第9話:鋼の呪い
地下基地「キャッスル・ラボ」。
火花を散らし、ひび割れた赤い装甲を見つめ、城ヶ崎校長は重く、苦い溜息をついた。
「……やはり、ネクサスの技術にはこれだけの負荷をかけねば対抗できんか」
小太郎、駒、りんの3人は、変身を解除してもなお、全身に走る激痛と倦怠感に顔を歪めていた。単なる筋肉痛ではない。まるで、自分の神経そのものがデジタルノイズに焼き切られるような、得体の知れない感覚。
「校長、修理してくれ。あいつら……ネクサスを叩くには、もっと力が必要なんだ」
小太郎の言葉に、校長は首を振る。
「修理はできる。だが、次は『リミッター』を外すことになる。……小太郎、このスーツのエネルギー源が何か、教えたことはなかったな」
校長がモニターに表示したのは、3人の脳波とスーツが同調しているグラフだった。
「このスーツは、装着者の**『記憶』**を、一時的に戦闘エネルギーへと変換して駆動している」
「記憶……? どういうことだよ」
「戦えば戦うほど、君たちの脳に刻まれた大切な思い出が、熱量として消費される。最初は昨日の晩飯の内容かもしれない。だが、リミッターを外せば……親の声、友人の顔、自分が自分であるための証明……それらが一つずつ、デジタルな塵となって消えていく」
静まり返る地下室。
駒は自分の震える指先を見つめ、りんはハッとして美咲のヘアピンを強く握りしめた。
「城ヶ崎校長……それが、あなたの足が動かない理由なんですか?」
「……そうだ。私は戦いすぎた。最後には、自分がなぜ戦っているのか、誰を守ろうとしたのかさえ分からなくなった。……英雄とは、自分を削り、空っぽになった抜け殻の呼称なのだよ」
校長は修理キットをデスクに置いた。
「これを使えばスーツは蘇る。だが、使い続ければ君たちは、いつか佐藤くんや美咲さんのことさえ、完全に忘れるだろう。……それでも、力を望むか?」
小太郎は、折れ曲がった佐藤の黒帯を見つめた。
もし忘れてしまったら、それは佐藤を二度殺すことと同じではないのか。
しかし、戦わなければ、また誰かが佐藤のように消えていく。
「…………直してくれ、校長」
小太郎の声は、震えていなかった。
「忘れたくない。……けど、あいつらを見捨てて生き残る自分なんて、もっと覚えていたくないんだ」
駒とりんも、無言で頷いた。
3人が修理キットに手を伸ばしたその時、背後の闇から神野浩介が姿を現す。その銀色の瞳には、同情も嘲笑もなく、ただ冷徹な事実だけが映っていた。
「……地獄への特等席だな。歓迎するよ、欠陥品ども




