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080 imagine

「違います、どのようなことを起こしたいかをもう少し明瞭にイメージなさってください」


 口調が丁寧なのでそれほどきつくはないのだが、どうにもルカはスパルタだった。リゼよりきつい。できるまでやらせよう、という強い意志を感じる。もっと優しくなってくれよ。


「ルカ、休憩しないか? 僕は何をやっているのかわからなくなってきたぞ」

「……一度休むと勘が――、いえこれは言っても仕様がありませんね。わかりました、しばらく休んでください」


 さて、先ほどの説明を踏まえて僕は『足元の土を動かそう』と頑張っているつもりなのだが。どうしていいものかよく分からない。


「いっこうに動かねえな。この土、土じゃないんじゃないのか」

「いえ、まぎれもなく土です。そうではなくて、エリスさんは、どのように使えばどうなるかを明確にイメージできていないんですよ」


 明確にイメージ、ねえ……。

 休憩を許されたので、先ほどと同じように壁際に立っているコリンに話しかけに行く。さっきからつまらなそうな顔をしているのが気にくわない。やはり魔術のことをしょぼいだなんて言ってしまったのがまずかったか。


「コリン。魔術ってのはどうやったらどうなるんだ?」

「僕もわかりませんよ。使い方なんて人によって違うんですから。あくまで師匠自身が『やりたいこと』を明確にイメージしてくださらないと」

「『やりたいこと』ねえ」


 どうせなら戦いに役立つことがいいなあ。


「戦いに役立つこと、ですか。――土で足場を作るとか、粉塵のように土ぼこりをまき散らすとか、ですかねえ」

「土埃は自分の目にも入るから嫌だな。土で足場を作るってやつ、やってみようか」


 もしそれができるなら、宙に浮く系の技が楽になりそうだ。


「でしたら、周りからこう、土を集めてくるイメージで、周りを下げて自分を上げる、というわけですよ」

「その言い方は嫌だな。でもまあ、何となくわかったぞ」


 もし正確にできれば周囲がクレーター状になるわけだ。


「では、やってみてください」


 いつの間にかそばに立っていたルカが言う。

 死神みたい。気配が全くないし、髪の毛が白いし、うん。すごい死神らしい。


「死神って言わないでください、結構傷つきます」


 鎌なんかを戦いに使っておいて良く言うよ。あんな不気味な武器、良く振り回せるよな。


「じゃあ、僕は特に手を出しませんので。先ほどコリン君が言ったイメージでやってみてください」


 イメージ。


 ごくごく幼少のころ、リゼともまだ出会っていないような時に、砂遊びをした記憶。院の仲間たちと喋った思い出。

 砂場の中、汚れるのも気にせず座り込み、さらさらと零れ落ちる砂を両手でかき集めて、水で固めて泥の山を作る。手についた泥もきれいに押し付けて、奇麗な山の形になったら、上を平らにならして順番に乗ってみる。高いところに乗るのは気持ちが良かったな。


 訓練場の土は粒子が細かく、記憶に残る砂場よりもはるかに集めづらそうだ。水もないから、固めるのには随分力が要りそうだ。それでも、これが山の形になった姿は簡単に想像できる――

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