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第26話:独りきりの赤、誘いの橙

――記憶消滅まで、記録不能。

「……嘘だろ」

小太郎は、呆然とその場に膝をついた。

目の前で自分を不思議そうに見つめる二人。駒の鋭かった知性も、りんの温かな献身も、その瞳からは消え失せている。

ネクサスのサーバーを焼き尽くした代償は、小太郎一人が背負うにはあまりに重すぎた。

「……君、泣いてるの? 大丈夫?」

りんが、まるで道端の迷子を気遣うような、他人行儀な優しさで手を差し伸べる。

その手が、小太郎の心を粉々に砕いた。

「ハハ……。なんだよ、これ……」

その時、瓦礫を。踏み鳴らす音が響いた。

オレンジ色の夕闇を背負って、メタリックオレンジの戦士――祐史郎がゆっくりと歩み寄ってくる。

「……見たか、小太郎。それが、お前が救おうとした『絆』の成れの果てだ」

「兄貴……」

「お前がどれほど叫ぼうと、今のあいつらにとってお前は『見知らぬ赤の他人』だ。お前が流す涙も、あいつらにとっては不気味なノイズに過ぎない。……それが、偽物の正義を掲げた子供に与えられる、この世界の報酬だよ」

祐史郎は小太郎の横に立ち、その肩を強く抱き寄せた。

小太郎の震える肩に、祐史郎の冷たい装甲の感触が伝わる。

「……絶望したか? なら、その『欠落』を俺が埋めてやる。俺だけは、お前を覚えている。俺とお前だけが、この狂った世界の真実を知る『赤間兄弟』だ」

祐史郎は懐から、禍々しく拍動する新しいマブイ球を取り出した。

それは、サーバー破壊の混乱に乗じて、阿久津の個人研究所から強奪してきた特殊な球だった。

「駒も、りんも、もう放っておけ。あいつらは、何も知らずに普通の人間に戻ればいい。……俺と一緒に来い、小太郎。ネクサスの残党を、そして、お前から全てを奪った阿久津を、根絶やしにする。……二人で、この世界を『夕暮れ』で染め上げるんだ」

祐史郎の手が、小太郎の変身デバイスに伸びる。

「……もう、迷わなくていい。俺がお前の『記憶』であり、『理由』になってやる」

小太郎は、空虚な瞳で、自分を忘れた仲間たちと、自分を求める兄を見比べた。

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