第24話:黒の残光、青の願い
――記憶消滅まで、あと48時間。
ネクサスの中枢、深層調整室「レテ」。
駒、りん、そして傷だらけの神野は、祐史郎から密かに託された**『青いマブイ球』**を手に、ついにその最深部へと辿り着いた。
「小太郎くん!!」
りんの叫びが、無機質な室内に響く。
巨大な培養槽の前に立っていたのは、かつての情熱的な赤を塗り潰したような、漆黒の装甲を纏った小太郎だった。そのバイザーからは、感情を排した冷たい紫の光が漏れている。
「……対象を確認。排除プロトコル、フェーズ1」
小太郎の声は、完全に機械化されていた。
彼は自分を殴ることなく、腰のデバイスを叩くだけで、周囲の空間を歪ませるほどの重圧を放つ。
「ダメだ、赤間くん! 完全に意識がネクサス・コアと直結している!」
駒がデバイスを展開し、必死にノイズを相殺する。
「りんさん、隙を作るのは一度きりだ。あの『青いマブイ球』を、彼のスーツのコアに叩き込むんだ!」
「わかってる……。小太郎くん、ごめんね……痛いのは一瞬だから!」
りんのイエロー・スーツが火花を散らし、超加速でブラック(小太郎)の懐に飛び込む。だが、小太郎の反応速度はそれを遥かに凌駕していた。
黒い拳が、りんの腹部を容赦なく撃ち抜く。
「カハッ……!」
吹き飛ぶりん。だが、彼女はその衝撃を利用して、手の中にあった青い球を駒へと放り投げた。
「駒先輩!!」
「受け取った……! 祐史郎さん、貴方の『マブイ』、確かに弟さんに返させてもらう!」
駒がブラックの猛攻を紙一重でかわし、その胸部中央、唯一の弱点であるクリスタル・コアへと肉薄する。
小太郎の漆黒の剣が、駒の肩を深く切り裂く。だが、駒は止まらない。
「思い出せ、赤間! お前には、あの日からずっと……お前を待っている兄さんがいたんだ!!」
駒の手が、青く輝く球を小太郎の胸に押し込んだ。
ギィィィィィィィンッ!
激しい電子音と共に、漆黒の装甲に「青い亀裂」が走り、小太郎の動きがピタリと止まる。
バイザーの奥、暗闇に沈んでいた小太郎の瞳に、15年前の、あのオレンジ色の夕日の光景が流れ込んできた。
「……あ……に……き……?」
小太郎の口から、掠れた声が漏れる。
だがその瞬間、天井のスピーカーから阿久津の哄笑が響いた。
「素晴らしい! 兄弟の愛が、最高の『拒絶反応』を引き起こしましたね。……さあ、小太郎くん。その過負荷で、学園ごと……灰になりなさい」
小太郎の身体から、制御不能の黒い稲妻が暴走を始めた。




