第30話:『銀の遺言、絆の再起動』
――残された「英雄」の、最後の光。
ネクサスの意識に飲み込まれ、阿久津の傀儡となった小太郎。その絶望的な力の前に立ち上がったのは、ボロボロになった神野浩介だった。
「……阿久津。お前は計算を間違えたな。……英雄を完成させるのは、お前の言う『器』の強度ではない。……**『他者のために自分を捨てる覚悟』**だ」
神野が、自身のシルバー・デバイスの全リミッターを解除する。
凄まじい放電が彼の体を焼き、シルバーのスーツが粒子となって剥がれ落ちていく。
「神野さん、何をする気だ!? その負荷では、君の肉体が――」
阿久津の驚愕を余所に、神野は自身のデバイスを駒とりんの首筋に力任せに叩き込んだ。
「……私の、最後のデータ……。……お前たちの失われた『マブイ』の代替品として……持っていけッ!!」
神野のデバイスから、彼がこれまで命を懸けて守り、積み上げてきた**「シルバーとしての全戦闘記録」と、小太郎たちと出会ってからの「数少ないが暖かな記憶」**が、濁流となって駒とりんの脳内へ逆流する。
「あ、がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
二人の悲鳴。それは、空っぽになった「英雄の器」に、再び魂が注ぎ込まれる痛みだった。
「……小太郎、を……頼んだ、ぞ……。……あいつを、……『赤』に戻してやれ……」
神野の体が、眩い銀色の光の粒となって霧散していく。
変身解除。そこには、満足げに微笑み、静かに息を引き取った一人の少年の姿だけが残された。
そして。
「……思い……出した……」
駒が立ち上がる。その瞳には、神野の「冷徹な計算」と、自らの「失われた絆」が混ざり合い、かつてない強固な意志が宿っていた。
「……小太郎くん、ごめんね。待たせちゃって」
りんもまた、涙を拭いながら立ち上がる。彼女の手には、神野が遺した「銀の欠片」が握られ、イエローのスーツが眩い光と共に再構築されていく。
二人の前には、阿久津。そして、ネクサスに支配された小太郎。
神野から「命」というバトンを渡された二人の、最後の反撃が始まる。




