仕事
・あらすじ:
仕事を貰いに商人ギルドを訪れるアスカだったが、凄く冒険者に疎い受付に当たってしまい、話が進まないので つい剣で脅してしまう。
<商人ギルド支部 応接間>
「すみませんね、うちの職員が・・・。」
商人ギルドの職員に頭を下げられて、支部の奥にある応接間に通された。
落ち着きがありながら高級感のある調度品に、飾り付けられた美術品を見ると、ここが普段は貴族などの大口スポンサーが通される最高級の応接間であることが分かる。
私が普段【傷だらけの男】の使いとして来ていた際に通されていた応接間は、流石にもうちょっと簡素だ。
「いえ、別に構いませんよ。
何だかんだ、いつものことですから。」
「ははっ・・・それは褒められたことではありませんね・・・。」
恐らく先程の受付の上司にあたると思われる職員が、凄く気まずそうに乾いた笑みを浮かべる。
ヤクザ者の冒険者に失礼を働いたということで、相当 神経を磨り減らしているのだろう。
感覚的には、ファミレスで店員が運んでいた料理をヤクザにぶちまけてしまい、その謝罪に出てきた店長とかそういうのに近い。
・・・実際、多分私がここで この人の首を刎ねても大した罪にならないんだよな、この世界。
こういう状況になると、やっぱり法整備って大事なんだなって思う。
「それで・・・ご用件は・・・?」
それを理解しているからか、職員は恐る恐るといった様子で私に用件を尋ねてくる。
いい年の大人が15の小娘に過ぎない私にビビッているのを見ると、やっぱり冒険者ってヤクザ者なんだなって再認識する。
「仕事を探しに来たんですよ、仕事。
何か良い感じの仕事はありませんか?」
「はぁ。
・・・えぇと、どういった仕事を お望みとかは・・・?」
「商隊の護衛依頼とかあります?
私、あれ楽で好きなんですよね。」
「なるほど・・・少々お待ち下さい。」
調子を取り戻してきたのか、落ち着いた様子で職員が席を立つ。
少しして、職員は何枚かの書類を持ってきて卓上に並べた。
「現在だと・・・こういった依頼を手配することができます。」
私は職員が並べてくれた書類を見た。
幸いなことに この世界では植物紙が普及しており、羊皮紙みたいにバカ高かったり木簡みたいに嵩張ったりしなくて助かる。
難点を挙げるとすれば識字率自体は高くないので需要が限定的で、前世のコピー用紙ほど激安ではないし、質も高級紙でない限り及ばないくらいか。
「む・・・定期商隊の護衛依頼ですか。
ありきたりですが、悪くありませんね。」
職員が持ってきてくれたのは、都市から都市へと定期的に移動する公営商隊の護衛依頼だった。
「但し、こちら出発が3日後になりますが・・・。」
準備が出来るギリギリの日数だったが、それも悪くなかった。
せっかちなところがあるんですよね、私。
「構いませんよ、ではこれでお願いします。
・・・ブリーフィングは前日に此処で?」
「えー・・・はい。
前日に会議室で責任者が集まることになってます。」
「分かりました。」
用件が終わると私は席を立った。
仕事が入ったので、文句は無かった。
・定期商隊:
都市から都市へと月1のペースで移動する、公営の商隊。
護衛が潤沢なので、多くの交易商人が利用する。
・冒険者への護衛依頼(商隊):
商人ギルドから発行される、商隊の護衛依頼。
基本的に費用は冒険者ギルド持ちなので、商人ギルド側は無料で追加の護衛を雇える+冒険者側は移動しつつ実績を稼げるというWinWinな利益構図を持つ。
1週間前には発行されるのが普通なので、3日前は割とギリギリ。
・ブリーフィング:
商隊が出発する前日の夕方~夜ないし当日の早朝に行われる、責任者同士の打ち合わせ。
場合によっては数日前から予備日を設けた上で行われるが、今回の定期商隊では会議することが あまり無い為、前日の顔合わせ程度で問題ない。




