好きという気持ちが帰れない場所

　年末の夜、駅前のダーツバー「Sunrise」で偶然出会った42歳の社長・亘と、大学4年生の美沙。
最初はひと晩限りの関係のはずが、何度も会ううちに二人はスキューバや旅行まで行くようになり、いつしか「名前のない好き」に囚われていく。
既婚者の亘は、美沙の未来を壊さないよう壁を作ろうとするが、美沙はその壁ごと彼を好きになってしまう。

やがて美沙には、年齢の近い税理士・友也という恋人ができる。
友也は社会的にも安定していて、美沙に安心感を与える存在。
一方、亘は禁断の恋に悩み、彼女を支えたい気持ちと奪いたい気持ちの間で揺れ続ける。
三人の間に流れるのは、愛と罪悪感と、終わらせられない感情だった。

美沙は「まっとうな幸せ」を求めて、亘との半年間の連絡断ちを決意する。
「もし隙間が埋まらなかったら亘の元に戻る」と心に誓って──。
亘は「その時が来たら自分の出来る最大限で美沙を幸せにする」と決意し、静かに彼女の選択を待つ。
二人の約束の日は、2026年2月14日──バレンタインデー。

だが、その半年間の沈黙が、亘を冷静にさせ、美沙の心もまた揺らしていく。
安心感をくれる友也、すべてを受け入れてくれる亘。
どちらも正しく、どちらも間違っている。

物語は、恋という形のないものを抱えた三人が、
「好きという気持ちの終わらせ方」を探しながら生きる姿を描いていく。
許されない恋が二人を燃やし、まっとうな恋が三人を苦しめ、
最後に誰が誰を選び、誰が誰を手放すのか──その結末は、読者の胸に問いかけることになる。