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俺が正義でお前が悪で  作者: あらた
10/22

第10頁 勇者様の憂鬱

真央さまはお休みです!

その代わり、あいつがシリアスモード引っ提げて登場( ̄0 ̄)/

「面白くねぇ…」


教室の窓の外でしとしと降る雨を見つめながら皆野由紗は呟いた。

「何が面白くないんだね」

「何もかもっ!!」

「ほう…では私の授業もだな」

「げっ!!吉田!…先せ、い…」


顔を挙げると怒りマークを額に浮かべた物理の教師が由紗を見下ろしていた。

「廊下にでも立っとれ!!」

「うきゃーっ」

襟首を捕まれ、廊下に放り出されてしまった。


「んだよ…」

頭をかきながら由紗は教室の前を去った。


「で?なんで?」

「お供します」


「え?なんで?」

「勇者様のお供ですから」


いつの間にか、隣を丸々が付き従っている。

パーティーに加わったときから存在感が薄く、その甲斐あってか数々の困難を共に潜り抜けてきた。


もちろん、魔導師としての力は一流であるのだが。


しかし、戦いに身をおかない平和なこの世界で見ると益々、何故自分に付き従うのか解らなくなる。


「なぁ…」

「はい?」

「なんで俺の仲間になったんだ?」

「勇者様だからです」


それだけいうと丸々は黙ってしまった。

自分についてきたことで、まさか次元を越えこの世界で暮らすことになるなど考えてもいなかっただろうな。

怒ってんのかな?


由紗はそんなことを考えながら三階の部室階に上がる。


「やっぱ暇潰しするならここだろ」

扉を開けると、こもっていた畳の匂いが二人の間を通り抜けた。


「いいよな!!このタタミっての!!落ち着くぜ〜」


茶室と呼ばれる狭い部屋の中に入るなり、由紗は大の字になって寝転んだ。


だが、見上げる天井にはなんにも写らない。


ここよりも狭いテントで野宿したことがあるが、その頃は、魔王を倒し、完全なる勇者として認められ、英雄になり、貧乏からの成り上がり生活を夢見てキラキラしていたのに。


「しがらみか…」

魔王である、真央の言葉を思い出した。


悪の象徴で、人々から忌み嫌われ、それでも巨大な国を支配し、世界を脅かす。

そんな存在であったはずの魔王は、ここでは友人に囲まれ、生徒たちには憧れの存在として好かれ、なにやらファッション雑誌に載り、注目の的。


「世界が変わるとこうも違うのか」


「そうですね〜」

丸々が手に持っていた、魔王が掲載された雑誌をペラペラめくりながら心ない相づちを打つ。


「お前な!!」

雑誌をつかんで壁に投げつける。

ちょうど、真央の微笑んだ顔のページが開かれた。

じっと見つめる。


「たしかに魔王って面じゃねーな。よっぽど『アイツ』の方が…」

そう呟くと目を瞑る。


昨夜のバイトで疲れていたのか、いつの間にか眠りについてしまった。


「ん?!」


突然体の奥底になにか違和感を感じて飛び起きた。


辺りを見渡しても何もない。

丸々が壁に寄りかかり静かな寝息をたてているだけだった。

手には勇者の着ていた服と、そのほころびを直すための裁縫セットを持ちながら。


「たく、俺なんかについてきたっていい事ないだろ…」

由紗が丸々のとなりに座ると、丸々の頭がその肩に傾いて乗った。


「おいっ!!」


声をかけてしまったことに少し後悔し、このまま寝させてあげようと由紗はその肩を貸す。


「あなたとなら、幸せになれる気がしますとか言ったっけ…」

丸々が勇者と共に戦うことを決めたとき、そう言ってパーティーに加わった。


「それじゃ、俺はお前を幸せにしなきゃならねぇよな…」

なんだか、夫婦の誓いのようで由紗は一人赤面してしまう。


しばらく時間がたった。


「やっぱり落ち着かねぇ!」


先程からの嫌な気配がさらに強くなっている気がする。


隣で寝てる丸々を落ちていた雑誌を丸めて叩いた。


「起きろ!!」

「あだっ!!何ですか…バイトの時…何ですかっ!!」

ずれた眼鏡の奥の瞳が見開かれる。

由紗がこんなに近くにいたことに驚いたようだ。


「なんか変な予感がすんだよ!しかもヤバイ妖気を感じるぜ!!」

「…魔王ですか?」

「近い…」


いてもたってもいられず由紗は部室を飛び出し、走り出す。


途中剣道部の部室に寄り木刀を拝借する。


そのまま体育館裏に飛び出した。


「チッ…」


雨はさっきより強くなり、すごい音をたてながら地面と由紗にぶつかり落ちる。


視界の悪い中、目を凝らして辺りをみると、誰もいない裏手のグランドに大小二つの人影があった。


「真っ黒だぜ!!」


その二つのうち一つからは由紗の目標としていた魔王の気を感じた。


バシャバシャと音をたてながら、その二つの影に近づく。


「おい!!」


倒さなければいけない。

直感で木刀の柄を握りしめ、切っ先を向け突進した。

静かだった妖気がざわめく。

振り向いた小さい方は見覚えがあった。


「お前!!」


それに気をとられ一瞬の隙が生まれる。


「はっ!!」

「ぐっ!!」


小さい男の傍らにいた大きい男は手に持っていた体ほどもある大剣を由紗に向かって振り抜いた。


木刀を盾にしたが、その重量は半端なく、由紗はバットで打たれた球のようにあっけなく地面に吹き飛び転がる。


「んだよ、あれ」

とっさに身を引いた由紗はたいしたダメージもなくその場に立ち上がる。


「ほう…」

由紗の動きに大きな男はニヤッと笑うと大剣を突きだし猛スピードで駆けてきた。


「くそっ!!」


身体中が雨と泥で身動きが取りずらいなか、由紗は大剣からは想像のできないスピードの攻撃をかわす。

だが、木刀一本で防げるはずなくはなく、避けるだけとなってしまう。


ズルッ

相手の足元がぬかるみにはまり体勢が崩れた。

好機を逃さず由紗は木刀を顔面に向かって振り上げた。


「甘い」

相手の足ががら空きになった由紗の腹に飛んできた。


「勇者様!!」


「ぐはあっ!!」

靴の底が腹にめり込む。


そのまま由紗は後ろに数歩よろけた。


木刀は地面に転がり、由紗の口から真っ赤な血が吐き出される。


膝をつき、腹を抑え口元の血を拭いながら、目の前の巨大な悪をじっと睨み付ける由紗に小柄な男が声をかけた。


「勇者様じゃないか。そんなにボロボロになってどうしたんだい?」

小さい男が赤く輝く瞳で由紗を見下ろす。


男というよりは少年の雰囲気がある。

「よぉ二番手の登場か?」


明らかに劣性にあるはずの由紗はそれでも余裕を装った。


「残念ながら、僕の相手は君じゃないんだよ。あんたじゃ、魔王には勝てない」


「応援に来たのか?」

「誰の?」

「魔王の…」

「何を言ってるんだい?魔王は…」


少年は由紗の前に立ち威嚇するように小さな体から真っ黒い妖気を浮かべる。


「今の魔王は僕だから」


「!?」

「レベル83は出る幕じゃないんだよ!!」

少年の横にいた男の大剣が曇り空を切り裂くように天に掲げられた。


「避けて!」


由紗がとっさに体を伏せる。


電気を具現化したような巨大な魔力の塊が由紗の上を通過した。

「ぐああっ!!」

男の大剣に電気が流れ、その体に稲妻が浮かぶ。


「やるじゃん」

すぐに身を引いた少年が丸々のほうを見る。


「馬鹿!でしゃばるな!!」

「勇者様を見捨てるわけにはいきません」

その場に凛として立つ丸々を見つめ、しばらくすると少年は二人に背を向ける。


「あははははっ!!興味ない!!」

「魔王様!!」

高笑いを浮かべ、機嫌が良さそうな少年は水溜まりの水を音の出るようにリズムよく踏みながら、大剣を持つ男と共に消えてしまった。


「勇者様!!」


丸々が由紗に駆け寄る。


腹を抱えたままその場に倒れる由紗を抱き起こした。


「馬鹿…魔力は…ためとけって、いっ、ただろ…」

「すみません。勇者様がいなくなるほうが耐えられません!」


「お前、なん、で、そこまで…」


「好きだからです」


「面白く…ねぇ…」

由紗はそのまま目をつぶり、気を失ってしまった。



やればできるじゃない!

由紗くん(^_^ゞ


なんか別の話みたいだ〜


なんか突然シリアス?

次回はどうなるんだぁ〜

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