第29話:『魂の残響、奇跡の目覚め』
――記憶消滅まで、あと――(記録途絶)
阿久津の漆黒のマブイ球が、小太郎の胸へと吸い込まれていく。
「ア、アァァァァァァァァ!!」
小太郎の体が激しく痙攣し、その装甲にネクサスの紋様が禍々しく浮かび上がっていく。完全に、意識が乗っ取られる――。
「成功です! 私の長年の夢が、今、叶う! 小太郎くんこそ、ネクサスを統べる『絶対の器』となる!!」
阿久津の高笑いが、空間に響き渡る。
小太郎の体から放たれる漆黒のオーラは、先ほどの暴走とは比較にならないほどの、絶望的な支配力を秘めていた。
「小太郎……お前まで、こんなことになってしまうのか……!」
神野が、血を吐きながらも立ち上がろうとする。しかし、その力は尽きていた。
阿久津は、ゆっくりと**「ネクサスの意識を宿した小太郎」**の肩に手を置く。
「さあ、小太郎くん。まずは、この邪魔なシルバーを排除しなさい。そして、あの使えない『器』の残骸も、世界から消し去るのです」
阿久津が指差す先。そこには、意識を失ったまま横たわる駒とりん、そして今にも消えゆく祐史郎の姿があった。
ネクサスの意識を宿した小太郎は、無感情な瞳で彼らを見つめると、漆黒のプラズマブレードを形成し、ゆっくりと歩み寄っていく。
「……やめろ……小太郎……。お前まで……この闇に……」
祐史郎の命の光が、完全に消えようとしていた。
その時、倒れていた駒のデバイスが、微かに光を放った。
「……ん……?」
駒が、ゆっくりと目を開ける。その瞳は、まだ焦点が合っていない。
「……この、データ……。……なぜ、この男(小太郎)が、……私たちを……攻撃しようとして……」
駒の口から、まるで自身の意識とは関係のない、**「システムを解析する言葉」**が漏れ出た。
そして、りんもまた、ゆっくりと起き上がる。
「……だ、誰……? この、冷たい……。……どこかで……この痛み……」
りんの体が、小太郎の漆黒のオーラに共鳴するように、僅かに震えていた。
「まさか……!?」
阿久津の顔に、初めて焦りの色が浮かぶ。
「貴様ら、記憶を失ったはずでは!?」
駒とりんの体から、微弱な光が溢れ出す。それは、ヒーロースーツの色ではなく、彼らの「魂」そのものが放つ輝きだった。
「……分からない。……この人は、……誰だか……分からないけど……」
りんが、小太郎の前に立ちはだかる。
「……このデータは、……かつての、私たちを……。……なぜ、このような、……悲しい、痛み……」
駒の体が、小太郎から放たれる漆黒のオーラを、無意識に弾き始めた。
小太郎の漆黒のブレードが、駒とりんの喉元へ振り下ろされようとした瞬間、二人の体から、かつてのブラックとイエローのスーツの光が、まるで残像のように一瞬だけ輝いた。
――第2章:完――
第3章:『魂のレジスタンス:失われた絆の物語』へ続く




