079 『魔術』と『魔法』
「まず、僕がお話しするべきは『魔術』と『魔法』の違いについて、でよろしかったでしょうか?
「ああ、合っている。ありがとうございます。
「ふふ、コリン君も機嫌を直してください。僕は君の戦い方が好きですよ。
「初めに、『魔術』ですね。
「正確には『魔術』ではなく『魔法術』と言います。魔力を使って何か事象を為す、その手段のことですね。
「ややわかりづらいですか?
「そうですね、式と結果と言えば伝わりやすいでしょうか。
「結果は、やりたい行為のことです。
「例えば、先ほど僕は『鎌を消したい』と思い、『魔術を行使』しました。
「その際には僕の能力を行使し、単純に鎌を消しました。
「それがほかの場合であれば、
「『空に浮く』ために『自分の重さを無くす』ことであったりするのです。
「ところで説明が遅れましたが、僕の家系能力は『ものを無くす』能力なのです。
「ああ、世の中には四つしか能力の種類がないはず、ですって?
「良く知っていらっしゃいますね。ですが、僕は皇子ですよ。
「皇族が世界の枠に当てはめられていいでしょうか。
「当てはめられるような皇族だったら、国を統べることなどできていないだろう、僕はそう思いますね。
「話を戻しますよ。
「僕は『ものを無くす』能力を使ってあらゆる事象を為し遂げます。
「それと同じように、あなたは『土を動かす』能力を使っていろいろなことを為し遂げればいいのです。
「そうやって『何かを為し遂げること』がそのまま『魔術』と呼ばれることなんですよ。
「では、続いて『魔法』の説明ですが。
「今度は至極簡単です。
「魔力というエネルギーを使って行使される事柄すべてを指します。
「『魔術』は結果のみでしたが、『魔法』は過程も含みます。また、『魔法』には魔力の種類も含まれます。
「つまり、魔力関係のことすべてが『魔法』。
「魔力を行使して行われる事柄が『魔術』というわけです。
「説明が長くなってしまい申し訳ありません。
「長広舌の上非常にわかりにくい文章であることをここにお詫びいたします。ご理解いただけたでしょうか」
皇子様っていうのは演説がうまいものなのだろうか。
途中からはコリンも真剣な表情で聞き入っていた。
ていうか、魔術を使っているはずなのにそれは知らないんだな、と思わなくもない。
「それは、皇族なら勉強することなのか?」
「まあ、そうとも言えるでしょうね。なかなか国の一般人は学ぶことがないでしょう」
「ふうん。コリン、わかったか?」
「まあ、ふんわりと」
「そうか。ちなみに僕はわからなかった」
「胸を張らないでください……」
だが、そう言う時は体で覚えるのが一番だろう。
「ルカ。とりあえず、魔術とやらの使い方を教えてもらいたい」