第17話:銀の墜落
――記憶消滅まで、あと138時間。
暴走する小太郎と、冷徹な殺戮マシンと化した麻衣(漆黒のレッド)。
二つの「赤」が激突しようとしたその刹那、銀色の閃光がその間に割り込んだ。
「……見苦しいぞ、赤間。私情に流されて力を垂れ流すな」
神野浩介だ。彼はシルバーのブレードを構え、麻衣の漆黒の刃を受け止める。
だが、次の瞬間、神野の表情が驚愕に染まった。
「……何ッ!?」
麻衣のスーツから放たれたのは、通常の次元ノイズではない。神野のシルバー・スーツが持つ「異次元中和能力」を逆利用し、装甲の隙間に直接流し込まれる**【逆位相プログラム】**だった。
「神野くん! 逃げて!」
りんの悲鳴が響く。だが、麻衣の動きは神野の演算を遥かに凌駕していた。
「……解析完了。個体名:神野浩介。……排除優先度、最上位に移行」
麻衣の掌が神野の胸部に置かれる。そこから放たれた漆黒の衝撃波が、シルバーの強固な装甲を内側から粉々に粉砕した。
「が、はっ……!!」
火花を散らし、吹き飛ぶ神野。
壁に叩きつけられた衝撃で、彼の銀色のヘルメットが割れ、粒子となって霧散していく。
強制変身解除。
床に転がった神野は、かつての傲岸不遜な面影はなく、ただの傷ついた少年の姿を晒していた。
「……バカな。……俺の、データが……読み取られて……」
神野の口から鮮血が溢れる。彼がこれまで「記憶を失ってまで」積み上げてきた戦闘経験さえも、ネクサスに改造された麻衣には一瞬でラーニングされ、カウンターの材料にされてしまったのだ。
「……神野、さん……?」
小太郎の暴走が、その光景を見て一瞬止まる。
自分たちよりも遥か先を歩き、導いてくれるはずだった「完成された英雄」が、今、目の前で無残に敗北した。
麻衣は、倒れた神野にトドメを刺そうと、漆黒の刃を振り上げる。
「……チェック……メイトです」
無機質な宣告。
守るべき者は敵になり、最強の味方は地に伏した。
小太郎、駒、りんの三人は、かつてない「死」の予感に震えていた。




