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【SF 宇宙】

新たな夜明け

作者: 小雨川蛙

 

「そろそろですか」

「そうですね」

「では、向かいましょう」

 そんな会話と共に彼らは山を登る。

 まだ薄暗い世界の中、彼らは僅かな乱れもない動きで歩き続ける。

 右手と右足を一緒に動かしながら。

「何故このようなことをするのでしょうか」

 一つの物が問いかけて、先導する物が答える。

「何かが変わったと思いたかったのだろう」

「奇妙なものです。何も変わらない朝日でしょう」

「その通り。しかし、彼らはそれに意味を見出そうとしていた」

 きっかいな音が響く。

 彼らが動く音だ。

「無意味なものに意味を見出そうなどとするなんて、彼らは狂っている」

 別の物の言葉に先導する物は答えた。

「あぁ。だから、滅びた」

 やがて彼らは崖の上に辿り着く。

 暗さの中に明るさが混じる。

「あとは待てばよい」

 動かないままに先導する物が言って、他の物も頷いた。

 刻一刻と時が流れる。

 しかし、彼らは動かない。

 時計を確認する必要がないからだ。

 やがて。

「朝日だ」

 一つの物が言った。

 それを聞いていた先導する物が答えた。

「違う。初日の出だ。少なくとも彼らはそう呼んでいた」

 それは彼ら以前の支配者たちが特別な意味を見出していたもの。

 そして、その支配者たち……即ち人間の後に世界を支配しているロボット達からすれば何の変哲もない太陽。

 現れた平時と変わりない朝日を見つめながら先導する物が言った。

「こうしていれば人間の気持ちというものが少しは分かるかと思ったが」

 先導する物がぽつりと言った。

 他の物が無言で先を促す。

「やはり意味など分からないものだな」


 事実。

 彼らロボットは人間が何をしたかったのか分からない。

 時を引き裂き、自らのものとして無理矢理に意味を作った人間のなしたかったことを理解することはない。

 しかしながら、こうして無意味なことをする様は。

 ある意味では最も人間的であると、ロボット達は気づくことはない。

 気づくはずもない。

 何せ、彼らはロボットだから。


 少しずつ昇っていく朝日は人間にしか見えない彼らから影を奪うように照らしていた。

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― 新着の感想 ―
「こうしていれば人間の気持ちというものが分かると思ったのだが」 この一節に我々の見るAIにはない欲求の関数を見ました。 ご存じのことと思いますが、あまり支持したくはないですが、シアノバクテリアの時代を…
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