想像しながらドアを開ける。


「うぁ…」

そこには男物の白いワイシャツをシャキッと着こなす魔王が立っていた。

先程の黒い服とは真逆で爽やかな印象。

同じ男の奏人さえも緊張してしまう。

「なんだ…なんか間違ってるか?」

「うっ…」

こんなに普通のシャツを着こなす人に出会ったことがない。

奏人の制服さえも幼稚に見えてしまう。なんだか恥ずかしさでいっぱいになった。

「似合ってます!!素敵」

結衣がすかさず誉める。

「そうか」

嬉しそうな魔王。

「なんか、普通の格好していると若く見えますね」

確かにこうやって見ると、制服を着ていてもおかしくは見えない。

「まだ、元服したてだからな…」

「元服って、まさか16か17歳!?」

「…」

奏人の言葉に魔王は黙ってしまう。

「…何百歳とか!?」

「よく知っていたな」

そして感心したように口を開いた。

「そんなお年!?一体何百歳ですか?」

「ああ、17になった…」

「でぇぇぇ〜!!」

開いた口が塞がらない奏人と結衣。

つまり、奏人たちと同じ年。

全く信じることはできなかった。

結衣がチラチラと奏人と魔王を見比べているのを気まずく思う。

「じゃあ、私たちと…」

それ以上言わないでくれと奏人は心の中で叫んだ。

「どーですかぁ〜魔王様ぁ〜」

タイミングよく、着替えを済ませたマリーが魔王に飛び付いてきた。

「なんだっ!」

マリーの私服姿もまた似合っていた。

奏人の鼻の下が伸びてしまう。

「なんか、ピチピチですぅ〜」

「…」

大きな胸が上着を引きちぎりそうになってはいたが、ちゃんと着こなしていた。

「似合うわマリーちゃん!!」

結衣が嬉しそうにマリーに声をかけたが、その途端マリーの目付きが変わる。

「むっ…気安く呼ばないでくれる!?」

「えっ…」

「魔王様に抱きついたこと根に持ってるんだからねー」

「だだっ抱きついたって…わたしそんなつもりじゃ」

結衣の顔が一瞬にして真っ赤になりその顔を手で隠す。

こんないい男に抱き締められときめかないわけない。

奏人はがっくり肩を落とす。

マリーは結衣からフンッと顔を背けると、押し倒した魔王を見つめた。

「魔王様…」

じっくりとその姿を見回すとマリーの鼻から血が出てきた。

「白〜っ!素敵すぎですぅ〜!!」

「なっ!!貴様!!鼻血を付けるな!!」

魔王に抱きつき胸元に顔を埋めて押し付ける。

「なんか…」

「すごい光景…」

現実には目の前で見ることができない、だが現実に起こっているおかしな光景に奏人と結衣はその場に佇むしかなかった。

折角の真っ白のシャツが所々血まみれになってしまった。

「落ちるだろうか…」

「シャツの心配かよ…」


ホントにこの男は悪の大魔王なのかと改めて疑問に思う奏人であった。



ありがとうございました!


次話より学園編にやっと入ります!!



奏人のつっこみレベルはさらに上がる!?



更新頑張ります!!

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