副団長
・あらすじ:
商隊を襲撃してきた盗賊団の首領達を殆ど皆殺しにすることに成功するが、賞金首だった首領達の首を持ち帰ることには失敗する。
「─── で、そこから単独で野営地に潜入した?」
何とか命辛々 定期商隊の最後尾に戻ってきた私を待っていたのは、全身鎧を身に纏った巨体の男だった。
【動く要塞】の通り名を持つ彼は、先代の長である【傷だらけの男】の頃からの副団長で、つい最近まで私の お目付け役だった男でもある。
だから どうにも頭が上がらない。
「そうなんですよ。
軽弩での狙撃が思った以上に効果があったので、そのまま押し込めるかと思いまして。」
「・・・。」
リビング・ルークがバイザー(顔面部分を覆う装甲)の下部に手を当てる。
どうやら一理あると思ってくれたらしい。
へっ、甘ちゃんがよ。
「それなら・・・斥候くらいは一緒に連れていくべきだったのでは?」
「む・・・相変わらず痛いところを突きますね、ルーク。」
他の人間なら「うるせぇー、知らねぇー」で済ませるところだが、リビング・ルークの言を無視するワケにもいかなかった。
それくらい世話にはなっている自覚がある。
今回も、現場の指揮を押し付けたし・・・。
「しかし今回は時間との勝負でした。
なんといっても敵が完全に潰走し切る前に尾行を始めないといけなかったワケですから。
そういう意味では今回も私の判断は完璧だったと言えます。」
「その時点では完璧だったとして・・・その後に成果がないことを見ると改善点があるのでは?」
「まぁ・・・それはそうですね。」
認めざるを得ない。
確かに野営地に潜入して黒幕を皆殺しにするまでは良かったが、そこから賞金首だった黒幕の首を持って帰ることには失敗している。
だが! 成果が全くないワケでもないんだな!
「ですが野営地の場所を報告したことで、商隊長から お気持ちの品を頂けたんですよ。」
「なるほど。」
私はリビング・ルークの前にキャラバン・マスターから貰った品を出した。
・・・それは良い感じの木箱に詰められた、良い感じの酒だった。
「・・・アスカは酒を呑めない。」
「・・・そうなんですよね。」
ラベルを見る限り、金貨数枚(日本円で数十万円くらい)はする酒だが、今世の私は先日 酒にとことん弱いということが判明したばかりなので、これは私にとってはゴミ同然だった。
しかしまぁ、日本人的に貰い物を「いや、要らないです」とは言えず、作り笑顔で貰ってきたという経緯がある。
「好きな者に回そう。 ・・・きっと喜ぶ。」
「そうして下さい・・・。」
結果、実質 骨折り損のくたびれ儲けだったことを、特にリビング・ルークは咎めなかった。
こういうところがあるから、本当に頭が上がらない。
・商隊長:
商隊の総責任者。
一般的には商隊に出資した商人か その部下が務めるものだが、公営の定期商隊の場合は低位の貴族か その関係者、場合によっては商人ギルドの職員が務めることもある。
今回の場合は騎士爵(最下層の貴族)が務めている。
・良い感じの酒:
大物の貴族なんかにも供される、本当に良い酒。
贈る相手がアスカでなければ、飛んで喜ばれただろう。




