第28話:『黒幕の狂宴』
――記憶消滅まで、あと――(記録途絶)
神野の告発に、祐史郎のメタリックオレンジの装甲が激しく明滅した。
「……黙れ、デタラメを言うな! 俺は……俺は小太郎の兄だ!」
その叫びは、もはや怒りではなく、深い自己暗示のようだった。
「祐史郎さん……?」
小太郎は、偽りの兄が放つ悲痛な響きに、再び心が揺らぐ。
その時、雨がピタリと止んだ。
空が不気味な紫色に染まり、地面から黒いノイズが噴き出す。
「お見事です、シルバー。私の最高傑作の構造を、ここまで見抜くとは」
嘲笑を響かせながら現れたのは、数学教師の阿久津だった。
その手には、禍々しい輝きを放つ、もう一つの漆黒のマブイ球が握られている。
「阿久津……ッ!」
神野が歯を食いしばる。
「では、種明かしと参りましょう。祐史郎くんは、まさに私の技術の粋を集めた**『魂の依代』**。死にゆく魂の『願い』を増幅させ、そこに私の『プログラム』を埋め込んだ。小太郎くんへの兄弟愛を利用すれば、簡単に私の傀儡になると確信していましたよ」
阿久津の言葉は、祐史郎の存在そのものを否定した。
「そんな……俺は……俺は、小太郎を助けたくて……!」
「ええ、その『願い』こそが、あなたのマブイ球を動かす動力源。そして、小太郎くんの記憶を取り戻させるために仕込んだあの『青いマブイ球』も、実は私の罠。彼がそれを受け入れた瞬間、脳に仕掛けた**『最終同期』**のトリガーが引かれる仕組みでした」
阿久津は、小太郎を見つめ、陶酔したように告げた。
「さあ、小太郎くん。その**『記憶を取り戻したばかりの脳』は、最高の『サーバー』として機能する。祐史郎くんのマブイ、そして、ネクサスの全システムを、君の肉体にダウンロードして差し上げましょう。君こそが、私の求める『神の器』**となるのです!」
阿久津が手に持った漆黒のマブイ球を祐史郎に向けて掲げる。
祐史郎の装甲から、無理やり引き剥がされるようにオレンジ色の粒子が噴き出し、阿久津の球へと吸い込まれていく。
「や、やめろ……俺の……俺のマブイを……! 小太郎……逃げろ……!!」
祐史郎の悲鳴。その体は急速に透き通り、今度こそ完全に消滅しようとしていた。
「小太郎! 逃げるんだ! そいつは、お前を世界から消し去ろうとしている!!」
神野の叫びが響く中、阿久津の漆黒のマブイ球が、小太郎の胸へと吸い込まれていく――。




