召喚と胸論争
「ちょっと待って!なんで私だけ“絶壁の加護”なのよ!?」 神崎凛の叫びが、神殿の中に響き渡る。五人の少女たちは、魔法陣の上で浮かびながら、それぞれの足元に属性と加護の名が表示されていた。 私は――佐藤桃子、自分の足元にある「ほどよき果実・風の加護」の文字を見下ろし、隣に立つ天宮の胸部を見る。法衣がはち切れそうなほどの存在感、その胸には「豊穣なる大地の加護」と刻まれていた。 「この異世界、何かがおかしい……」思わず私はツッコミを入れる。 その時、九条光が合掌しながら呟く。 「女神様曰く、胸の大きさは魔力の器の容量を示すそうです」 「は?じゃあ私は……」凛が顔を青ざめさせながら、自分の平坦な胸を指差す。 「貧乳には価値がある!」突然、影から現れた黒崎命が叫ぶ。「暗殺者は流線型の体が基本!」 その瞬間、女神の幻影が現れ、荘厳な声が響く。「勇者たちよ……五つの属性が調和したとき、救世の神器が目覚めるのです……」 「誰がこの牛女と調和なんてするもんかっ!」凛の剣先が天宮に向けられる。 「え?わ、私は……」天宮が顔を真っ赤にして胸を押さえるが、その仕草がさらに目立たせてしまう。 その時、神殿が激しく揺れた。地面が裂け、魔王軍の尖兵――触手を持つ魔植物が地底から現れた。 そして、最初に捕まったのは――やはり胸の大きい二人だった。 「なんで私と九条さんだけ狙われるのよーっ!」天宮が逆さ吊りにされ、スカートが舞い上がる。 「物理法則……か?」私は風刃を放つが、効果は薄い。 「火炎剣っ!……切れない!?」凛の斬撃が触手をかすめるが、切断には至らない。 黒崎が現れ、冷静に言い放つ。「闇属性解析完了。やつらは“胸部エネルギー”に反応してる!」 九条は腰を絡め取られながらも、聖なる微笑を浮かべていた。「みんな、同時に魔力を解放して!」 五つの色が交差した瞬間――触手怪物が奇妙な光を放つ。 「……神器との共鳴を検知……自己崩壊プロトコル動……」
触手怪物は、自己崩壊プロトコルが働いたのか、奇妙な音を立てながら鮮やかな光に包まれて砕け散っていった。
私たち五人は、まるで息を呑むようにしてその姿を見守った。
「……すごかった……」
桃子が小声でつぶやく。周囲に漂っていた緊張感が一気に解け、神殿の静寂が戻ってくる。
天宮は胸を押さえながら、地面にひらりと着地。九条はまだ触手に絡まれたまま、ふわりと宙に浮いていて――まさに“聖女”そのものだった。
黒崎は壁に背を預け、手裏剣をクルクルと回しながら平然とした表情だ。
凛は床に剣を突き立て、大きく深呼吸している。
「……とにかく、ひとまずこれで安全……かな?」
桃子がぐるりと仲間を見回す。誰も攻撃を受けていないようだ。
「くそ――胸かぁ……胸なのか、敵の狙いは」
凛は険しい表情で拳を握りしめた。その肩には確かな決意があった。やはり、自分に言い聞かせるようでもあった。
「闇属性解析通りです。触手は“胸部エネルギー”に反応していました」
黒崎が淡々と言う。
「まあ、女騎士さんたちは狙われないのが普通ですかね」
「女騎士じゃないし」凛がすかさずツッコミ。
「で、なんで私らだけ狙われてんのよ!」
黒崎は肩をすくめた。
「たぶん、“胸部サイズ差によるエネルギー差”を狙ってきたんじゃないですか? うちらが“実験台”ってわけです」
その時、再び神殿の奥から光が差し込み、女神の幻影が姿を現した。
「――調和の予兆あり。次なる試練の鍵は、“胸甲聖杯”。これを携え、五属性が融合する場所へ赴きよ」
天井からホコリが舞い降りる中、不思議な円形の聖杯が空中に浮かび上がってきた。
金色の縁取りに、胸のシルエットを模した彫刻が施されている。
「バ、バスト・グレイル……って、どんだけ乳寄せてくる気!?」
天宮が声を上げる。というか、思わず吹き出してしまった。
「まあまあ……宝器の名前くらい、神様任せよ……」
九条が微笑めば、聖なるオーラがほんの少し揺れた。
桃子は息を吸い込んで重々しく言った。
「……要するに、神器を手に取って、五人で“胸の加護”を注ぐって事でしょ?」
「その通りだ」
幻影が頷く。
「ただし順番が重要です。“属性と胸の親和順”に従わねば、逆効果となる恐れがあります」
「順番なんてあるの!?」
凛が眉を寄せる。
「地道なドラマかよ!」
「まあまあ、まずは持ち帰って読みましょう。魔導書にも載ってるかも」
九条が前に踏み出し、聖杯をそっと手に取る。
すると、その表面には淡く“属性アイコン順+胸型アイコン”が浮かび上がった。
「えーと……土(巨乳)、光(巨乳)、風(普通)、火(貧乳)、闇(貧乳)……? これが正しい順番らしいわ」
九条が淡々と読み上げた。
その時、凛が鼻息を立てた。
「じゃあ“貧乳は後半のアクセント”ってわけね! 私、負けてないんだから!」
「……他人事かよ、天宮さんも巨乳だけどインストールされてる側じゃん」
桃子が思わずツッコミ。
「え、えっ」
天宮は一瞬キョトンとした後、ぱぁっと赤面しながら手で胸を押さえた。
「ちょ、ちょっと恥ずかしいんだけど……でも、私、力になる!」
九条が静かに微笑む。
「安心して。私たち、同じ“胸量産グループ”よ。胸が大きかろうと小さかろうと、同じ天命なの」
凛は鼻を鳴らし、胸に手を当てた。
「……まあ、私も“貧乳”で良かったって思えたらいいけど……!」
その後、私たちは神殿の外に出された。
眼下には、広大なエルガイア大陸の荒野が広がり、空には胸型の浮遊城がぼんやりと見えていた。
「セイクリッド・バストリア……“聖乳の城”らしい」
天宮が呟く。
「聖乳って……なんだそれ」
「響きはちょっと可愛いけど、やべえぞこれ」
凛が空を見つめる。
「なんか胸! 胸に取り憑かれた城に見えるんだけど!」
「いや、まじで浮かんでるし」
桃子が呆然となる。
「異世界じゃないとこんなの見たくない……!」
黒崎は淡々と地図を広げる。
「とりあえず、あそこが導師のいる神域らしい。胸甲聖杯の調整と試飲”—じゃなくて、“試飲”は違うな“試し注入”が必要だとか」
「試し注入って、どんな実験だよそれ!」
凛が素で突っ込む。
「まあまあ、旅のバディとしては面白いけどね」
九条が穏やかに笑う。
その夜、小さな沼のほとりに焚き火を囲んで、私たちは互いの胸の話をした。
「私……“巨乳”って言われて、正直恥ずかしいの。大地属性と相まって、“癒しの象徴”として期待されすぎてて……」
天宮の声は静かで、でも少し震えていた。
「その気持ち、わかるかも」
九条が優しく天宮の手を握る。
「“聖女”って呼ばれて、胸もあって。期待される重圧に押しつぶされそうだった」
「私は逆。貧乳で、姉と比較されてばかりで……だから“闇”に逃げ込んでた」
黒崎が呟くように語る。
「でも……闇だって必要だと、この旅で感じられるといいなって」
「私は“普通”か……安心してたけど、皆が凄くて、ちょっと埋もれてる気もする」
桃子は自嘲っぽく笑う。
「凛ちゃん……あなたの炎は、胸の有無じゃ決まらないよ」
九条が凛に語りかける。
「その芯が、私たちの希望そのもの」
凛は顔を背けながら、ぽつりと言った。
「~チッ……闇属性の詩人かと思ったら光属性の説教かよ……でも、ありがとう」
「ねえ、私も言いたいことあってね……」
光が口を開く。
「胸のサイズで人を分類する世界なら、私たちは“胸愛平等団”を結成よ」
みんながクスリと笑った。
その温かな空気の中、胸型の月が波間にぼんやりと映っていた。
「……この旅、何がおこるかはわからないけど……」
桃子が立ち上がり、皆を見渡す。
「でも、胸論争を経て、私たちが本当の“絆”を見つけられたら、それだけで救いになると思う」
「……いいわね、そのまとめ。」
凛が小さく頷いた。
「胸張って行けばいいんでしょ!」
天宮が満面の笑みを浮かべると、焚き火の火がパチッとはぜた。
第二章:聖乳の城と胸甲聖杯の試練
浮遊都市〈セイクリッド・バストリア〉到着
朝日が眼前に広がる荒野を黄金色に染める中、五人は重い空気を胸に空中を漂う浮遊城〈セイクリッド・バストリア〉へと向かっていた。城壁はまるで女性の胸のようにふくらんでおり、時折「ぷるん」と揺れるのが見て取れる。桃子は地面よりも近くなった空の景色に目を丸くしながら、仲間たちに声をかけた。
「ねぇ、あれ本当に胸型城じゃないよね?」
「城というより、巨乳バルーンだよね……」凛が呟く。
「しかし魔力反応が強い場所だわ」九条が聖杖を掲げて魔力測定を始めると、城への振動が増し、まるで城が反応しているかのようだった。
「胸に反応してる……胸型城ってその名の通り、胸と共鳴する施設なのかも」黒崎が壁にもたれながら解析結果を報告する。
天宮は胸を押さえながら徒歩式ではなく、空中をふわりと舞うプリンセス歩きで城門へ向かっていた。その様子を見て桃子は苦笑したが、どこか楽しげでもあった。
2.歓迎の儀と胸甲聖杯の授与
城門を抜けると、そこには銀髪の神官たちが並び、厳かな雰囲気で一団を迎えた。最前列の神官長は、「胸の調和の証」として胸甲聖杯を手渡す役目だった。
「五属性聖導者の皆様、この胸型城へようこそ。ここでは聖杯を胸の加護に則って注ぎ、その反応を見る“胸調和の儀”を行います」神官長の声は低く、しかし胸に迫る威厳があった。
「調和っていうからシャッフルでもすんのかと思ったら、“胸の順番”ってのはガチなのね」桃子が苦笑しながら立ち位置を確認する。
神官長は頷き、高い天井へ向かって指を差した。そこには大きな光の円盤――各属性と胸型のピクトグラムが浮かんでいる。
「まずは【土・巨乳】の天宮様から――順番を間違えると、胸の加護が暴走し、城の機能が停止しますので、くれぐれも慎重に……」
緊張が走る。凛は胸に手を当てて肩をすくめながら視線を下げたが、意を決して後方へ一歩下がった。
天宮が聖杯を胸元へ差し出すと、大地属性の温かい光が胸甲へ注がれ、ゆらりと大きな胸のシルエットが光臨する。城全体がほんの少し揺れ、太鼓のような振動が五人の身体に伝わった。
「次は【光・巨乳】九条様……」
光のピクトグラムが輝き、九条がゆっくり胸に聖杯を当てる。流れはスムーズだったが、凛は息を呑んだ。
「……ここまでが“巨乳タイム”か……」凛が小声で呟く。
奇跡のように城はピクリともせず、その安定感に少し安堵の表情が浮かぶ。桃子が聖杯を手に取り、「次は私か……」と深呼吸した。
3.普通タイプの試練と危機
「私は“普通”タイプ……風属性は中間なのね」桃子が聖杯を注ぐと、胸甲に風の渦巻きが立ち上がり、城の振動も穏やかだった。
ところが、次は凛と黒崎――貧乳組の試練だった。城の魔力が明らかに規則的な振動ではなく、ビリビリ震え始める。
「こ、これ……小さい胸だからって甘く見られてない!?」凛が焦りながら聖杯を手にするも、胸甲への反応が弱く、まるで胸が拒絶しているかのようだった。
「貧乳タイプ、合わないの……?」黒崎も同様に聖杯を取り―― 城は急激な共鳴音を立て、浮遊城全体が揺れ動いた。
「聖杯を下ろせ!」神官長の声が響き、聖杯は勢いよく鷲掴みで回収された。城門に警報が鳴り渡り、異様な緊張が場を包んだ。
4.試練突破――胸部交響曲
「失敗です……」神官長が俯き、場が静まり返る。
「だ、大丈夫かな……城、落ちたりしないよね!?」凛が不安そうに仲間を見回す。胸甲の光が不安定に脈打っている。
九条がステッキを掲げる。
「皆さん、落ち着いてください。五つの属性は分離して存在しているものではなく、“共鳴”してこそその意味を得ます」
「じゃあ、全部一気に注ぐから!」天宮が言い、大きく微笑んだ。
「えっ、マジで!?」凛が慌てる。
天宮は聖杯を掲げながら、前へ進み出る。そしてそれに続くように九条、桃子、凛、黒崎が聖杯を胸にかざした。
五色の光が交わって、胸甲が震え―― 城全体が虹色のオーラに包まれた。
「……胸部交響曲、発動ッ!!」九条が静かに宣言した。
光のハーモニーが城に流れ込み、魔力振動は穏やかに変化する。温かい鼓動のように胸型城が揺れ、その変化に神官長も目を見開く。
5.成果と新技の誕生
城は光のナビゲーションパネルのように壁面が開き、魔導書が収められている「胸格納魔書庫」へと通路が示された。
「お、おお……聖乳書庫……」桃子の目が輝く。
そこには聖杯の力に応じて新たな魔法レシピが飛び出していた。
巨乳流星雨(大地+光):円形範囲への重力雪崩攻撃
適乳テンペストアロー(風+全体):旋風を伴った突進射撃
貧乳レーザーキャノン(火+闇):集束ビームの連撃
「……どれもアレな名前しすぎだろ」凛が渋い顔をしながらも、胸には小さな誇らしさが見える。
黒崎は魔導書を手に取り、一通りレシピを吟味していた。
「ここには“胸の形に応じて魔法が強化される”とも書いてありますね。つまり、私たち、一生血湧き肉踊れるってことですよ!」
「なんだその表現……」桃子が目を丸くしつつも、笑みを浮かべた。
6.胸論争から共闘へ
壮大な魔導書を前に、五人は息を合わせて祈りを捧げた。
「私たちの胸論争も、ここで終わりよね」天宮がそっと言う。
凛は小さくうなずいた。
「ええ、胸が全てじゃない。私の火力だって、胸とは関係ない。……たぶん」
「関係なくても、胸あって損はないんだけどね」九条が微笑む。
桃子も一歩前に出た。
「この聖乳城から、新しい旅が始まる。胸型城の試練を越えた今、私たちはもう“胸戦士”って呼ばれても恥ずかしくないよね?」
黒崎が銀色の手裏剣を掲げる。
「胸派も平胸派も、闇乳派も全部ひっくるめて――“胸愛平等団”、再結成!」
天宮が口を開く。
「……胸張って、行こう!」
五人は肩を寄せ合って拳を掲げた。胸甲聖杯の光が彼女たちを包み、セイクリッド・バストリアの壁が再び光り出す。
浮遊城は静かに、しかし確実に、胸の調和をもって未来へ歩き出した。