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俺が正義でお前が悪で  作者: あらた
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第3頁 バトル勃発!!

まだまだ学園まで行き着きませんm(__)m


かわいそうな勇者様見てあげてください(^_^ゞ

「勇者様来たぁ〜!?」

真っ赤な髪の青年がド派手に登場し、奏人の頭の中がまたまた混乱する。

もしかしたら自分だけが間違っていたのかもしれない。

こういうのが今は普通だったのか?

だが、通行する人間の驚く顔をみれば自分がおかしなことに巻き込まれているのだと実感する。

「何なんだ!!」

戸惑う奏人を勇者と名乗る青年は横目で見るとニヤッと口許を引き上げる。

「どうした〜メガネ!!隠れてた方が身のためだぜ!!」

「だから!メガネって言うな!!」

「ふん!!てか、魔王!!」

「鼻で笑うな!!」

「…てか、魔王!!貴様、逃げるなんて卑怯だぜ!!」

「無視かい!!」

「…無意味な争いは避けただけだ…お前こそこんなところまで追ってくるとは…」

「あんたね!性格も顔も、しつこすぎよ!!」

魔王の後ろでマリーがマントをつかんで隠れながら叫んだ。

当の魔王は戦う様子はなく、静かに、そして瞳の奥は勇者と名乗る男を牽制するようにたたずんでいるだけ。

そんな魔王の態度に勇者はさらに熱くなる。

「だははははっ!!驚いて声も出ないか?貴様は俺様が倒す!!どんな犠牲を払ってでもな!悪は成敗されてろ!!」

「…悪?だと…」

落ち着いていた魔王の瞳が揺らいだ。

「お前はそのトップだ!悪の根元だ!!」

まるで挑発するように勇者は魔王に言葉を投げ掛ける。

「悪の根元…ふざけるな…俺が何をしたと言うのだ!!」

魔王の眉がつり上がる。

辺りの空気が重くなった。

そんなことお構いなしに勇者はしゃべり続ける。

「お前が何をしたかしないかは関係ない。魔族の王である、お前を倒し、俺様は世界のトップに成り上がるのだ!!だーっはははっ!!」

魔王が顔を上げ勇者を睨み付けた。

「ふん、人を肩書きと見た目で判断する貴様こそ悪だ!!」

魔王の怒りを湛えた瞳がまっすぐに勇者を見据える。

だがその瞳の奥にはどこかしら悲しみのようなものを漂わせていた。

「ごちゃごちゃうるせー!!行くぜー!!」ぐしゃ…

「ん?なんだこれ?」

勇者の踏み出したその足元に何かがつぶれている。

「はっ!!」

魔王は自分の手にメロンパンがないことに気づいた。

先程避けたときに落としたようだ。

地面に落ちるメロンパンの悲しい最期を目の当たりにして、魔王は何も持たない手のひらをただ物憂げに見つめた。

「ま、魔王様…?」

マリーがそっと魔王の顔を覗き、驚いた顔を見せたかと思うと、マントを放し、急いでその場から離れた。

わなわな…

魔王の肩が震え、拳が強く握られた。

「お前、よくも…俺のメロンパンを…」

どこから出たのか、黒い湯気のような物体が魔王を包み始めた。

風もないのにマントが地面から引き離される様に、大きく揺らめく。

周りの草木も漆黒に染まる。

ドス黒い雲が遠くの方からやって来た。

「メガネ、ユイを頼む」

「あぁ、はい…」

まだ正気を保っているであろう魔王が辺りの変化に動きが止まっていた奏人を呼び結衣を解放した。

もう、メガネと言われてもいちいち訂正しているような雰囲気ではない。

奏人は魔王のそばへ駆け寄り結衣の手を掴み魔王から離れた。

マリーの逃げた木の影に同じように身を隠す。

先程までの穏やかな面持ちとは一変し魔王のイメージそのままの、世界を破壊しようとする鋭い視線。

近付くことすら、話しかけることすら躊躇する、そんな空気を身にまとっている。

魔王の真っ赤な瞳からは強烈な怒りが滲みでている。

「本物だぁ」

奏人のとなりで結衣が目を輝かせ呟いた。

「これは夢!?」

「どう?」

「いだだだっ!!」

結衣が奏人の頬をめいっぱい掴んだ。

奏人の顔面に激痛。

なんだか嬉しいやら痛いやらで頬をさすりながら、現実に存在するこの世界ではない二つの異様なものたちへ目を向ける。


対する勇者のもつ剣が金色に輝く。

まさに希望の光。

黒と黄金。

二つの色は混ざり合うことなくお互いを打ち消そうと牽制し、押し合う。

「いくぜっ!」

勇者が剣を構え跳び上がり、魔王に剣を振り下ろした。

が魔王は手をかざし見えない力のようなもので、簡単に跳ね返す。

「どうやらお互い体力回復してるようだな!!」

勇者が魔王に攻撃しながら、嬉しそうな悔しそうな、複雑な表情で呟いた。


確かにこの世界のものの動きではない。

勇者は目に見えない素早さで身軽に動き回り何度も剣を振る。

だが、その度に魔王の腕から生まれた風が辺りに吹き乱れる。

木々に傷が付き新緑の葉が辺りに舞い散る。

「あ〜あ魔王様怒らせちゃった…」

マリーが飽きれ顔で呟く。

奏人と結衣はもう何もしゃべる事が出来ず口を開けて傍観しているだけとなっていた。

「偽物の正義には負けん!レベル83は雑魚相手にレベル上げをしていろ!!」

魔王の腕が大きく振られた。

同時に先ほどとは違う緑色の疾風が空気を切り裂き勇者に激突する。

「うがぁぁ〜っ」

直撃を受けたその体は数十メートル先まで吹き飛んでいく。

爆風は離れた木の影にいた奏人たちの体を激しく撫でながら吹き去る。

急に静かになった。

「勝負あったな。帰れ」

魔王が勇者を見下ろす。

「ふざ…けるな…」

傷ついた体を剣で支えながら勇者はよろよろと立ち上がる。

「帰って、俺を倒したと触れ回るがいい。傷つけ合うのが正義ではない」

また、魔王は悲しい顔をした。

勇者は片腕を押さえながら小さく笑う。

「は?笑わせるな!」

また、剣を魔王に向けた。

「悪の大魔王の首、とるまでは帰らねーよ!!」

「…と、いうか帰れませんよ」

「え?」

突然、奏人たちが今まで聞いたことのない静かで落ち着いた女の声が聴こえた。

辺りを見回すと、勇者の近くにもうひとつ人影があった。

それは実はずっとそこにあった様だ。

「どう言うことだ?」

今にも見えなくなりそうな影の薄い存在は、薄紫色の長い髪をなびかせ顔をあげた。

「あ、またメガネ…」

奏人のとなりで結衣が呟く。

「…なんだその女は、ずっといたのか?すごい存在感だ…」

魔王も目を点にして女を見ていた。

「あれは、勇者のパーティーの魔法使い…あの女の力で来たようね…しかしあの存在感…」

マリーは少しだけ勝ち誇った顔になる。

二人の言う、存在感について、勇者のことかその女のことかは置いておいて、清楚な雰囲気を醸し出しながら女はその口を開く。

「時空移動の魔導はしばらく使えません」

同じ台詞をさっきも聞いたな、と奏人は思いながら、おかしな事になっていきそうな、事の成り行きを見守った。

「ふーざーけーるーなーっ!!」

勇者はその女の肩をつかみ激しく揺する。

女は表情ひとつ変えず、長い髪と頭をただ振り回されていた。

やがて諦めたのか勇者は剣を構え魔王に向き直る。

「そ、そーゆうことだ!!やはりお前の首を頂くしかないな!!」

「同じ穴のなんとやらだな…」

魔王は戦う気力をなくし、ゆっくりと数歩前に出る。

そして、地面に落ちつぶされたメロンパンを拾い、見つめた。

「勇者よ。ここは悪いところではないぞ」

そう、魔王が呟いたとき、奏人たちには聞き覚えのあるサイレンの音が聞こえてきた。

「!」

数台のパトカーから何人もの警官が降りてくる。

それらは一目散に勇者の脇に行き体を押さえつけるとその手に手錠をかけた。

「はい、銃刀法違反で現行犯ね」

「て、いうか、何かの撮影?許可得てるの?」

「なんだ貴様ら!」

「はい、はい、説明は署で聞くからね」

「離せー!!俺様に気安く触るな!!」

両脇を抱えられ勇者は引きずられていく。

「君たちは?仲間?」

警官がいかにも怪しい魔王と隠れていた奏人たちを見ながら訊ねる。

魔王が静かに口を開いた。

「…いえ、知らない人です。危なかった…助けてくれて感謝します」

そして警官に向かって微笑む。

(勇者様売った〜っ!!)

奏人は魔王への突っ込みを我慢し、飲み込んだ。


そして、そのまま勇者はパトカーに乗せられ去っていく。

それに付き従っていた魔法使いの女もなんの抵抗もなく、パトカーに乗り込んでいた。

「…」

「…」

「ふう、行ったか…で、あの者たちはなんなのだ?」

「…て、あんたやっぱり魔王なっ!!実は腹黒いのな!!一瞬でもいい奴なんじゃないかと思った僕がバカでしたぁ〜」

よくわからないが、確かに魔王は名前のイメージからは想像できないくらい、いいやつと言う印象があった。

だが、あの戦闘中の雰囲気や仮にも同じ世界からやって来たライバルを簡単に蹴落とす態度は、やはり名前負けしていない気がした。

たまっていたツッコミを一通りしたが、言い過ぎたのか魔王の眉が下がっている。

しかし、思わぬ反応が帰ってきた。

突然、魔王は奏人の手を掴み微笑んだのだ。

「そうか!!ありがとうメガネ!!いいやつ!いい響きではないか!!」

「…え?」

「気に入ったぞ!!」

無邪気な顔をして奏人の両手を上下に振る。

「あの、誉めてはないんですけど…」

この目の前の男は一体なんなんだろう。

魔王と言う響きとは裏腹に、表面には悪を感じないし、本当はどんなやつなんだろう?

「肩書きや見た目で判断するな…か…」

ふと、奏人の心の中に魔王の台詞がよみがえった。


「あの…」

結衣が魔王に声をかける。

「魔王さん、行くところ無いんですよね?」

「え…結衣さん?どんな展開?」

奏人の呟きはまたまた無視される。

「行くところ…そうだな、宿を探さないとな…といっても、金がない…」

「では、私のところに来て…」

「だーっ!!ちょっとまった!!」

奏人が結衣の台詞に慌てて滑り込み、遮った。

三人の視線が奏人にむけられた。


いつになったら学園にたどり着くんだぁ(´Д`)


展開、急ぎます!!


次回もよろしくお願いしますm(__)m

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