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俺が正義でお前が悪で  作者: あらた
15/22

第15頁 ラブパニック①

魔界からやってきた魔王こと真央と出会ってしまった奏人。色々ありましたが二人はとっても仲良くなりました。

だがしかし、そんな二人に新たな陰謀が???

久しぶりの更新なので、シリアス回からはちょっと離れてみました。


「はい、魔王様!あ〜ん」

万里の幸せそうな顔に、差し出されたお弁当の中身のタコさんウィンナー。

しかし、その先には怒りを湛えた真央の顔があった。


日差しの心地いい午後、いつものメンバーで屋上にて昼食をとっているところである。



「貴様、立場が分かっていないようだな…」

「…い、いえ…」

これ以上迫ることを許さない真央の言葉に、万里は肩を竦めいったん引き下がった。


「おい、奏人卵焼きだ、いるか?」

「あれ?俺のには入ってないや、くれくれ!」

奏人は真央に差し出された卵焼きをパクっと口に含む。

「魔王様!私にも!」

目の前の訳のわからない光景にめげずに万里はもう一度、真央の前に顔を突き出し口を開け目をつぶった。


「何をしている…」

真央はまたしても不機嫌そうに万里を睨む。

「真央、万里にも卵焼きあげれば?」

奏人が今自分がしたことに若干の恥ずかしさを感じ、赤面しながら真央に笑顔を向けた。


「?なんだこれを欲しがっていたのか?勝手に取って食べるがよい…」

「じゃあ…魔王様!あ〜ん!」

奏人には当たり前のようにして、自分には素っ気ないのが悔しくなり万里はしつこく迫る。


グサ!

「しつこい」


真央の箸が万里の額に突き刺さった。


「青春だなぁ〜」

そのわきで道信が無表情で冷たい眼差しを向けている。

「でも、奏人君と真央君が仲直りしてよかった」

奏人の隣に座っていた結衣が二人を見ながらにっこり笑う。


「どーこがよ!全然よくないわよ!あ〜んとかしちゃって?まるで恋人同士じゃない!?」

万里が額から流血しながら怒りを携え会話に割って入った。


「万里ちゃんが何を求めているのかわからない…」

道信は万里に憐みの眼差しを向ける。

「そんなの…!!」

万里はいいかけた言葉を止め、何かを思い出したかのようににんまり笑った。


「魔王様!デザートのメロンパンを買って参りますね!!」

そう言うと、さっさと弁当をしまい、その場から走り去ってしまった。


「真央…」

「なんだ?」

「万里にもっと優しくしてやれよ…」

「あれ以上近づかせるとあいつは何をするかわからない…」

「なるほど…」


「真央」

「なんだ?」

「なんか企んでる顔だったな…」

「あぁ…」


奏人と真央は眉を潜め見つめあった。




「コレよコレ…」

万里は学食脇の売店でメロンパンを一つ買う。

その袋を持つ手と反対の手には何か液体の入っている小さな瓶を持っていた。


「この平和ボケしている今なら!使うことも躊躇わないわ!!」

その顔は何かとてつもない決心を秘めた、自分の生死を賭けたかのような険しいものであった。


「失敗は許されない…」

物陰に隠れた万里はゴクリと生唾を飲み込みながら、メロンパンに小瓶の中身を垂らした。

何か化学反応があるわけでもなく、その乾いた食物に液体はじんわりと染み込む。


「一滴でも効果は抜群なのよね…」

それは一時期魔界で流行ったもので、持ってはいたが畏れ多くて使えなかったのだ。

だが、今は状況が違うのだ。

使ってしまえばいい、やるならいまだ!


「うおー!」

駆け足になりバタバタと屋上に続く階段を万里は昇る。

「?!」

ところがドアの目の前の人影に、万里の突進は止まった。

「あ、あんたは!」


「お!よ…よう!」

そこには怪我で休んでいた勇者の姿があった。

この世界では皆野由紗と名乗っている。

だがいつもの好戦的な雰囲気はなく、何か話があるような、逆に友好的な感じだった。


「なんなの?」

万里は勢いを掻き消されたようで機嫌が悪くなる。


「まあ、そう警戒すんなって!魔王、ここにいるだろ?」

万里の機嫌を取るように由紗は屋上の方を指差しながらにっこり笑顔を向ける。


「い、いるわよ…気持ち悪いわね…」

「そうか…」

「なんなのよ!どきなさいよ!」

「まあ、そう怒りなさんな…?なんだ、もぐ…相変わらずこきつかわれてんのか?もぐもぐ…」

もぐもぐしながら由紗は万里に笑顔を向ける。


「あああああっ!!」

万里は思わず大声で叫んでしまった。

由紗は万里の買ってきたメロンパンをいつの間にか手に取り食べていたのだ。


「なんだよ!すごい声だし…て…うぐあっ!」

突然由紗が胸を押さえ跪いた。


「あ~あっ発作が始まってしまったわ…」

「てめぇ…なん…だ、こ…れ」

顔面を蒼白にし、今にも気を失いそうになりながら由紗が万里を見上げる。

「命には関わらないから大丈夫よ…」

呆れ顔の万里に、苦しむ由紗。


そのとき。

「なんだ、騒がしい…」

万里の叫びに気づいた真央がドアを開けた。


「お前は…」

うずくまる由紗に気づいた真央は一瞬状況がわからない様だったが、由紗の様子がおかしいことに気づきその肩に手を伸ばした。


「あっ!魔王様…」

万里が慌てて声をかけるが、その手は由紗の体に触れる。

「痛っ」

一瞬由紗の体から真央の手に向かってピンク色の電流が流れたかと思うと、由紗が急に立ち上がり真央の方を振り向いた。


「魔王…」

「…な、なんだ…」

明らかに由紗の視線が熱く、その瞳は潤んでいる。

そして由紗の頬はみるみる紅潮していった。


「な、なななななんでも、ねぇよ!」

由紗は真っ赤に染まった顔だけを横に向ける。


「なんなんだ??」

「お…お前!!魔王のクセにみんなと仲良く屋上でご飯なんて食いやがって!」

「???」

だがその表情はまるで恋する乙女のように目の前にいる真央の顔を見ることさえ出来ない。

明らかにおかしい由紗に真央もどう対応していいのかわからなくなり眉を潜め立ち尽くす。


「…そうか、お前もとうとう心通わせる努力をしようとやって来たのだな!歓迎だ!仲良くしようではないか!」

暫く考えた真央はそう言うと、由紗の手をとって優しく微笑んだ。


「ちょっ!!」

ドンッ

「!?」

由紗は顔面を真っ赤にしながら真央の体を押し退ける。


「…」

捕まれた手を戸惑いの表情で見つめる由紗に真央は本当に訳がわからなくなる。


「貴様は何がしたいんだ?」

「…な、なんでもねぇよっ!ばかっ!」

そう捨て台詞を残すと由紗は頭から湯気を撒き散らしながら階段を駆け降りていった。


「わけのわからぬ奴だ…」

両手を広げ、ついていけないと言うポーズをした真央はそのまま手にメロンパンを持ち、また屋上のドアを開ける。


「もぐ…しかしメロンパンを投げ捨てるなんて…もぐ…許せんもぐ…」

「え?」

「コレ、食べかけだったが…まあいいか…もぐもぐ」

「それはっ!!」

由紗の件で効果を確信した万里はチャンスとばかりにすかさず真央に飛びかかった。


ばたん

バコン


だが真央もなにかを察し、すぐに扉を閉め外に出てしまった。

万里はドアに激突し床に沈む。


「真央??」

その外側から声が聞こえた。

心配した奏人たちがやって来たようだ。

「大丈夫か?」

あちら側がバタバタしている。


「発作が始まった!?は、早く魔王様に触らないと!!」

鼻を押さえ万里は立ち上がり慌ててドアを開ける。


ガチャ


「!!」


「ま、まおく…」

「真央!」

「ひゃあ〜大胆!!」


万里は目の前の光景に痛みすら忘れ、ただ口を開けるだけだった。

奏人は固まり、道信はどこか嬉しそうに二人を見ている。


「すまない…だが、なぜかこうしていたいのだ…」


そこには、結衣を抱き締める真央の姿があった。


その足元にはメロンパンが落ちている。

真央と結衣の周りにピンク色の電流がバチバチと流れていた。



違う・・・

こんなはずではなかった。

純粋に魔王の気を引きたかっただけなのだ。

こんなに、計画通りにいかないことなどあるわけがない。

そうか、これは…


「夢だ…」


バコーン

「いだーっ!何すんだよ!」


万里に殴られた奏人はようやく正気に戻った。

だが目を逸らしたくなるような光景にまたもや心を凍結させる。

殴った万里の意識もすぐに遠くへ行ってしまいそうだった。


「結衣…愛しくてたまらない…」


「ふぇぇっ」

真央の腕の中で硬直していた結衣がやっと状況を理解し、顔を真っ赤にしてジタバタし始める。


「まさかの結衣ちゃんか…真央も男だったんだな、うん青春だ」

道信は納得した表情で二人を羨ましそうに眺めている。


「ち…違うぅ…こんなはずじゃ…」

「どういうことだ…」

奏人が目を細めて顔面を引きつらせる万里を睨んだ。


「え…えっとぉ〜」

万里がとぼけた顔で後ろへ下がる。


「なに企んでるんだぁ!結衣ちゃんをどうするつもりだ!見ろよこれ!なんかおかしいだろ!もとにもどせ!」

奏人は落っこちていたメロンパンを拾い万里に投げた。

「んぐうっ!」

それは見事に万里の口にハマった。


「んんっ!」

「…ま、万里??」

突然万里が苦しい顔になると、奏人は一気に怒りが冷め、その様子を窺った。


「何すんのさー!!」


バチーンバリバリ!!


二度あることは三度あるとはこの事で、万里のビンタから放たれたピンク色の電撃は奏人に直撃したのだった。


「なんだこれ?」

まとわりつく稲妻のようなものに奏人は自分の体を凝視する。

「…」

万里の表情がいよいよ通常のものとは相容れない恐ろしいものとなった。


「か…かな…」

「な、なんなんだよ!」

何をされるのか…奏人は身構える。


「奏人ぉぉぉぉ!!」

再び決してあり得ない出来事がその場に起こった。


万里が奏人に飛び付き押し倒したのだ。

だがそれは、奏人に対して全く敵意を感じない、まるで真央と勘違いしているかのように奏人の事を嬉しそうに抱き締めている。


ただただ思いもよらない目の前の出来事に楽しそうに見ていた道信さえも、とうとう口を開け硬直してしまっていた。


お読みいただきありがとうございます。

久しぶり過ぎて、思いが詰まりなんだか長くなってしまいましたが、なんと、この、ハチャメチャな番外編は続きます。

どうなっていくのか、次回更新をお待ちください!

半年以内には何とか更新いたします(笑)

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