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放課後のエクスプロージョン

第1話:放課後のエクスプロージョン

「……おい、小太郎。本当に出力、これで合ってるんだろうな?」

「当たり前だろ駒先輩! 俺の計算……じゃなくて、俺の勘が『行ける』って言ってるんだ!」

私立城ヶ崎高校、放課後の旧校舎。科学部の部室には、不釣り合いなほど巨大なコンデンサと、幾多の配線がのたうち回っていた。

赤間小太郎は、デジタル表示が躍るモニターを睨みつけながら、最後の一本――赤いコードをソケットに叩き込む。

「勘で科学を語るな。……りん、一応構えておけ。何があってもおかしくない」

部長の黒田駒が、愛用の将棋盤を抱えたまま、一歩下がって後輩に命じた。

「了解です、先輩。……いつでも行けます」

竹刀袋を背負った桐崎りんが、鋭い視線で空間の歪みを見つめる。

その瞬間だった。

――ドォォォォォォォォン!!

爆辞が鼓膜を突き破った。

部室の中央に、黒いノイズを撒き散らす「穴」が穿たれる。そこから這い出してきたのは、全身がバグったデータのように波打つ、異形の怪物だった。

「な、なんだよアレ……!」

「私たちの『実験失敗』が、とんでもないものを呼んじゃったみたいですね……!」

怪人が咆哮し、部室の壁を粉砕する。絶体絶命のその時、背後の扉が猛然と開いた。

「バカ者が。……私の部屋に来いと言ったはずだ」

眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせ、杖を突いた男――城ヶ崎校長が立っていた。

城ヶ崎司令室キャッスル・ラボ

校長室の隠しエレベーターを降りた先にあったのは、最新鋭のモニター群と、無骨な重機が並ぶ地下基地だった。

「君たちのしでかしたことは、本来なら退学処分だ。だが――」

校長は震える手で、三つのデバイスを差し出した。

「この『負債』を返せるのは、君たちしかいない。……小太郎、行け。私にはもう、その資格がない」

小太郎は、無骨なアンクレットを受け取ると、迷わず地上へと駆け出した。

激突:ライブ変身

校庭では、怪人が生徒たちを追い詰めていた。

「おい、化け物! 相手はこっちだ!」

小太郎が叫ぶ。同時に、右足のアンクレットを起動させた。

デジタルな歯車が空中に投影され、高速回転を始める。

「変身ッ!!」

小太郎は叫びながら、怪人の懐へと踏み込んだ。

一歩。ふくらはぎから赤い装甲がガシャガシャッと鳴り響きながら競り上がる。

二歩。太腿、そして腰へとデジタルグリッドが走り、皮膚を強化服が覆っていく。

怪人が爪を振り下ろす。小太郎はそれを、左腕に形成されつつある装甲で受け流した。

「まだだ……まだ定着してねえ!」

小太郎は空中で身を翻した。

「はあぁぁぁぁッ!!」

旋回する動作に合わせて、ヘルメットのバイザーが顔を覆い尽くす。

回し蹴りを放つその瞬間、右足の歯車が最大回転で噛み合い、衝撃波を放つ重装甲のブーツが完成した。

ズドォォォォン!!

「……よし。……これなら、戦える!」

着地した赤間小太郎の姿は、赤き歯車の戦士へと変わっていた。

遅れて合流した駒がブレスに駒を装填し、りんが光る刀身を引き抜く。

「学園戦記」の、血と汗にまみれた第一ページが、今ここに刻まれた。

「小太郎、一人で突っ込みすぎだ! 私の指示に合わせろ!」

黒田駒が叫びながら、左腕のブレスに『桂馬』の駒をスロットインする。

ガシャッ、と歯車が噛み合う音。

駒が鋭く腕を振ると、実体化したデジタルな駒が放物線を描いて飛び、怪人の足元で爆発した。

「……っ、分かってるって!」

赤間小太郎は、爆煙を抜けてさらに加速する。

一歩踏み込むごとに、足の装甲から「キィィィィィィン」と高周波の駆動音が響く。

「逃がしません!」

桐崎りんが風を切る。

彼女の変身は、抜刀の軌跡そのものだ。腰の鞘から光り輝く刀身を引き抜く速度に合わせて、黄色い電子の粒子が彼女の全身を包み、防護服を編み上げていく。

「はぁっ!」

一閃。怪人の腕が火花を散らして弾かれた。

「小太郎、今だ! 『四方詰め』の布陣を敷く!」

駒がブレスからカード状のデータをばら撒くと、怪人の周囲にデジタルな将棋盤のグリッドが展開され、敵の動きを固定する。

「おうよ! 一気に行くぜ!」

小太郎が大きく跳躍した。

空中で小太郎の背中の歯車が激しく火花を散らし、全エネルギーを右足に集中させる。

「りん! 小太郎の軸を加速させろ!」

「了解! ――『閃光旋せんこうせん』!」

りんが光の刃を円形に振り抜くと、そこから発生した旋風が小太郎を包み、弾丸のような回転を付与した。

「駒先輩、りん! これが、俺たちの科学の……武道の力だぁぁぁ!」

小太郎の右足の装甲が赤熱し、限界を超えた歯車が「ガチッ」と完全にロックされる。

「英雄戦記・合体奥義――『三位一体トリニティ科学部旋風蹴ストームキック』!!」

駒が固定し、りんが加速させ、小太郎が叩き込む。

赤い閃光となった小太郎の蹴りが怪人の胸板を貫いた。

一瞬の静寂の後、怪人はデジタルなノイズへと分解され、大爆発とともに霧散した。

静まり返る校庭。

変身の熱気が冷め、小太郎たちは肩で息をしながら立ち尽くす。

「……やったな、俺たち」

小太郎が拳を握る。

その様子を、校長室のモニター越しに城ヶ崎校長が静かに見つめていた。

「……始まったか。かつて私が、止めてしまった時間が」

校長はメガネを指で押し上げ、自身の震える右脚を、忌々しそうに杖で叩いた。

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