『数式外の狂気、究極の歪形』
「……ありえない。計算が合わない。神野浩介、死んでなお私の最適解を汚すか……!」
阿久津は、自身の整えられた髪をむしり取り、狂ったように笑い始めた。
神野が命を賭して行った「データの譲渡」は、阿久津が設計した「孤立した小太郎」という完璧な器の純度を、決定的に損なわせたのだ。
「いいでしょう。数式にゴミが混じったのなら、一度すべてを焼き尽くし、更地に戻してから計算し直すまでだ!」
阿久津が、懐から**【オリジン・マブイ球】**――ネクサスの全怪人の核となった、15年前の事故現場の怨念そのものを取り出す。彼はそれを、自身の喉元へ無理やりねじ込んだ。
「グ、ギ……ガァァァァァッ!!」
阿久津の肉体が、内側から膨れ上がる黒いノイズによって裂け、歪んでいく。
それはこれまでのどの怪人とも違う。人、機械、恐竜、そして数多の死者の思念がドロドロに溶け合ったような、**「究極の怪人:ネクサス・アビス」**へと姿を変えた。
「小太郎くん……いや、『器』よ。殺せ。その二人を、この世界から『解』を奪う不純物として排除しろッ!!」
阿久津の命令。
ネクサスに支配された小太郎が、虚空から漆黒の剣を召喚し、駒とりんへ向けて鋭い斬撃を放つ。その威力は、一撃で周囲のビルを紙細工のように切り裂くほどに変貌していた。
「駒先輩、来るよ……!」
「ああ……。神野さんが遺してくれたこの力、無駄にはしない!」
駒のブラック・スーツが、神野の銀の輝きと混ざり合い、**【シャドウ・シルバー】**へと一時的に加速する。彼は小太郎の超高速の一撃を銀の残像で受け流し、同時にりんが黄金の電磁鞭で小太郎の動きを封じにかかる。
「小太郎! 目を覚ませ! お前はこんな『空っぽの神様』になるために、自分を殴ってきたわけじゃないだろ!!」
駒の叫び。
しかし、ネクサス・アビスとなった阿久津は、小太郎を操りながら、その巨大な鉤爪で二人をまとめて薙ぎ払う。
「無駄だ! 彼はもう、私の一部……全人類の記憶を統合するための、最前線の端子なのだから!」
最愛の友を操り、自らを手にかけさせようとする阿久津の悪意。
絶望的な実力差を前に、駒とりんは神野から託された「銀のデータ」の中に、ある**「未解決の関数」**を見つけ出した。




